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富士通、9割ジョブ型に 専門人材獲得しやすく 来月めど、国内外のグループ11万人に拡大 2022/03/24

富士通は2022年4月をめどに「ジョブ型雇用」を、一部を除く国内外のグループ企業の11万人で導入する。これまで国内の管理職と海外従業員を対象としていたが、グループ会社を含む国内の一般社員5万人に広げる。国籍や組織の枠を超えて、最適な人材を育成・配置可能にし、IT(情報技術)サービスで進めている事業モデルの構造転換を後押しする。

導入に向け労働組合と新しい人事制度について協議を進める。ジョブ型雇用は、事前に職務の内容を明確にし、それに沿う人材を起用する制度。富士通は職種、階層ごとに求められる標準的な成果やスキル(技能)をまとめて社内に公開する。社員ごとに異なる詳細な職務内容については今後作成する。

新卒で入社する社員は、大学院で専門知識を身につけている場合などを除き、一定期間は一律で処遇する方針だ。

富士通は20年に国内グループの管理職1万5000人にジョブ型を先行して導入した。仕事の専門性や難易度で設定した格付けに応じた定額の月給と業績連動の賞与を支給している。すでに海外グループ会社の4万5000人もジョブ型で働いている。

国内グループ会社の一般社員に広げることで、国内外のグループ企業で働く13万人弱のうち、9割近くに相当する11万人がジョブ型の対象となる。上場子会社など一部は別途判断する。全世界のグループ社員がジョブ型で働くようになり、今後は国境を越えた社内公募の体制構築も目指す。

ジョブ型を広げる国内大企業は増えている。日立製作所は7月にも本体の全社員に広げる。三菱ケミカルは21年度から全社員、NTTは21年10月に全管理職に導入した。グループ会社を含めて国内外で9割近くの社員をジョブ型とする富士通は、国内大企業としては踏み込んだ対応となる。

ジョブ型をグループ全体に一気に拡大するのは、ITサービスの事業モデルの構造転換を速める狙いがある。従来は個別の顧客の要件に合わせてシステムを構築する「請負型」が主体だった。デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が拡大するなか、デジタル技術やデータ分析などを用いて課題を解決できるサービスを提供する「提案型」への転換を図っている。

例えば提案型のITサービスでは、店舗でレジに並ばず来店客のスマートフォンで決済を可能にしたり、データの解析で創薬の研究開発を支援したりする。

顧客との長年の付き合いが受注につながる請負型と異なり、提案型のDXサービスはデジタル技術や課題を洗い出すコンサルティング能力が問われる。勝ち抜くには優秀な人材の獲得が欠かせない。富士通が力を入れる人工知能(AI)などの専門人材はIT以外の業界も含めて引き合いが強く、高度なスキルに給与で報いやすいジョブ型の導入で人材を獲得しやすくなる。

ジョブ型導入は成長戦略に合わせた人材の育成にもつながる。富士通が戦略の実行力を高めるため、求めるスキルや職務を明確に定めることで人材を効率よく育てられる。すでに専門的なデジタル技術などスキル習得やキャリア形成を学べる研修を充実させてきており、22年2月時点の講座数は9600と、3年前の4倍に増やした。

富士通はこれまでパソコンや携帯電話などハード事業を縮小し、ITサービスに事業を集中する構造改革を進めてきた。21年3月期の売上収益は3兆5897億円と、5年前の4分の3に縮んだ。

一方、ITサービスでDXの強化に向けた施策も矢継ぎ早に打ってきた。グループ内の自治体ビジネスなどを集約した社員1万人超の新会社「富士通Japan」を20年10月に立ち上げ、開発面では21年4月にシステム構築などを手掛ける国内子会社11社を本体に吸収合併した。DXをけん引する子会社として「リッジラインズ」も発足した。

ただ、ITサービスの事業モデルを提案型に転換し、高収益を稼ぐ戦略は道半ばだ。23年3月期に主力のITサービスを担う「テクノロジーソリューション」事業で売上収益3兆5000億円、営業利益率10%の目標を掲げるが、半導体不足やコロナ禍の長期化が重なり、21年4~12月期の営業利益率は3.8%にとどまる。

ITサービスの収益力が高まらないなか、22年3月には本体と国内グループ会社で50歳以上の幹部社員の3031人が早期退職すると発表した。18年度に2850人の人員削減を実施したが、23年3月期の営業利益率10%達成に向けて、一段と合理化に踏み込んだ。

提案型モデルへの転換は、合理化だけでは実現できない。富士通は各地域で運用してきた統合基幹業務システム(ERP)を世界的に統合するプロジェクトを20年以降に進めてきた。散在するデータを集めて分析し、リソースを有効活用する狙い。データ活用が進めば、組織全体のデータを見て経営判断したり、業務改革の成功例を業種を超えて応用が可能になったりする。

国内外のグループ全体でジョブ型を導入すれば、親会社と子会社、入社した年や場所などに関係なく人材を配置できるようになる。成長戦略に合わせたデジタル人材をいかに育て、整えてきたデータインフラなどを有効活用できるか。制度を導入するだけでなく、人材戦略の実行力が問われる。

(山田彩未)

(日本経済新聞)

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