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労働市場の回復、日本は米英より遅く 人材再配置進まず 2022/04/14

先進国の間で労働市場の回復度の差が鮮明だ。求人数は米国や英国で新型コロナウイルス流行前の1.6倍超に膨らみ、ドイツも1.2倍に達した。急ピッチの経済再開で人手が追いつかず、賃金上昇でインフレも加速する。日本の求人は依然としてコロナ前を下回る。助成金で失業率の悪化を抑える危機対応策で雇用の安定を図った分、持ち直しの勢いを欠く。

企業はポストの空席や人員不足などがある場合、広告や職業安定所への登録などで求人活動に動く。求人数は国による定義の違いがあっても、労働市場のトレンドを映す分かりやすい指標という点では共通する。

米労働省の2月の雇用動態調査(JOLTS)によると、求人件数は1127万件で、コロナ前の2019年12月より67%多い。宿泊・飲食サービスが1.9倍、医療福祉が1.8倍、専門・ビジネスサービスも1.7倍に増えるなど幅広い産業で人手が足りていない様子が浮かぶ。

英国も傾向は同様で、1月の求人はコロナ前と比べ64%多かった。ドイツも3月の求人は22%増となった。

国際通貨基金(IMF)は3月のリポートで、米欧の雇用情勢について「スキルの高くない人や高齢者、子供を持つ女性などがまだ労働市場に復帰していない」と分析した。コロナを契機に、人との接触が多い業種や肉体的な負荷が高い仕事を敬遠する傾向も出ているという。

労働需給の逼迫は賃金の上昇圧力になる。経済協力開発機構(OECD)によると、賃金(時給換算)は米国がコロナ前に比べ12%、英国が10%高くなっている。求人増が米英ほどではないドイツも5%上昇した。IMFの分析によると、もともと賃金が低い産業ほど賃金が上がりやすい傾向もあり、所得の底上げがインフレを加速させる可能性もある。

日本は戻りが鈍い。ハローワークに寄せられた求人数は2月時点でコロナ前より10%少ない。小売業や飲食店、医療・福祉の新規求人が回復していない。賃金も1%低下しており、物価上昇圧力も米欧ほどには高まらない。

充足できていない求人の多さを示す「欠員率」をみると、米国は2月に7.0%に達し、失業率(3.8%)を大きく上回る。日本は2.8%と比較的低水準で、失業率(2.7%)との差も小さい。

そもそも経済の回復スピードの違いも大きい。実質国内総生産(GDP)の水準は米国やユーロ圏がすでにコロナ前を上回るのに対し、日本は下回ったままだ。経済が冷え込んでいる状況では雇用もなかなか上向かない。

日本はコロナ下で雇用の安定を重視する危機対応策をとってきた。代表例が仕事が減っても雇用を維持する企業向けの雇用調整助成金だ。副作用として、低採算の企業や需要の乏しい産業に人材が滞留する問題がある。総務省の労働力調査によると、休業者は2月時点で242万人と失業者(180万人)を上回る。

東京大学の川口大司教授は「米国や英国は景気悪化で失業者が増えやすいが、成長力の高い産業に人材が再配置される。日本は再配置が起きにくい」と指摘する。そのうえで「労働市場の流動性を高めつつ、社会保障やセーフティーネットをどう設計するかが重要な課題だ」と述べる。

(マクロ経済エディター 松尾洋平)

■失業率 働きたいのに仕事がない人がどれくらい世の中にいるかを示す。失業は生活への悪影響が大きく、貧困や治安悪化などの問題につながる恐れもある。社会の安定のため、失業率の改善(低下)は経済政策上の大きな目標の一つになる。

日本は総務省が毎月公表している。15歳以上で仕事がなく職探しや事業を始める準備をしている人を失業者とし、労働力人口に対する割合を計算する。分母の労働力人口は実際に働いている人に加え、働く意欲のある失業者も含む。
定年退職したり、家事に専念して職探しをやめたりすれば、労働力人口から外れる。失業者が非労働力人となれば、見た目の失業率は低下する。この場合、働く人が増えているわけではなく、経済にプラスとは言えない。
日本は長期雇用の慣行なども背景に、失業率が主要国で突出して低い。新型コロナウイルス禍で景気が低迷した2020年で最も高かった10月でも3.1%にとどまった。
米国は感染が急速に広がった20年4月に14.7%まで急上昇した。足元は3%台まで下がり、コロナ前の水準に迫る。英国も20年後半に5%台まで高まった後は低下傾向で、現在は3%台だ。

(日本経済新聞)

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