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公取委、みずほ証券を「注意」 IPOで一方的値決めか 2023/04/13

公正取引委員会は13日、みずほ証券に対して「注意」をしたと発表した。新興企業の新規株式公開(IPO)で「公開価格」を設定する際に、主幹事証券会社の優位な立場からの一方的な値決めとみられる行為があり、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)につながる恐れがあると判断した。

公開価格が低くなったことでスタートアップの資金調達に不利益を与えた可能性があるとして、改善を促す。

公取委によると、みずほ証券は2020年6月〜21年5月に東証に上場した企業21社の主幹事を担当し、このうち2社について企業側の主張を下回る想定発行価格を提示するなどした。2社の上場後に最初に売買が成立した「初値」は公開価格の2倍以上になったといい、公取委は「新規上場会社はより多くの資金を調達できた可能性があった」と問題視した。

独禁法違反が疑われた場合、公取委は、違反行為の再発防止を求める行政処分の「排除措置命令」のほか、違反の疑いがある行為の取りやめを求める行政指導の「警告」や、違反はないが未然防止を図るため口頭で行う「注意」の対応を取る。

今回はみずほ証券に明確な違反行為はなく、既に社内マニュアルの改定など改善を図る取り組みを進めていたことから「注意」に当たると判断した。みずほ証券は13日、「注意を真摯に受け止め、引き続き、合理的かつ適正な公開価格設定プロセスとなるよう、努めていく」とコメントした。

IPOの手続きは新規上場企業から手続きを受託した主幹事証券が、上場する株式の大部分を引き受け、市場取引前の公開価格で投資家に販売する。

公開価格の設定に当たっては市場の需要を適正に判断することが不可欠となる。このため日本証券業協会の規則などは、類似企業の株価や業績を基に、投資家へのヒアリング結果を加味した上で価格帯を設け、主幹事証券が企業側と協議して決めるよう定めている。

今回、公取委が価格決定の過程に問題があるとした行為は2件ある。一つは企業が想定発行価格について、主幹事以外の証券会社から意見を聞く「セカンドオピニオン」だ。客観的な視点から価格の妥当性を検討できるとともに、証券会社間の競争を促す手続きだが、みずほ証券は価格の参考にしていなかったと認定された。

投資家へのヒアリングの経緯も注意の対象となった。みずほ証券は価格決定前に機関投資家などから需要を聞き取った際、自らが想定した価格よりも高い評価を聞いたにもかかわらず、意見を聞き入れなかったという。

一方で、みずほ証券は最終的に2社側に公開価格の決定根拠を説明したことから独禁法違反とまで認定できないと判断。2件の行為について「一方的に価格を低く設定することにつながり、新規上場会社側に不当な不利益を与える恐れがある」として、同様の行為を繰り返さないよう注意した。

みずほ証券は20年以降の3年間に毎年20〜30件前後のIPOで主幹事証券を務めた。件数ベースでみると、全体の2割超を占め、21年のシェアはトップ、他の2年も2位だった。

政府は21年6月に閣議決定した成長戦略実行計画に「IPOの価格設定プロセスの見直し」を明記。日本の公開価格が初値を大幅に下回っているとして、値決めの適正化を図ってきた経緯がある。

公取委は同年8月からIPOで上場した国内企業や証券会社に、書面と聞き取りでの調査を開始。22年1月の報告書で、立場の強い主幹事証券が一方的に適正でない公開価格を設定し新規上場企業に不利益を与えるのは、独禁法が禁じた「優越的地位の乱用」に当たる恐れがあると言及していた。

日本証券業協会も実態把握を進めた上で同年2月、公開価格について各証券会社が会社側に十分な説明を果たす、といった改善策をまとめた。同年6月以降に順次規則を改定して是正を進めている。

▼公開価格 企業の新規上場に当たり、事前に主幹事証券会社が投資家に販売する際の株式の価格。一般に、まず類似企業の株価や業績などを基に「理論価格」を算出し、続いて相場環境などを考慮して一定割合を差し引いた「想定発行価格」を出す。機関投資家から妥当な株価水準を聞き取って「仮条件」と呼ばれる価格帯を設け、最終的に主幹事証券が企業側と協議して決定すべきだとされている。
政府の成長戦略会議は2021年、株式公開後に市場で成立する「初値」が公開価格を大幅に上回るとして、新興企業の資金調達の足かせになっていると是正を求めた。一方、証券業界は日本の新規株式公開(IPO)が欧米に比べて小規模で、個人投資家の買い注文により初値が上昇しやすいと反論。公開価格が過小との批判は当たらないとする声もある。
公正取引委員会は22年1月に公表した報告書で「(一方的な価格設定で)新規上場会社に不当に不利益を与える明確な実態は確認されなかった」とした。だが、優位な立場にある証券会社が企業側に合理的な根拠を説明せずに価格を低く決めた場合は、独占禁止法に抵触する恐れがあるとも指摘している。

(日本経済新聞)

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