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企業の四半期報告書廃止などを盛り込んだ金融商品取引法改正案が16日の参院財政金融委員会で可決した。今国会で成立し、2024年4月から決算短信に一本化となる公算が大きくなった。政府提出は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が民間投資できるようにする法案など14本に限られる。
臨時国会、政府提出の法案14本
臨時国会は序盤の衆参予算委員会を終え、政府提出法案の審議に入った。ビジネスに関連する法案としては、通常国会で継続審議となっていた金商法改正案やスタートアップの上場までの期間短縮を目的とする社債等振替法改正案などが予定される。
金商法が定める四半期報告書は上場企業が事業内容や財務情報などを公開するための資料にあたる。有価証券報告書と合わせて1年に計4回提出する。
改正案は24年4月から第1、3四半期の四半期報告書を廃止して決算短信にまとめると定める。かねて非上場企業が提出してきた半期報告書の提出を上場企業に求める。半期報告書は第2四半期報告書と同じ内容、分量を想定する。
四半期報告書の内容は決算短信と重複する部分もあり、書類準備は企業の負担となってきた。今回の法改正で上場企業の情報開示を効率化しつつ負担を軽減する狙いだ。岸田文雄首相が掲げた「新しい資本主義」の具体策として示してきた経緯がある。
数を減らす分、一つ一つの報告書が持つ重要度が高まる。そのため、半期報告書を一般に見られる公衆縦覧期間を現在の3年から5年に伸ばす。代表取締役の異動など会社に重要事項が生じた場合に出す臨時報告書も現在の1年から5年に延長する措置を講じる。
社債等振替法改正案はスタートアップの上場にかかる期間の短縮を狙う。現在、企業が上場するには承認を受けた日から1カ月の期間を置くと定める。上場前からの株主とのやりとりや金融機関での事務処理が必要なためだ。
上場までの期間が長いと、その間の市場変動により投資家はリスクを負うことになる。そのリスクを見越して企業の公開価格は低めに設定することになる。スタートアップの上場時の公開価格を適正にするため、上場までの時間を短くする。
これら2本の法案を含め、臨時国会は14本の政府提出法案に絞った。首相や閣僚ら国家公務員特別職の給与を引き上げる改正法案や大麻取締法改正案、JAXA法改正案などに限られる。
政府が当初予定していた日本版DBS法案は提出を見送った。学校など子どもと関わる仕事に就く人の性犯罪歴の確認を義務付けることを目指す内容だ。学校や保育所を義務化の対象にする方向で検討していたが、与党内で調整が必要になった。
窪田真之
楽天証券 チーフ・ストラテジスト
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分析・考察四半期報告書は廃止されても、投資家にとっての利便性はさほど低下しない。四半期報告書が無くなっても、四半期決算は続けられ決算短信は出るからだ。これまで四半期決算の分析は、決算短信や決算説明資料でほとんど終わっていた。四半期報告書が出るころには、投資家アナリストの関心は次の四半期決算に移っていたことを考えると、廃止は妥当な判断と考える。
これから、人的資本・サステナビリティ開示など、上場企業の開示負担はさらに重くなっていく。上場企業の開示負担が過剰にならず、かつ投資家にとって重要な情報の開示もれがないように、バランスの取れた開示ルールが必要である。
(日経新聞)