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営業秘密、高まる漏洩リスク 「かっぱ寿司」社長逮捕 大転職時代、管理焦点に 2022/09/30

回転ずし店「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長の田辺公己容疑者が30日、不正競争防止法違反の疑いで警視庁に逮捕された。転職前に在籍していた「はま寿司」の仕入れ情報を不正に持ち出した疑いがある。雇用の流動化が進むなか、同様の事件は増え、企業は営業秘密の「漏洩リスク」に直面する。海外でも機密情報の管理は厳格化の流れが強まっており、経営側と従業員側の双方で情報管理意識の徹底が急務だ。

大手5社で2000店舗以上がひしめく回転ずし業界。中でも業界4位のかっぱ寿司と3位のはま寿司は郊外出店を重視するビジネスモデルが共通し、競争が激しかった。その2社間で転職した田辺社長が持ち出したとされるのが、はま寿司の仕入れデータだ。

データはすしの原材料となる魚介類の仕入れ値や取引先などがリスト化されていたとみられる。仕入れや価格戦略に直結する「手の内」で、競合先に渡ればコスト面で相手が有利になる可能性がある。

田辺社長がカッパ社に転じた2020年秋は新型コロナウイルスの影響で外食各社が苦戦を強いられていた時期に重なる。事件の背景に苦境や焦りがあった可能性があり、捜査はなぜ内部情報を持ち出したのかなど動機の解明が最大の焦点となる。

企業が秘密として管理する技術や営業の情報は「営業秘密」と呼ばれる。持ち出しが罪に問われるのは①秘密として管理されている②事業などに有用③公然と知られていない――の3要件を満たす場合だ。

警察庁によると、全国の警察が21年に検挙した営業秘密侵害事件は過去最多の23件。大手企業が絡む刑事事件は主に技術情報の流出だったが、今回のように事業に有用などの要件を満たせば営業に関する情報も刑事罰の対象となる。

営業秘密侵害の刑事罰が導入されたのは03年の不競法改正だ。以降、罰則引き上げなどの法改正を重ねてきた背景のひとつに雇用の流動化がある。

総務省の労働力調査によると、国内の転職者数は19年に過去最多の351万人を記録。転職希望者も21年に889万人で最多となった。一方で、情報処理推進機構(IPA)の20年の調査で、情報漏洩が発生したと回答した企業の漏洩ルートは「中途退職者」が36.3%で最も多く、前回の16年調査から7.7ポイント増えた。

営業秘密に対する厳格な対応は世界の潮流だ。グローバル化に伴う技術開発競争が激化し、営業秘密の保護は今や国際的な競争力に直結する。欧州連合(EU)は16年に営業秘密の保護を法制化する指令を採択。加盟国間でばらつきがあった営業秘密の定義や侵害行為の基準を定め、法整備を促した。

刑事罰を重視する米国は、経済スパイ法が営業秘密侵害を重犯罪として扱う。東京大の玉井克哉教授(知的財産法)によると、有罪となれば多くの場合、実刑判決は免れない。玉井教授は「雇用の流動性が高い米国では転職に伴う情報の流出に厳格に対処する環境が早くから整ってきた」と指摘。「日本でも会社側が対象情報を明確化し、従業員も理解を深めるなど相互にリスク管理の意識を高めていく必要がある」と話している。

企業の秘密保持対策、なお不足
終身雇用のシステムが長く続いた日本では、営業秘密に当たる情報の範囲が曖昧な企業も多く、企業側の危機意識は十分とはいえない。IPAの2020年の調査で、漏洩対策として従業員と秘密保持契約を結んでいる企業は56.6%どまり。前回調査(46.1%)と比べて増加したものの、半数近くで対策が取られていない。

経済産業省は官民連携のフォーラムを立ち上げるなどして危機意識の醸成を急ぐ。各企業も社員研修などの対策を探る。

21年に高速通信規格「5G」に関する技術情報を不正に持ち出したとして、楽天モバイルに転職した男が警視庁に摘発されたソフトバンク。事件後、全役員と全社員向けの研修を実施した。未受講者は重要情報へのアクセスを制限するほか、退職予定者は業務用端末へのアクセス権限を停止する。

積水化学工業は21年、スマートフォンに使われる技術情報を中国企業側に漏らしたとして元社員が不正競争防止法違反罪で有罪となった。社内のパソコンから情報を持ち出せないよう機密情報管理を強化。社員講座も増やし「特に研究員に対して教育を強化している」という。

半導体メモリーの研究データが工場から不正に持ち出された東芝は工場の警備体制を強化するなどの対策を講じた。

転職先の企業も競合のデータを利用すれば罪に問われる場合があり、不用意に情報を取得しないよう注意が必要となる。企業不正に詳しいある弁護士は「転職者に誓約書を書かせるほか、受け入れ先の部署に転職者の秘密情報を利用しないよう研修を行う場合も多い」という。

(日本経済新聞)

「かっぱ寿司」社長を逮捕 営業秘密不正取得の疑い 2022/09/30

回転ずし大手「はま寿司」の営業秘密を不正に取得したなどとして、警視庁は30日、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長、田辺公己容疑者(46)ら3人を不正競争防止法違反(営業秘密領得)などの容疑で逮捕した。

競合企業の営業秘密を侵害したとして、上場企業の現職社長が逮捕されるのは異例。警視庁は持ち出された営業秘密がカッパ社内で共有、活用されたとみて法人としてのカッパ社も同法違反容疑で書類送検する方針。

田辺社長は外食最大手ゼンショーホールディングス(HD)出身で、子会社のはま寿司で取締役を務めた。2020年11月、外食大手コロワイド傘下のカッパ社顧問に転じ、副社長を経て21年2月に社長に就いた。

田辺社長の逮捕容疑はゼンショーHDに在籍していた20年9月末ごろ、はま寿司の仕入れ値などのデータファイルを外部サーバーにアップロードさせて不正に取得。カッパ社に転職後の同年11~12月に同僚に送信するなどして開示・使用した疑い。

不正競争防止法は企業の営業秘密を不正に取得する行為などを禁じる。不正な利益を得る目的で違反した場合、懲役10年以下か罰金2千万円以下、またはその併科と規定。法人への両罰規定もある。

カッパ社は東証プライム上場で、全国に約300店を展開している。22年3月期の連結売上高は672億円。

警視庁は21年6月にカッパ本社など関係先を家宅捜索し捜査を進めていた。

カッパ社は30日、田辺社長らの逮捕を受けて「多大なご迷惑とご心配をおかけし深くおわび申し上げる。捜査に全面的に協力していく」とのコメントを公表した。

(日本経済新聞)

春秋(10月1日) 2022/10/01

季節はちょうど今ごろだろう。志賀直哉の「小僧の神様」は、神田の秤(はかり)屋の番頭がすし談議をかわす場面から始まる。「そろそろお前の好きな鮪の脂身が食べられる頃だネ」「あの家(うち)のを食っちゃア、この辺のは食えないからネ」。そう、トロは秋の味覚だったらしい。

▼江戸の風情を感じさせる名作とは打って変わり、こちらはすしをめぐる物語だが産業スパイ小説風である。回転ずし店「かっぱ寿司」を全国展開する会社の社長が、同業他社から転職するさいに仕入れに関するデータを不正に持ち出したとして、警視庁に逮捕された。企業が保有する「営業秘密」を侵害したという容疑だ。

▼不正競争防止法が定める営業秘密は要件が厳密である。「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3つを満たす場合に限るそうだ。社長が古巣から持ち出したとされる情報がこれに当たるとすれば、仕入れデータといっても経営の根幹にかかわる内容だったに違いない。コンプライアンス以前の、なんという常識の欠如か。

▼「小僧の神様」には、番頭のグルメ自慢を聞いた少年店員が屋台のすしをつまみ、値を知って手を引っ込めるくだりがある。懐は寂し、すしは食べたし……。こういう悲しい思いをしなくてもすむ回転ずしは、現代日本の立派な発明だ。なのにこれでは、せっかくのトロものどにつかえよう。粋にやってほしいものである。

(日本経済新聞)

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