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企業再生、大手銀が競う 三菱UFJ、投資子会社新設 コロナ後の収益源狙う 2023/06/14

大手銀行が企業再生ビジネスの強化に動き始めた。三菱UFJ銀行や三井住友銀行は投資枠を新設し、企業の株式を取得したうえで再生を後押ししていく方針だ。みずほ銀行やりそな銀行も専門部署の拡充を急ぐ。新型コロナウイルス禍の政策支援が終了し、倒産件数が増加に転じるなか、企業再生が大きな収益機会になるとみているためだ。人材不足などの課題の解消が今後の焦点となる。

三菱UFJ銀行は全額出資子会社「MUFGストラテジック・インベストメント」を2024年春に設立する。1号ファンドは最大500億円で、主に中堅・中小企業の普通株を取得する。1社あたり数十億円の支援を想定し、資金枠を使い切れば2号ファンドを検討する。企業再建を果たせば、新たな出資者に株式を譲渡して売却益を得ることができる。

業績が悪化した取引先だけでなく、これまで取引のなかった企業の再生も視野に入れる。私的整理の一つである裁判以外の紛争解決(ADR)や全国の中小企業活性化協議会が関わる案件の場合、再建のスポンサーを決める入札を実施することが多い。こうした案件に応札し、資本の注入と人材の派遣の両面から再建を支える。

株式取得に限らず、銀行による支援策は優先株の引き受けや再生手続きに入った企業の資金繰りを支えるDIPファイナンスなど幅広い。新会社設立に先立ち、三菱UFJ銀行は4月に10人弱で構成する「再生ファイナンスチーム」を設けた。

同様の取り組みは三井住友銀行も進めている。20年2月にSMBCキャピタル・パートナーズを設立し、今年6月に会社更生手続きを始めたイセ食品の株式を取得した。少額出資や議決権の過半を握る場合と合わせて、総額2000億円の投資枠を設けている。

メガバンクが相次いで投資枠を創設する背景には、21年11月に施行された改正銀行法がある。これまで企業への銀行の出資比率は5%までに抑えられていた。改正銀行法によって、銀行が企業再生や事業承継に取り組む場合は最長10年間にわたって全株式を保有できるようになった。これまでファンド勢の存在感が強かった企業再生に、銀行が主体的に関われるようになった。

新型コロナ禍の緊急融資制度などが期限切れとなり、今後倒産が増加すると見込まれることも大手銀行の背中を押している。みずほ銀行は大企業の再生を担う部署の人員を21年に2人、23年には3人増やした。専門性が高い外部の人材も積極的に採用する方針だ。

りそな銀行も企業再生を担う「成長戦略室」の増強を進める。飯山智哉室長は「価格転嫁できる強い企業とそうでない企業の二極化が進むだろう」と指摘。企業倒産や自主的に廃業する経営者が今後増えるとみている。

企業再生の市場規模を示す明確な統計はないが、法務省が公表する債権回収会社(サービサー)の業務状況によると、22年の取扱債権額は11兆4000億円だった。銀行の不良債権処理が本格化していた00年代半ばには30兆円前後だったが、足元では10兆円前後で推移している。

業績の悪化が見込まれる企業には中堅・中小企業が多い。大手行だけでなく、広島銀行など20以上の地方銀行も投資を手掛ける子会社を立ち上げた。ファンド勢も含めた重層的な受け皿づくりが課題となっている。

専門人材の不足という構造的な問題も残る。ゼネコンや不動産などの不良債権処理が進んだ00年代が過ぎると、企業再生の案件は大幅に減少した。「激動の時代を経験しているのは40代半ば以上」(大手行の幹部)で経験豊富な人材は限られているとの指摘がある。

企業再生が新たな銀行の収益の柱になるためには、案件を一つずつ積み重ねながら人材を育てていく地道な取り組みが欠かせない。企業再生ビジネスを拡大させて企業と金融機関の収益をそれぞれ押し上げていくことは、日本経済が長い停滞から抜け出すための条件のひとつといえる。

(渡辺淳)

(日本経済新聞)

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