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増えすぎた米ユニコーン変調 名付け親がみる10年の教訓 2024/01/29

珍しさが薄れた「ユニコーン企業」は世界で転機を迎えている

米ベンチャーキャピタル(VC)が企業価値10億ドル(約1500億円)以上のスタートアップ企業を「ユニコーン」と名付けて10年。該当する米企業は532社と13倍強に膨らんだが、低金利下で高騰した評価に実体が追いつかない例が多い。ユニコーン育成を掲げる日本もその目的を見つめ直すときがきている。

米シリコンバレー拠点のVC、カウボーイ・ベンチャーズ創業者のアイリーン・リー氏が18日、「10年後のユニコーンクラブへようこそ」と題した長文を自社のウェブサイトで公開した。約10年前の2013年11月、極めて珍しい急成長企業を伝説の生き物になぞらえ、同氏が「一角獣(ユニコーン)」の呼び名を発案した。

上場、非上場を問わず創業10年以内に企業価値が10億ドルに達したスタートアップが同氏らの定義だ。当時、フェイスブック(現メタ)やツイッター(現X)が並ぶリストに名を連ねた企業は米国で39社にすぎなかった。

その後21年ごろまで金融緩和を背景に大量の資金がスタートアップやVCに流れ込み、ユニコーンの呼称が世界に広まるとその数も増えた。リー氏によると米国では23年12月時点で532社と、10年前の13.6倍に増えている。米調査会社ピッチブックの調べではピークの21年、米国でほぼ毎日ユニコーンが1社生まれるペースだった。

ユニコーンが10社未満にとどまる日本と比較すれば段違いではあるが、金利上昇局面に入ってすでに潮目は変わっている。米国の実態は苦境に陥っている企業も多く、ロボットで作るピザを移動販売する米ズームなどすでに倒産した例もある。

金利がゼロに近い時期にユニコーンになった企業が多く、足元の二次流通市場では約4割が10億ドル未満の評価額で取引されているという。運転資金が不足するユニコーンも増え、リー氏らは「24年は突然の破綻がもっと増える」とみる。

評価ほど業績は伸びず、投資妙味は薄れた。評価額を累計の資本調達額で割った倍率は平均7倍と、10年前から大きく低下している。一段と評価が下がると想定すれば、ユニコーンへの投資より上場する米テック大手株を保有していた方がリターンが大きいケースも多いだろう。

新規株式公開(IPO)やM&A(合併・買収)といった投資回収の「出口」に到達している割合は13年の約7割から、23年は7%に下がった。投資が過熱していた当時、VCやソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドが「値付けを間違えた」代償として、出口の前には高い壁が立ちはだかる。

リー氏は「ユニコーンになるのが早すぎることは呪いでさえあるかもしれない。ファンダメンタルズ(基礎的条件)を見ずに評価額を追うことがどのように意図しない悪い結果を生むか、未来の起業家はわかるだろう」と安易な投資に警告する。ユニコーンを生み出すのは簡単ではないと投稿を締めくくった。

スタートアップの育成で出遅れてきた日本は、政府が27年度にユニコーンを100社に増やす目標を掲げている。重要なのは量より質。幻の存在のはずのユニコーンという言葉に踊らされて数ばかりを追えば、米国ですでにはじけつつあるユニコーン・バブルの轍(てつ)を踏むことになる。

(シリコンバレー=山田遼太郎)

(日経新聞)

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