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大型ヘッジファンド好成績 2023年、マネー流入加速 2024/01/26

ヘッジファンドの2023年の運用成績は、多種多様な運用手法を組み合わせた「マルチ戦略」と呼ばれる大型ファンドのリターンが高かった。23年3月には米銀シリコンバレーバンク(SVB)が破綻するなど金融不安で相場が揺れた。多額の報酬が人材をひき付けて高いパフォーマンスをもたらし、新たなマネーの流入にもつながっている。

英運用会社LCHインベストメンツが公表した世界のヘッジファンドの運用成績ランキングによると、創業から23年末までの投資利益累計では米シタデルが首位、ミレニアム・マネジメントとDEショーがそろって2位と、マルチ戦略の有力ファンドが上位を占めた。

21〜23年の3年間では、ヘッジファンド業界全体の投資利益のうち38%をシタデルとミレニアム、DEショーの3社で稼いだという。23年もシタデルは81億ドル、ミレニアムは57億ドル、DEショーは42億ドルの利益を出した。

マルチ戦略の成績が相対的に堅調な背景には、22年から23年春にかけての市場環境がある。22年は世界経済の緩やかな成長と物価の低位安定という「大いなる安定」が崩れた。株式と債券が28年ぶりの同時安となり、多くの投資家が損失を出した。

多数のチームを集めて運用する「プラットフォーム」型のヘッジファンドには資金流入も加速した。オルタナティブ投資専門のアクシア・ジャパンによると、同社の顧客ポートフォリオに占めるプラットフォーム型の運用資産残高(AUM)の比率は23年6月時点で21%と、15年6月の12%から増加した。

「独立系の小さなファンドを駆逐している」。LCHインベストメンツのリック・ソファー会長は指摘する。大型ファンドの多額の報酬が優秀なファンドマネジャーをひき付け、高パフォーマンスをもたらす好循環にあるという。

ネット環境や大量のデータなど、ヘッジファンドを運用するインフラを整える費用は増えている。人工知能(AI)を使った戦略も一般的になった。アクシア・ジャパンの鷲尾学社長は「ゼロから設備を整えるより、大きなヘッジファンドに雇用された方が効率的と考える運用人材は増えている」と話す。

英調査会社プレキンによると、23年のヘッジファンド全体の新規設定数は972本と、前年比で半減した。

減少が顕著なのは、ヘッジファンドの主力である「株式戦略」だ。23年は204本と、比較できる10年以降で最多だった15年比で8割減った。22年は運用成績が4年ぶりのマイナスで、成績悪化による原資の減少が響いた。英ヘッジファンド助言会社サセックス・パートナーズのマネジングパートナー、パトリック・ギャリ氏は「23年前半もリスクフリーレート(国債利回り)より高いリターンを出すのも難しい環境だった」と説明する。

好成績のトップファンドは運用報酬を高める一方で、業界平均では報酬が減ったことも淘汰を促す。三井住友DSアセットマネジメントの小林弘明シニアインベストメントアドバイザーは「機関投資家はパフォーマンスなどを理由に報酬引き下げ圧力を継続的にかけてきた」と指摘する。

小規模な株式戦略のヘッジファンドには制度変更も逆風だ。米証券取引委員会(SEC)は23年10月、空売りに関する報告を義務付ける規制を採用した。月間平均の空売りポジションが1000万ドル以上、もしくは対象の発行済み株式数の2.5%以上の機関投資家は、翌月までに報告が必要になる。事務コストの負担や管理リスクも増す。

アクシアの鷲尾社長は「ヘッジファンドは大規模化が進み、市場にとって無視できないメインプレーヤーになっている」と話す。AIなど先端技術も使い、価格を付ける速度がより速くなるといった変化を市場に与える可能性もある。

(越智小夏、吉井花依、ニューヨーク=竹内弘文)

▼マルチ戦略ファンド 顧客から集めた資金を複数の運用者に配分して運用させる。複数のヘッジファンドを1つのファンドにまとめたようなやり方をとる。外部環境に応じて投資機会が得られそうな戦略への配分を手厚くすることで絶対収益の確保を狙う。

(日経新聞)

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