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冷える米不動産ファンド ブラックストーン解約制限 2022/12/05

【ニューヨーク=竹内弘文】世界の投資マネーを集めてきた米国の不動産投資ファンドが、金利上昇とともに冬の時代を迎えている。上場ファンドは運用が低迷。米ブラックストーンが運用し運用成績が好調な個人投資家向け非上場ファンドからも資金が流出し始めた。金融危機前の米住宅バブル崩壊とは様相が異なるが、投資家はリスクの高まりに備えている。

「11月は上限を上回る解約請求が寄せられたため、上限である純資産総額の2%相当の解約に応じた」。ブラックストーンの非上場の不動産投資信託(REIT)「BREIT」は12月1日、上限を超える解約を規定通り制限したと発表した。

米投資情報誌バロンズは4日、米投資ファンドのスターウッド・キャピタル・グループが同様の仕組みで運用する「SREIT」も11月に投資家からの解約を一部制限したと報じた。

米国の住宅や物流施設で運用するBREITは、2017年の設定から5年で純資産総額が694億ドル(約9兆3900億円、22年10月末時点)に膨らんだ。主に富裕層など個人投資家向けで、22年には別の公募投信を経由して日本の個人マネーも取り込み始めた。

17~20年は年10%前後、21年は30%の運用成績をあげ、低金利下で高い利回りを求めた投資家ニーズに合致し急成長を遂げた。人口増加率の高いフロリダ州やテキサス州など南部、西部の不動産に集中投資し、さらに高い利回りをもたらす好循環を描いてきた。

資金流入は足元で急速に細る。純資産総額に対する月次の解約比率は、21年後半は0.1~0.3%程度だったが22年4月に1%台に上昇。今回、解約上限に明確に抵触した。解約の多くはアジア在住の投資家とみられる。10~12月期は設定来初めて、資金流出超に転じる可能性がある。

米住宅市場の変調が投資家心理に影響した可能性がある。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げで住宅ローン金利は大幅に上昇し、S&Pコアロジック・ケース・シラー指数の全米住宅価格は7月に前月比で下落に転じた。上場REITは既に打撃が大きくS&P米国REIT指数は年初来で2割程度下落した。特に住宅REITの指数は約3割下げた。

BREITの1~10月の運用成績は9%と、上場REITや米国株、米国債とは対照的に好調だった。ただ住宅市場の先行き不透明感もあり、在米の日系機関投資家は「ほかの資産で売却損が出た投資家が、BREITの利益確定に動いたのではないか」と推測する。

もっとも、不動産ファンドからの資金流出が、金融システム全体への重大なリスクとなる兆しは現時点でみえていない。08年の金融危機の前は、信用力が低い人向け住宅融資「サブプライムローン」で組成した証券化商品で運用するファンドが急きょ解約を停止し、金融市場の不安を一気にかき立てた場面があった。今回は状況が異なる。

BREITの解約制限は、急な資金の引き揚げが保有不動産の投げ売りに至るのを防ぐためあらかじめ設けていたルールに基づく。ブラックストーンのジョン・グレイ社長兼最高執行責任者は10月中旬時点で、手元資金と金融機関の与信枠をあわせて96億ドルの流動性があると説明した。BREIT解約制限の発表を受けて上場REITを投げ売りする動きも見られなかった。

日本では野村証券が今年4月から、BREITに投資する公募投信を販売している。足元の残高は約500億円で、直近の11月は購入超過だった。購入や解約の受け付けは毎月15日以降から月末までのため、ブラックストーンによる解約制限の発表後の解約期間はこれからだが「今のところ国内でパニックのような動きはみられない。投資家にはあくまでも中長期目線での運用を勧めている」(野村証券)という。

金融危機の際に証券化商品の空売りで巨利を得た著名投資家ジョン・ポールソン氏は9月、米ブルームバーグ通信に対し「金融システムは米住宅価格の下落に対応可能」と指摘した。ニューヨーク連銀によると、米国の住宅ローン残高は金融危機前を上回るが、07年当時に新規組成の3割近くを占めたサブプライム向けは足元で8%にとどまる。

(日本経済新聞)

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