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住宅市場、世界で変調 利上げ影響、北欧は1割安 東欧では金融不安の兆し 2022/11/20

世界の住宅価格が高騰から値下がりに転じた。スウェーデンなどではピークに比べ約1割下げ、米英独など主要国も夏場から下落し始めた。インフレを抑えるための利上げの「効果」でもあるが、世界で250兆ドル(約3.5京円)の規模の市場が急収縮すれば家計債務や金融機関への影響は避けられない。東欧などでは金融システム不安の予兆もみられる。

カナダで混乱
「北米の不動産市場は混乱している」。カナダの大手不動産ファンド、ロムスペンは8日、不安を感じた投資家から資金引き出し要請が殺到したことを受け、当面は出金に応じないと発表した。融資先の不動産業者のうち4割で元利払いが滞っているという。

カナダ銀行(中央銀行)が政策金利を3.75%まで引き上げ、活況だったカナダの住宅市場は一変した。現地統計のテラネット・ナショナル銀行住宅価格総合指数によると9月は前月比3.1%低下と、遡れる1999年以降で最大の月間下落率となった。住宅が売れず業者が資金繰りに困り、ファンドや銀行のような資金の出し手へのしわ寄せが大きくなってきた。

2020年に新型コロナウイルス禍への対応で世界の中央銀行が一斉に金利を引き下げた。低金利を生かして住宅を買う人が世界で増え、経済協力開発機構(OECD)によると加盟国の平均価格は19年に比べ35%上昇した。

ところが、インフレを抑制するための急ピッチな利上げで市場が変調している。現地統計によるとニュージーランドでは22年1月をピークに10月までに価格が11%下がった。スウェーデンでは3月のピークから9月までに11%下落した。

利上げで先んじた国や市場が過熱していた国の下げが大きくなっている。北欧はロシアのウクライナ侵攻で電気料金が高騰したことも住宅需要の後退につながっているとされる。続いて、米英独など主要国でも夏場から下落に転じはじめた。

UBSによると主要25都市の22年半ばの住宅ローン金利は、1年前に比べ2倍となった。「住宅価格はこれから顕著な調整が予想される」とみる。住宅ローン金利が上昇し、米国では30年物が7%と21年ぶりの高水準になった。住宅ローン申請件数は1997年以来の低水準に落ち込んでいる。

住宅市場の規模は大きい。英不動産サービスのサヴィルズによると世界の住宅資産の価値は2020年時点で250兆ドルと株式市場(約100兆ドル)の2.5倍だ。縮小に向かえば家計や銀行など広範に悪影響をもたらす。

韓国は家計への影響が不安視されている。可処分所得に対する債務の比率は200%程度と世界の中でも高い。過去5年間でマンション価格(全国平均)はおよそ2倍に高騰。ソウル市のマンション価格は円換算で1億円を上回っており、所得水準に見合わない住宅ローンを組んだ世帯も多い。ローンの8割超が変動金利のため利子負担の増加が家計を直撃する。

銀行経営揺らぐ
東欧では銀行破綻につながった。ポーランドでは9月、中堅のゲティン・ノーブル銀行が公的支援の対象となった。同国の住宅ローンは金融危機以降、問題を抱えてきた。低利で借りられるスイスフラン建ての住宅ローンが流行したが、通貨ズロチがフランに対して下落し、返済できない個人が増えた。今年の通貨安や住宅価格の下落がさらに追い打ちをかけ、銀行経営を揺るがしている。

住宅市場の変調に中銀の姿勢にも変化が見られはじめた。オーストラリア準備銀行(中銀)は10月の理事会で政策金利の引き上げを0.25%に縮小した。同国の住宅価格は11年ぶりの速いスピードで調整が進んでおり、住宅市場に配慮したとみられている。

英オックスフォード・エコノミクスは住宅価格下落による逆資産効果、投資の減少、与信基準のタイト化という逆風が重なった場合には、世界の国内総生産(GDP)成長率はベースラインの1.3%から0.3%にまで急低下する可能性があると試算する。

住宅価格の下落は、インフレの鎮圧という目的にはかなう。ただ、低金利になれきって膨張した市場は急激に縮小するリスクをはらむ。

(今堀祥和、シドニー=松本史、ソウル=細川幸太郎)

(日本経済新聞)

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