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商社4社、資源高で最高益 前期最終、三菱商事は1兆円超 脱炭素の収益化急ぐ 2023/05/10

総合商社の2023年3月期連結決算(国際会計基準)が9日出そろった。大手5社の合計純利益は約4兆2000億円を超え、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が大量保有を始めた21年3月期から4倍超に増えた。24年3月期は市況が一服し、一転して全社最終減益の見通し。今後は脱炭素やデジタルなど市況に頼らない事業の成長モデル確立が課題となる。

「資源高の追い風を捉えて利益を伸ばせただけでなく、資源以外の稼ぐ力が高まってきた」。9日、記者会見した三菱商事の中西勝也社長は手応えを語った。23年3月期の純利益は前の期比26%増の1兆1806億円と、最高益を見込んでいた従来予想を上回った。

同日発表した伊藤忠商事の23年3月期の純利益は微減の8005億円と過去最高水準だった。前の期に金融決済会社の売却益など一過性利益で計約1300億円計上した反動があった。石井敬太社長COO(最高執行責任者)は「実力値である一過性損益を除いた基礎収益は2年連続で過去最高を大幅に更新した」と語る。住友商事の純利益も22%増の5651億円の最高益だった。

今期は減益予想
23年3月期は三井物産の純利益も1兆円を超えるなど、伊藤忠を除く4社が純利益で過去最高を更新した。前の期に5社合計で1000億円強の減益要因となった「ロシア関連」の損失は、前期は開示ベースの損益計算書上で200億円程度だった。

大手5社の合計純利益はわずか2年で4.3倍になった。株価もバフェット氏が保有を公表した20年8月から8割高~3.3倍だ。バフェット銘柄の米アップルや米コカ・コーラの上昇率を大きく上回る。

バフェット氏は6日開いた米バークシャー・ハザウェイの株主総会で、投資先の5大商社について買い増し余地があることを改めて述べ、「一緒に事業をするのを期待している」と協業にも前向きな姿勢を示した。

バフェット流投資は永続的に競争優位性をもつ企業を発掘して割安価格で株を取得し、長期保有でリターンを得る。

競争優位性の評価は投資実績をみると、2つの特徴がある。差異化できた類のない独自の消費・サービスをもつコカ・コーラやアップルなどの企業。もうひとつは消費者から安定した需要を見込める事業モデルを強みとする企業だ。22年以降、買い増しを続けている米石油・ガス大手のオキシデンタル・ペトロリアムが当てはまる。

商社は人々の暮らしに欠かせない資源やエネルギーなど「上流」での事業に加え、消費者に近い「下流」で食料や医療などを扱う。安定需要を見込める分野への投資や資産入れ替えを積極的に行う世界で類を見ない事業モデルを築いた。バフェット氏は商社の安定成長の潜在力を評価しているとみられる。

持続的成長カギ
好業績に沸いた商社だが、今期は一転して全社が減益を見込む。資源高の一服やコロナ禍に急増した一時的な需要の反動などが要因だ。三菱商事は前期比22%減の9200億円、伊藤忠は3%減の7800億円、住友商事は15%減の4800億円となる見通し。

バフェット氏は長期保有を基本とするが、期待に応えるには持続的な成長を示す必要がある。試金石は再生可能エネルギーなどの脱炭素やデジタル分野の育成だ。

三菱商事は31年3月期までに脱炭素投資2兆円を掲げ、前期までに3000億円投じた。今期以降も既に5000億円の投資を決めた。国内外で洋上風力発電の開発も進めており、収益に結びつけられるかが問われる。

脱炭素事業の質は改善している。子会社のオランダ再エネ大手のエネコで発電資産の選択と集中をした結果、電力ソリューション事業の純利益は21年3月期比46%増の619億円になった。

市況に左右されない非資源分野の事業の収益力向上も重要となる。伊藤忠は消費者ニーズを事業化につなげる「マーケットイン」戦略の下、デジタルトランスフォーメーション(DX)に注力し、非資源事業の利益が21年3月期の3000億円程度から6000億円規模まで増えた。

三井物産はマレーシアの病院グループIHHヘルスケアの収益力を強化し、生活産業部門の純利益が4倍超に増えた。

長期投資で知られるバフェット氏だが事業の将来性について判断が変われば、その限りではない。台湾積体電路製造(TSMC)株も、わずか3カ月で約9割減らすなど引き際も早い。仮に商社株も一部売られるようなことがあれば、期待値が急上昇した分、失望も大きくなる可能性がある。経営にはこれまで以上に規律が求められる。

バフェット氏は業績の持続的な成長に加え、株主還元や自己資本利益率(ROE)などの資本効率を重視する傾向もある。今期は5社すべてが減益を見込むにもかかわらず、株主還元の拡充に踏み切った。

三菱商事は9日、3000億円を上限とする自社株取得枠を設定したと発表した。発行済み株式総数の6%に相当する規模で、一度の取得枠の設定では過去最大規模となる。伊藤忠も今期の年間配当を前期比20円増やし160円とした。住友商事や丸紅も追加の自社株買いを発表した。三井物産は今期の配当を前期比10円増の150円にし、26年3月期までは年150円を下限とする累進配当を新たに導入した。

資源高が一服するなか、資本効率の改善も焦点になる。ROEは21年3月期と比べ、三井物産は8%から18.9%、三菱商事は3.2%から15.8%と急改善した。伊藤忠も12.7%から17.8%に高まるなど、資本効率は改善傾向にある。

ただ、SMBC日興証券の森本晃氏は「23年3月期の好調は外部環境の追い風の側面も大きい。ROEを高い水準で維持できるよう、収益性が低い事業にしっかりメスを入れていけるかが重要」と話す。三菱商事の中西社長は「成長が鈍化している事業会社もあり、しっかり整理整頓して収益力を強化していく」と語る。

商社は海外投資家などを中心に「まだ市況連動株という認識で、5年後の具体的な利益イメージを描けない」(仏コムジェスト・アセットマネジメントのリチャード・ケイ氏)との見方が強い。

三井物産の堀健一社長は「将来の成長をより投資家に分かってもらうことが重要」と力を込める。資源高の追い風が弱まるなかでも脱炭素事業の成長や資本効率の改善を示せるか。バフェット氏が着目した商社のコングロマリット経営の真価が試される。

(長谷川雄大)

(日本経済新聞)

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