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企業融資、ファンドと火花 JPモルガン焦る「銀行中抜き」 2024/02/09

米銀大手が未開の成長領域への参入を急いでいる。主に自己資金を元手に企業に直接融資するプライベートクレジット(非公開融資)だ。流動性が低く債権をすぐには転売できない代わりに高めの利回りが得られる。借り手は従来の銀行融資よりも迅速かつ柔軟な条件で資金を調達できることが多い。

JPモルガン・チェースは2021年以降に数十億ドルを投じてきた。世界の債券資本市場業務を統括するケビン・フォーリー氏は「中堅企業や大企業と取引し、北米だけでなく欧州や英国にも広げている」と話す。

ウェルズ・ファーゴは昨秋、米投資会社センターブリッジ・パートナーズと提携してプライベートクレジットのファンドを立ち上げた。両社やその他の外部投資家が資金を出し、ウェルズの顧客基盤を生かして中堅企業に融資する。シティグループも1月に米投資会社と組んでファンドを作り、不動産などの資産担保型融資を手がける。

銀行は預金などで集めた資金を融資に回し利ざやを稼ぐ。リーマン危機後の規制強化で、中堅企業や買収資金向けといった比較的貸し倒れリスクが高い融資債権を保有し続けるのは難しくなった。このため、協調融資を組成して手数料を得た後、債権は投資家に転売するのが一般的だ。

米連邦準備理事会(FRB)が急速な利上げに動いたこの2年間、金利上昇で価値の下がった融資債権の売却が難航し、銀行の協調融資のビジネスは停滞した。間隙を縫うように右肩上がりの成長を続けたのが、プライベートクレジット市場だ。

主な担い手はブラックストーンやアポロ・グローバル・マネジメントといった大手ファンドだ。英調査会社プレキンによると、世界のプライベートクレジット残高は22年に1.5兆ドルと10年で4倍に拡大。28年にはさらに倍増が見込まれる。

「ファンドは街で踊っている」。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、規制の制約が重い大手銀を尻目に与信業務を拡大するファンド勢にいら立ちを隠さない。

ダイモン氏が警戒するのはファンドに企業の資金需要を侵食されることだけではない。ファンドが企業に直接貸し付けて銀行が「中抜き」されれば、M&A(合併・買収)助言や資金管理といった顧客企業との広範なビジネス機会も失いかねない。こうした焦りが銀行勢の背中を押す。

もっとも銀行はプライベートクレジットの形態でも資本制約を抱えるため、高リスク融資に回せる資金には限界がある。ウェルズやシティのようにファンドと組み、原資の大半は外部から調達しつつ、自身は顧客との関係維持や案件組成の手数料収入を狙うというケースも少なくない。

JPモルガンもこれまでに手がけた案件の多くが、ファンドが絡む買収資金の提供だ。「ファンドは優良な顧客であると同時に競争相手」とフォーリー氏はいう。

現状は顧客離れを阻止したい大手銀と、なおカネ余りのファンドが入り乱れる形でプライベートクレジットの活況が続く。競争激化で貸し手側の条件提示や審査が緩くなり、景気悪化時に不良債権が膨らむリスクは高まっている。

「プライベートクレジットは金融市場のなかでも不透明な領域で、規制当局によるリスクの評価を難しくしている」。米金融当局で構成する米金融安定監視評議会(FSOC)は昨年12月の報告書でこう指摘した。格付け会社ムーディーズは通常の銀行融資に比べて「デフォルト(債務不履行)リスクを把握しづらい」とみる。

プライベートクレジットはここ数年間で急成長したビジネスだ。景気の急減速時にどの程度の損失が生じ、金融システムにショックが走るか読み切れない。次の危機の火種は静かにくすぶり始めている。

ニューヨーク=斉藤雄太、三島大地が担当しました。

(日本経済新聞)

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