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仮想通貨 下落連鎖の危機 関連事業者、破綻や取引停止 金融市場への波及懸念 2022/07/08

市場で暗号資産(仮想通貨)への警戒感が広がっている。世界で進む金融引き締めにより投資家が資金を引き揚げているうえ、仮想通貨関連の事業者やヘッジファンドが破綻や取引停止に追い込まれているためだ。今後も信用が失墜し経営が行き詰まる事業者が増えれば、仮想通貨の一段の下落を招くというスパイラルに陥り、金融市場の火種となる恐れがある。

米連邦破産法11条の適用を申請した仮想通貨融資サービスの米ボイジャー・デジタルは6日、上場するカナダのトロント証券取引所で取引停止となった。上場廃止になる見込み。米国の店頭市場(OTC)での取引も停止した。

ボイジャーが行き詰まったきっかけは、仮想通貨ヘッジファンドのスリーアローズキャピタルの破綻だ。ボイジャーはスリーアローズに約6億5千万ドル分の仮想通貨を貸していた。スリーアローズはその資金をもとにテラUSD(現テラクラシックUSD)やその関連仮想通貨のルナなどに投資し、テラの急落後に経営難に陥った。

ボイジャーなど仮想通貨の融資会社は預ければ40%など高い金利を提供すると説明して、投資家から資金を集めていた。その資金をヘッジファンドや企業に貸し付けたり、自ら運用したりしてきた。

2021年の後半から融資会社による投資家の獲得競争が過熱した。株式の上昇が一服するなど運用難となるなか、「高い金利をうたい、投資家からの資金調達を競う動きが広がった」とSBIリクイディティ・マーケットの久場健太郎取締役は指摘する。

だが、足元で米連邦準備理事会(FRB)などが金融引き締めを急ぎ、マネーの逆回転が進むなか、仮想通貨のビットコインが昨年末比で6割近く、ソラナが8割弱下落したうえ、融資会社が破綻や、顧客から預かった資金を返せず出金停止に陥っている。

融資会社の米セルシウス・ネットワークも6月、スリーアローズから多額の融資を回収できなくなったため出金停止した。同業の香港のバベル・ファイナンスも出金を停止しており、資金繰りに苦慮している。

シンガポールのボールドは7月4日、一連の動きを受けて不安に駆られた投資家が殺到したため出金を停止したと発表した。同社は最大40%の金利を投資家に約束していたが、6月12日以降約2億ドルが引き出された。バベル・ファイナンスなどに融資していたヘッジファンドの経営にも懸念が広がっている。

高い利回りを約束していた分散型金融(DeFi)での運用でも損失が目立った。複数の企業は20%の金利を約束する運用サービスなどに仮想通貨を預けていた。テラの急落で損失を出すなど、DeFiでの運用で痛手を被ったという。

投資マネーの巻き戻しが進むなか、融資会社にとどまらず、ヘッジファンドや財務基盤の弱い交換所、採掘事業者など「倒産リスクが高まっている」とビットバンク(東京・品川)の長谷川友哉氏は指摘する。

これまで仮想通貨は値動きの良さから、投資家の間では運用資産に組み入れる動きが広がっていた。

米資産運用大手フィデリティ・インベストメンツは4月、提供する確定拠出年金(401k)プランでビットコインへの投資を可能にした。欧州中央銀行(ECB)によると、21年には米国では16%、欧州では10%の個人投資家が仮想通貨に投資した。

既存の金融機関による仮想通貨の保有比率はまだ5%未満というケースが多いという。ただ、仮想通貨の融資会社が一般の銀行から、どれだけ融資を受けているのか不透明となっている。資金を預けた投資家の数や金額も不明のため、融資会社の破綻による影響がどの程度広がるか、全体像はまだ見通せない。

リスクが顕在化すれば足元で2万ドル前後で推移するビットコインの投げ売りも懸念され、相場の下落を招きかねない。仮想通貨の損失を穴埋めするために株式などが売られるケースも増えやすい。仮想通貨が発端となる市場の混乱は当面続きそうだ。

(金融工学エディター 小河愛実)

(日本経済新聞)

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