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志の高さ、柳井氏から学ぶ ジーユー(GU)社長 柚木治氏(下)  2021/11/25

ファーストリテイリング傘下のジーユー(GU)を率いる柚木治社長は、部下を育てるうえで「使命感を持たせること」を大切にしている。「使命感によって人は強くなる」。ファストリの柳井正会長兼社長の志の高さに触れたことが、その信念につながった。柚木社長は柳井氏の薫陶を受けてリーダーシップに磨きをかけ、GUを国内有数のアパレル企業に押し上げた。

――人材育成において何を重視していますか。

「自発的な使命感を持たせることですね。使命感があれば情熱や勇気がわいてきます。他者への思いやりも出てきますし、行動力にも影響します。使命感があるかどうかは一番重要だと思います」

ファーストリテイリングの野菜事業解散を発表する柚木治氏(左)と柳井正氏(2004年3月)
「でも簡単なことではありません。使命感は自分ひとりで生まれるものではなく、他人を優先する『利他』の心から生まれます。しかも、自分自身が満たされていないと、なかなか生まれません」

――企業でいえば、ES(従業員満足度)が低いと、CS(顧客満足度)も高くならないということでしょうか。

「そうです。自分が会社から大切にされていると感じられない人は、顧客のことも大切にしたいとは思えないのではないでしょうか。『利己』の心が満足してはじめて、利他の心や行動につながり、そして人間としての次元がひとつ上がるのだと思います」

「そこでリーダーとしては育てたい人物に仕事を任せ、期待し、後押しをします。まずは自分に自信を付けてもらうため、成功体験を積ませることも大事だと思います」

――GUではどんな成功体験がありましたか。

「2017年に初出店した香港事業ですね。現地に受け入れられ、21年8月期には初めて黒字化を果たしました。香港事業を新規で立ち上げた人物は現地の社員と一緒に商品をつくったのです。かつては日本の本社にいる日本人社員が現地の市場調査結果や社員の声を聞き、『分かったつもり』で商品を作っていました。でもそれでは現地には受け入れられません」

「商品のサンプルを検討する段階から現地社員に加わってもらい、一緒につくりました。現地のお客様に気に入ってもらえる商品が完成し、現地の社員もお客様に商品を届けたい気持ちが高まりました。自分で分かったつもりになるのではなく、本当の意味で一緒に仕事をしないといけないと改めて思いました」

――成功体験はその後の仕事にどうつながりましたか。

「香港事業では、そんなリーダーの姿を他の社員が積極的に学んでいく循環が生まれました。やはり実績が出た人は皆が信じる。そしてその人はリーダーとしての成功体験をもとに、さらに成長していく。この循環をどう回していけるかだと思っています」

――育てる側の忍耐や自制心も試されそうです。

「時には厳しさも重要ですね。あえて修羅場を経験させたり、高い要求を与えて叱って伸ばしたりも必要です。自分自身を振り返っても、そういう時に成長しました。厳しさはわたしにとっては不得手な部分で、部下に対してやりきれているだろうかと思うこともありますね」

「でも『チームワーク重視』などを理由に厳しくしなければ、ただの緩いチームになり部下も成長しません。結果として全員が不幸になります。それは経営者としては怠慢に等しい。その点、柳井会長は部下に期待しながら厳しくも接する。両方ができる強いリーダーだと感じています」

――柳井氏はGUに、売り上げを現在(21年8月期で2494億円)の4倍の1兆円にしろと厳命しています。

「柳井会長には早くグローバルブランドになれと言われていますね。私は柳井会長の薫陶を受けながら、GUのリーダーとして仕事ができる、恵まれた立場です。一緒に仕事をして多くのことを学んでいます。柳井会長がいなければ今の私はないでしょう」

「一方でリーダーとしてあるべき姿を考えたとき、柳井会長と自分との格差をまざまざと見せつけられます。これは本当にしんどいです。比べるのも僭越(せんえつ)ですが、毎日のように自己嫌悪や自信喪失の思いに駆られます。柳井会長は、まず志の高さ、それから人生をどれだけ仕事にかけているか、最後に圧倒的な実行力、この3つのレベルが全然違いますね」

――最近は柳井氏とどんなやり取りをしましたか。

「今年の初夏のことです。GUの業績は良いと私が思っていた時期に、柳井会長がGUの売り場を見て電話をかけてきました。『今のGUはよくない』というのです。『商品の完成度が低く、販売員が自社商品に真に誇りを持てていない』といった厳しい内容でした」

「柳井会長はほかにも『販売員が作業に没頭し、商品や接客の知識・スキルが十分にない』『販売員がお客様の方を向いていない』などと指摘されました。販売員が悪いのではありません。そうさせている経営者の責任です」

「いまは新型コロナウイルス禍の厳しい状況です。だから売り上げはこんなものかという思いが私にはありました。しかし柳井会長はコロナとは関係なく、常に絶対基準で現場を見ていました。お客様の視点にたち、店や販売員一人ひとりが輝いているかどうかを見ていたわけです。何十年も前、柳井会長がまだ1人の商店主だった頃と、何も変わっていないという迫力を感じましたね」

――柳井氏は「ファッションの民主化」を掲げ、高価だったフリースやジーンズなどを老若男女、誰もが安価で着られるようにしました。

「経営者にとって戦略やビジネスモデルはどうでもいいと思います。高い志、人生を仕事にかける姿勢、それから実行力が本当に大事なことです。戦略などは後からみんなでつくればいいことです」

――後継者についてはどのように考えていますか。

「もちろん考えています。後継者の問題は、言い換えれば自分がトップでいいのかということです。自分がトップじゃない方がGUにとって良いと思うときが来たら、代わるべきです。わたしはオーナーではないし、逃げるつもりもない。自分で見極めていきたいです」

リーダーを目指すあなたへ

「失敗をたくさんすること」がよいと思います。スポーツと同じで、失敗せずに上達することはありませんから。コツは「ちょっと背伸びをし続けること」で、迷ったら少しドキドキする方を選び、前に出ることですね。
(古川慶一)

(日本経済新聞)

世の中をあっと言わせたい ジーユー(GU)社長 柚木治氏(上) 2021/11/18

ファーストリテイリング傘下のジーユー(GU)は「ファッションを、もっと自由に。」を掲げ、2006年の創業以来成長を続けてきた。いまでは中国本土や台湾、香港にも進出し、売上高2000億円を超すブランドに育った。10年からトップを務める柚木治社長(56)は「世の中をあっと言わせたい」という意欲で組織を引っ張る。リーダーとしての原点は、ファストリがかつて参入した野菜事業の失敗で得た教訓だ。

――柚木社長にとってリーダーとはどんな存在ですか。

「結果を出すことが全てです。そのために全てを引き受けるということですね。リーダーはその振る舞いひとつで自分以外の人や社会にも影響を及ぼす存在です。良い結果を生み出せないなら、代わった方がいいでしょう。だから全ての物事に言い訳をしてはいけないと思っています」

「新型コロナウイルスが流行しようが、天候や景気が悪かろうが、人や環境のせいにせずに全てを引き受ける覚悟が必要です。リーダーは一番やりがいがある仕事ですが、ものすごく面倒くさくもあります。それでも『やるんだ!』と決意して行動することが求められています」

――良いリーダーの条件についてどう考えますか。

「リーダーにふさわしい適正は、まず自然体でリーダーをやれることだと思います。具体的には、私にとって人生の大好物と言えるのは、(1)考え抜いたアイデア(2)コツコツ努力する(3)ポジティブなチームワーク――この3つです。これをかけ算して人々を驚かせることが大好きです。これらができることはリーダーの資質のひとつだと思います」

「以前から『ノーアイデアノーライフ』とよく言っています。考えに考え抜いたアイデアが大好きです。2つめのコツコツ努力することは、私は貧乏性なところがあって努力しないと落ち着かない。昔風にいうと努力しないとバチが当たると考えています」

「そして3つめのポジティブなチームワークは、従業員の皆が楽しくノリノリで取り組んでいる時には良いエネルギーが出ます。GUの従業員1万6千人の全員がお客様を思って全力を尽くす組織でありたいです」

「この3つのかけ算でお客様も、世の中もあっと言わせたいと思っています。GUをそういう会社にしたいし、不思議と自身がそういうふうにできている時は業績もいいです。できていない時は、全てが良くないですね」

――柚木社長の明るいキャラクターもリーダーに必要な資質だと思います。

「いや、性格的にはリーダーに不向きだと思います。一生懸命やっていますが、私は支配欲求が弱いのですよ。何かを支配するとか、人の上に立ちたいとかはないのです」

「逆に親和欲求が強く、『人と仲良くしたい』とか『人からよく思われたい』とかが強いタイプです。だから大きな組織の先頭にたって号令をかけて引っ張っていくよりも、強いトップのサポート役の方が向いているのではないかと今でも思っています」

――そうなのですか。それでもGUのトップを務めて、10年以上になります。

「私は関西人なので、大勢の前で話すのは確かに好きですよ。だからよく誤解されるのですが、トップの立場は本当にしんどいですね。それでもGUのリーダーを引き受けたということです」

「GUはもともと創業社長がいて、私はサポート役として途中から加わりました。ところがその人物が異動することになり、ファストリの柳井正会長兼社長から『GUの社長をやってくれ』と言われました。私は商品の知識もなく、性格的に向いてないと固辞したのです。でも柳井氏から真顔で『ほかに人材がいない』『頼む』と何回も言われました。やるか、放り投げるか。迷いましたが最後はやるしかないと引き受けました」

――柳井氏にそこまで頼まれたら断れないですよね。

「だから私はリーダーを演じている面があります。家族からも『社長になって声が大きくなったね』と言われました。レストランで食事を注文する時など自分ではこれまでと同じつもりでも、店全員に聞こえるような声で話していて驚かれることもあります。でも不思議なもので、演じているとそれが自信になってくるんです」

――柚木社長がリーダー像を確立した出発点となるような経験はありましたか。

2002年に野菜事業を立ち上げたころの柚木氏。当時は「成功しないはずがない」と感じていた
「話したくはないのですが、失敗に終わったファストリの野菜事業です。02年に食品子会社を設立して新規参入しましたが、1年半で撤退しました。大失敗でした。私は事業化を進言した責任者でした。あの経験があったからこそ、いまの私があります」

――ユニクロと同じく自社で一気通貫の流通を構築し、契約栽培した野菜を直接届けるビジネスモデルでした。

「ところが箸にも棒にもかからず、短期間で多額の損を出すことになりました。うぬぼれがあったと思います。当時は自分が優秀な人間だと思っていましたから。優秀な自分×ファストリの柳井の賛同×必死でやる、という3つのかけ算で絶対成功すると思っていました。成功しないわけがないとすら思っていました。でも自分は優秀ではなく、何にもできなかったのです」

――野菜は服に比べて在庫管理が難しい面もありました。当時を振り返って何が足りなかったのでしょうか。

「経営者としての志(パーパス)ですね。真の志がなかったのだと思います。現実を直視できておらず、実行力もありませんでした」

――失敗からどんな教訓を得たのでしょうか。

「私は会社は潰れるものだと今でも強く感じています。そして、物は普通はそうそう売れないものだということも分かりました。売るという行為はそんなに易しいものではありません。自分独りでは何もできないし、社員や取引先も含めて協力してくれる人がいて、成り立っています」

「GUはまだ創業から15年ですがビジネスモデルはこれまでに6~7回作り替えています。企業のあり方をどんどんと作り替え続けているから、いまもGUが生き残っているのだと思います」

新作発表会でも登壇
 ゆのき・おさむ 1965年兵庫県出身。一橋大経卒。大手商社、外資系ノンバンクを経て99年ファーストリテイリング入社。10年ジーユー(GU)社長に就任。
 大学時代は学園祭の実行委員だった。社会人でも同期の結婚式で出し物を企画し、「チームワークを発揮し、感動した友人を見ると、しびれるほどうれしい」。
 GUでは接客に優れ着こなしも提案できるスタッフを「おしゃリスタ」と認定する。新作発表会では柚木社長がおしゃリスタと共にステージに立つことも。

お薦めの本
V字回復の経営(三枝匡著)
30代の時に読みました。実話をもとにした企業変革ストーリーで、ドラマとしても面白く引き込まれます。経営の理論と具体が分かりやすくまとめられ、今も仕事中にたびたび思い出します。

(古川慶一)

(日本経済新聞)

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