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大学発の起業 慶応が最多 昨年度、2位は岐阜大 200社新設、累計3300社に 経産省調査 2022/05/18

大学発スタートアップが1年間に200社新設され、累計で3300社を超えたことが経済産業省の2021年度調査で分かった。増加数は慶応義塾大が首位で、大学系ベンチャーキャピタル(VC)が起業を支援した。2位は岐阜大だった。裾野が広がる一方、新規株式公開(IPO)に至る企業は少ない。さらなる活性化には持続的な成長戦略がカギになる。

21年1月に創業した慶大発のVetanic(ベタニック、東京・港)はイヌのiPS細胞を活用し、関節炎などの治療薬を開発する。慶大医学部の岡野栄之教授と日本大生物資源科学部の枝村一弥教授らが確立した細胞培養技術を独占的に利用できる権利を持つ。

別のバイオ企業を経営していた望月昭典代表がこの技術を知り、将来性を感じて創業した。21年7月にはVCの慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)などから1億5000万円を調達。ヘルスケア担当のキャピタリストを社外取締役として招き、研究施設の紹介や開発スケジュールの助言も受けている。治療薬は24~25年ごろの発売を目指す。

慶大発スタートアップは175社となり、前回の20年度調査から約2倍に増えた。新たに加わったうち、約6割が大学の研究成果を生かした企業という。KIIは起業の旗振り役として計約150億円規模のファンドを運営し、前回調査以降に13社へ投資している。

経産省が大学の研究成果を生かしたり、学生が立ち上げたりしたスタートアップを調べたところ、21年10月時点で3306社だった。1年間の新設数は200社で、20年度以前の設立を調査で把握したのが376社。解散などで175社減り、合計は20年度に比べ401社増えた。

技術革新を推進

15年に改正された学校教育法は大学の役割として、教育と研究に加えて「イノベーション推進」を新たに定めた。これをきっかけに起業を後押しするファンドや制度が広がっている。大学側も研究成果が「種」のまま埋もれてしまうことへの危機感は強い。

増加数で2位だった岐阜大は大学の研究成果を活用する企業を「大学発」と認定して支援する制度を持つ。オフィスや研究拠点となる学内の専用スペースのほか、研究機器などを割安に使えるようにする。民間企業で新規事業や共同開発に携わったスタッフら5人が創業当初の資金調達など様々な相談に乗っている。

これまでの認定企業は8社。第1号で電磁波計測装置を開発するフォトニック・エッジ(岐阜市)は工学部の久武信太郎准教授が19年に創業した。杉山武史最高経営責任者(CEO)は「企業やVC、イベントを紹介してもらえるなど、恩恵は大きい」と手応えを語る。

合計社数では東京大や京都大などの優位が続くが、増加数では私立大も目立った。4位の立命館大は20年4月に10億円規模のファンドを立ち上げ、9社に資金を投じた。「ごみ処理など社会課題の解決に取り組む企業を中心に投資している」(立命館大の酒井克也財務部長)

IPOは1社

12位の近畿大はNTTグループやVCなど約30社と連携し、学生の事業アイデアを法人化するプロジェクトに17年から取り組む。起業に興味を持つ学生を増やし、計11社を生んだ。

そのうちの1社で、21年3月に創業したMauyukio(マウユキオ、大阪市)はICチップを組み込んだスマート名刺を開発する。スマートフォンをかざすだけで、名刺管理アプリに名前や会社名を自動で転送する技術に強みを持つ。

ロードバイク向け次世代ブレーキ開発のVelonics(ヴェロニクス、大阪府岸和田市)の高倉正善社長もプロジェクトから起業した一人だ。急ブレーキ時にスリップを防ぐアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の構想を披露したところ、自転車ブレーキパッドメーカーの社長に将来性を評価された。試作品開発まで終え、現在は生産を委託する工場を探している。

着実に裾野が拡大する大学発スタートアップにとって、中長期の成長戦略をいかに描くかが課題になる。経産省の調査では21年度にIPOを果たしたのは東北大発のレナサイエンス1社にとどまった。起業を促す環境整備だけでなく、事業拡大に息長く伴走する枠組みが求められている。

(朝香湧、西堀卓司)

(日本経済新聞)

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