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円安悪循環、警戒強まる 為替の「理論値」も急低下 2022/03/30

円安が急加速し、円の下落と経常収支の悪化が共振作用を起こす「円安スパイラル」への警戒が強まっている。長い目でみた円の均衡水準も1ドル=120円台に下落している可能性があり、構造的な円安の側面が出てきた。円安効果は一部の輸出企業や富裕層に限られる半面、その痛みは資源高もあいまって個人や中小企業に広く及ぶ。円安を前提にした経済運営のあり方が問われる。

28日の外国為替市場で円相場は一時1ドル=125円10銭と6年7カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。2015年の安値(125円86銭)が迫り、当局が円安をけん制するなか29日の東京市場は123~124円台での荒い値動きとなった。

直接のきっかけは日米の金融政策の方向性の違いだ。日銀は28日に金利上昇を食い止めようと無制限の国債購入策を発動し、29日も2度にわたり買い入れた。米連邦準備理事会(FRB)は高インフレ鎮圧へ急激な金融引き締めに動く構えで、米金利は急伸している。

ここに構造的な円安圧力がのしかかる。

新型コロナウイルス禍での供給制約やウクライナ危機で進んだ資源高を受けて輸入額が膨らんでいる。22年1月の経常収支は1兆円を超える赤字を記録した。輸入価格の上昇で輸出入の採算性を示す「交易条件」も悪化し、日本で生まれた所得が海外に流出している。

日本経済新聞社と日本経済研究センターは円の理論値である「日経均衡為替レート」を算出している。直近の21年7~9月期は1ドル=105円40銭程度。この値に足元の日本の経常収支や交易条件の実績を反映して試算したところ、理論値は121円70銭となり、16円ほど円安に向かった。

実際の円相場は投機筋の短期売買や国際情勢に左右され、理論値から離れることも多い。仮に121円台を足元の理論値と位置づけ、過去の理論値と実際の相場の平均的な乖離(かいり)率を当てはめると、円は130円程度まで下落余地がある計算になる。

実際、経常収支や交易条件の悪化は、円売りがさらなる円売りを呼ぶ悪循環のリスクをはらむ。

足元では輸入企業がドルの手当てで円売りに動き、「円安の根本原因」(外資系銀行幹部)になっている。円安は輸入額を膨らませ経常収支がさらに悪化しかねない。交易条件が悪化すると企業の競争力低下が円安圧力を生み、一段と貿易で稼ぎにくくなってしまう。

日銀は「円安が経済・物価にプラスとなる基本的な構図は変わっていない」と繰り返す。だが円安の恩恵を受けるのは一部の輸出企業や海外資産を多く持つ富裕層などに偏る。大多数の個人や中小企業は「痛み」を味わう。円安の悪循環は痛みをさらに鋭くする。

日本の経済政策は安倍晋三政権の「アベノミクス」をはじめ円安を起点に企業収益を改善させ、家計に効果が染み出るのを待つ傾向があった。それでも、本格的な賃金上昇には至らなかった。

岸田文雄政権は緊急の物価高対策に動くが、市場では「日銀が大量に国債を買うなかでの安易な財政拡張は、一段の円安を招く可能性もある」(JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長)との声もある。

日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は29日の記者会見で「円安を容認しておく政策でいいのか、真剣に議論しなければならない。円安がマイナスになるリスクというのは初めてで、大きな課題だ」と語った。産業の競争力や生産性をどう高めるのか。経済政策のあり方が問われる。

(日本経済新聞)

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