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先細る「ノーベル賞人材」 日本、高評価研究者が半減 30年代、受賞急減も 2023/03/05

日本で将来のノーベル賞候補となる先端研究人材が減っている。世界で注目される論文数はピークから2割近く減り国別順位で12位と2000年代前半の4位から後退した。優れた成果を出す研究者も14年から半減し、躍進する中国との差が広がった。日本発の革新が生まれにくくなっており、科学技術振興策や人材育成の見直しが急務だ。

「先端科学研究の国際ネットワークから日本が無視され始めている」。東京大学の相田卓三卓越教授は危機感を示す。米科学誌サイエンスの論文を一次選考する委員で日本の研究機関からは相田氏のみ。10年代の5~6人から減り続け中国や韓国を下回る。

化学や材料など日本の得意分野でも存在感が薄れている。科学技術振興機構(JST)によると、材料科学分野で著名な国際会議「MRS」では1996年に招待講演者の1割が日本の研究者だったが、19年に4%弱に減った。

英調査会社クラリベイトによれば、物理や化学などの21分野で他の研究者から引用された回数が上位1%の論文を過去10年に複数執筆した研究者(高被引用研究者、総合2面きょうのことば=HCR)は、日本が22年に54人。14年から半減した。主要国で大きく減らしたのは日本のみで、中国が4倍、オーストラリアが3倍、韓国が2倍に増えたのと対照的だ。

論文数でも日本の地位低下が進む。被引用回数が上位10%の注目論文数で日本は80年代前半~90年代初めに米英に次ぐ世界3位だった。90年代にドイツ、06年に中国に抜かれ、19年には12位に下がった。注目論文数は約3800本とピークから2割弱減った。

一般に研究成果を上げてからノーベル賞を受賞するまでに20~25年かかる。日本は21世紀に入り米国に次ぐ19人が受賞したが、ほとんどは80~90年代の業績が評価された。10年代以降に日本の研究成果が低迷しているのを踏まえるると、30年代以降に受賞が大幅に減る恐れがある。

優れた研究成果が出にくくなっているのはなぜか。鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長の分析によると、政府支出の大学研究資金が増える国はHCRも増える傾向にある。日本は04年の国立大学法人化で政府が大学に配る運営費交付金を毎年1%減額したうえで大学の裁量を増やし競争を促したが、研究力は低下した。

若手研究者の待遇や研究環境も悪化した。大学の正規教員に占める25~39歳の割合は19年度に22%と90年代の3割超から減った。安定したポストが少なく将来不安から博士課程への進学が敬遠されている。研究者の卵である博士号取得者は19年度に1万5100人と人口が半分以下の韓国(1万5300人)に抜かれた。博士号取得者は各国が育成し、米国や中国も約20年間で2倍以上に増えている。

カリフォルニア大学アーバイン校の五十嵐啓准教授は「米国などと比べて日本は若手研究者が独立して研究できるポストと予算が格段に少ない」と指摘する。

博士人材の活用も課題だ。米国などでは官民が博士人材を高度な専門性を持った即戦力人材として学部卒などより厚待遇で採用しており、博士号取得はキャリアアップの重要な手段だ。一方、日本は博士人材の待遇が低く、学部卒に比べて非正規で働く人の割合が高い。

政府は巻き返しに向け、10兆円の「大学ファンド」を創設した。年3000億円と見込む運用益を使い、選抜した数校を支援する。若手支援や国際連携も強化する。ファンド運用を担うJSTの橋本和仁理事長は「日本の研究力の再興に向けた最後のチャンス」と話す。先端研究は国力を左右する。底上げを急ぐ必要がある。

(福岡幸太郎)

(日本経済新聞)

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