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大手銀行、事業承継のプロ育成 みずほは3年で100人 2023/08/23

大手銀行が事業承継の専門知識を持ち、高度な提案ができるプロ人材を育成する。みずほ銀行は3年間で100人を育てるほか、りそな銀行は10月に事業承継とM&A(合併・買収)のチームを統合し、200人体制とする。中堅・中小企業の経営者の高齢化が進み、これまで少なかった親族外承継のニーズが増えており、潜在的な案件を掘り起こして手数料収益の増加につなげる。

みずほ銀行は今春、専門人材の育成を目的とした「事業承継マイスター制度」を導入した。法人の営業担当者に提案書の書き方などを指南する1年間の研修を実施。一定のスキルを習得した担当者に社内資格を認定し、対外的に肩書を名乗れるようにする。3年間で100人を育てる計画で、全国の中堅・中小企業のオーナーに事業承継を提案できる体制を整える。

三菱UFJ銀行は4月から事業承継と資産承継のそれぞれに強みを持つ専門部署の連携を強化した。高齢の経営者には、会社の譲渡と遺産相続に対応した一体的な取り組みが必要なためだ。承継ビジネスに関する研修をこれまで1800人以上の行員が受講し、現場の営業担当者を含めた知識の底上げを図っている。

中堅・中小企業との取引に強みを持つりそな銀行も、M&Aによる親族外承継を支援するため、事業承継とM&Aのチームを10月に統合する。

大手行が専門人材の育成を急ぐのは、経営者の高齢化による休廃業や解散が増えているためだ。東京商工リサーチによると、2022年の休廃業・解散件数は前年比11.8%増の4万9625件と過去2番目の高水準だった。このうち損益が黒字のまま休廃業した企業は55%を占め、休廃業時の社長の平均年齢は過去最高の71.6歳だった。

中堅・中小企業の事業承継は、経営者の親族や従業員が引き継ぐのが一般的だった。ただ、少子化による人材不足や後継者の資金負担を背景に、第三者によるM&Aがここにきて急速に広がっている。M&A助言のレコフによると、事業承継M&Aは22年に約750件と前年比で2割弱増え、過去最高を更新した。

新型コロナウイルス禍で中堅・中小企業の資金繰りを支えた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済も足元で本格化する。帝国データバンクによると、1〜6月の倒産件数は4000件を超え、上半期として5年ぶりの高水準だった。事業を存続させるため、M&Aによる事業承継が増える可能性もある。

りそな銀行の岩永省一社長は中堅・中小企業の後継者不足について「親族内承継だけではもはや解決できない」と指摘する。大手行は、競争力のある技術やサービスを持つ企業は有能な経営者が引き継げば成長するとみてノウハウを持つ行員を増員。事業承継のニーズを現場で発掘し、本部の専門部署が買収先の企業や経営者候補を迅速に紹介できる体制をつくる。

事業承継はM&Aの仲介による手数料獲得に加え、経営者本人や親族の資産運用取引の増加が見込める利点がある。低金利の長期化によって貸し出しによる利ざやが縮小するなか、銀行によっては新たな収益源となる。

ただ、日本M&AセンターホールディングスやM&Aキャピタルパートナーズなどの専業大手も事業承継の取り扱い件数を増やしている。銀行が事業内容や経営方針を踏まえた最適なシナリオを提示できなければ、提案力で負けて案件が伸び悩む恐れもある。

地方銀行もファンドを通じた事業承継に力を入れる。秋田銀行は今月、事業承継の支援を主な目的とした10億円のファンドを組成した。阿波銀行も年度内に30億円の事業承継ファンドを立ち上げる計画だ。後継者不足に悩む企業の株式を取得して経営支援に乗り出すことで企業価値を向上させ、リターンの獲得を狙う。

(前田尚歩)

(日本経済新聞)

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