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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

寡占が奪うダイナミズム 競争こそが野心の源泉 2022/01/06

「この買収でソーシャルメディア・プラットフォームの競争は損なわれ、潜在的な挑戦者が消し去られてしまう」。英国の競争・市場庁(CMA)は2021年11月末、米メタ(旧フェイスブック)による米画像共有サービス大手ジフィーの買収に待ったをかけた。

ジフィーは広告や画像検索で特殊技術を持ち、メタのライバルに成長する可能性を秘めていた。CMAはメタが競合相手を取り込めば消費者の不利益になると判断した。

新興の芽を摘む
米IT大手「GAFA」への視線が厳しくなるのは巨大な資金力を武器に次の成長の芽を摘む存在と認識されるからだ。

先進国で経済成長が鈍化している背景には生産年齢人口の伸び悩みがある。さらに見逃せないのは企業間の競争が減りイノベーションを生み出す力が衰えていることだ。

国際通貨基金(IMF)の分析は巨大企業がますます富み、その他の企業が「多弱」に陥る傾向を裏付ける。2000年以降、世界のトップ10%の企業はM&A(合併・買収)を重ねて右肩上がりで収益を伸ばす一方、圧倒的多数の企業ではほぼゼロ成長が続く。

資金力のある企業は新たな技術を獲得するためM&Aに動く。競合するプレーヤーの数が減る結果、研究開発への意欲が薄れる。IMFは巨大企業のM&Aによって今後の研究開発費が4%減ると試算する。

IMFは21年3月の報告書で「過大な支配力が中期的に成長を妨げイノベーションを抑圧する」と警告。QUICK・ファクトセットとリフィニティブのデータでも世界のM&A総額が増加傾向にある中、研究開発費の伸び率は06~10年の年平均8.6%から16~20年に3.5%へ下がった。

GAFAを抱える米国も危機感を強める。バイデン大統領は「競争のない資本主義は資本主義ではなく、搾取だ」と主張し、32歳のリナ・カーン氏を米連邦取引委員会(FTC)委員長に指名した。競争政策の専門家であるカーン氏は「次世代のトラストバスター(独占の破壊者)」と呼ばれ、大企業との対決姿勢を鮮明にする。

GAFAのような突出した企業を生んでいない日本でも寡占は着実に進んできた。東大の大橋弘教授らの製造業の推計によれば、自動車や製薬など各産業の上位4社の売上高が全体に占める割合は01年の39%から16年に44%まで上昇した。

日本企業は1990年代のバブル経済崩壊以後、3つの過剰(債務・設備・雇用)に見舞われた。これを解消する過程で企業は再編され、寡占の傾向が強まった。競争の緊張感が薄れイノベーションを生む力は衰えた。

研究費伸び鈍く
MM総研(東京・港)によると10年度の国内携帯電話市場では10社以上がしのぎを削り、シャープや富士通、パナソニック、NEC、京セラなどに米アップルや韓国サムスンなど海外勢が挑む構図だった。20年度になると上位5社で出荷台数の約8割を占めるまで集約され、5割近くを握るアップルをシャープ、サムスン、富士通、ソニーが追う構図に変わった。

競争が減ることで投資は細る。経済協力開発機構(OECD)などによると00年から19年までの日本の研究開発費の伸びは30%にとどまり、中国の13倍や米欧の7割増と比べ大きく見劣りする。

「アニマル・スピリッツ(野心)が失われると資本主義は衰退する」。英経済学者のケインズはこう説いた。野心の源泉となるのは競争だ。プレーヤーが静かに減る日本と巨大企業がM&Aを進める米国で形は違うものの、競い合う機会が奪われる状況は同じ。企業の野心を呼び覚ます土壌を作り直せなければ成長の未来は見えてこない。

(日本経済新聞)

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