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成長も「タイパ」、若手の新興転職18倍 居心地は二の次 会社と社員 変わる力学 2023/12/04

【この記事のポイント】
・若手が会社に求めるのは安定よりも自分の成長
・大手から新興に転じた人は5年前の18倍に
・昇進、評価で努力に報いなければ引き留められず

会社と社員の力関係が変わってきた。人手不足や転職の増加で主導権が従業員に移り、若手や中堅は職場環境が良くても成長機会の乏しい組織に背を向ける。資本市場も人材を育てられる企業に投資を絞り始めた。社員の「自立」が企業に新たな生き残りの条件を突きつける。

希望の職種、少ない残業、同僚もいい人ばかり。絵に描いたような「ホワイト職場」だった。でも会社を辞めた。

金田直純さん(28)は新卒で入った電機大手を退職し、3月にソフト開発の中堅、マネーフォワードに転じた。理由は年功序列を基にした職場の「緩やかな時間」だ。管理職に就けるのは早くても30代後半から、成果に関わらず評価は同年代で横並び。「ここにいると社外で通用しなくなる」。不安が募り、居心地のいい会社に別れを告げた。

新たな職場では製品の性能試験を任されている。20代の管理職も多い。日々の新たな要求に応えるたび、自分の技能が磨かれていることを実感する。「高速道路に乗り換えた気分。3倍のスピードで成長できる」

4人に1人退職
企業と従業員の関係が変化している。社員は生活の安定と引き換えに、異動や処遇で会社の「支配」を受け入れてきた。だが、若手や中堅が会社に求めるのは安定よりも自分の成長に変わった。転職をスキルの習得できない職場からの「脱出」と位置付け、成長にもタイムパフォーマンス(時間効率)を追求する。

タイパの象徴が大企業から新興企業への転職だ。エン・ジャパンの運営する34歳以下を対象とした転職支援サービスでは4〜9月に大手から新興に転じた人が5年前の18倍になった。年齢に関係なく大きな仕事を任され、大企業よりも速い速度で成長できるとして若手が引き寄せられている。

厚生労働省によると、2020年に入社した大企業の大卒社員は3年以内に4人に1人が辞めた。10年前の5人に1人よりも多い。企業は残業時間の削減など職場環境の改善で引き留めようとするが響かない。

社員が自社の労働環境を評価する情報サイト、オープンワークによれば、21年までの約10年間で平均残業時間は月46時間から24時間に半減した。「待遇面の満足度」も5段階評価で2.6から2.9に高まった。

半面、成長についての満足度は下がり、「20代成長環境」への評価は3.0から2.9に低下した。業種別では大企業中心の銀行や鉄鋼の落ち込みが目立つ。職場の「ホワイト化」と成長への期待が反比例している格好だ。リクルートワークス研究所の古屋星斗氏は「法令順守に厳しい大手ほど長時間の職場内訓練(OJT)が難しくなった。成長への不安を感じて辞める若手が多い」と指摘する。

自己防衛も強まる。パーソルグループによると、スキルアップなどへの20代の自己投資額は22年に平均約9万8千円と6年前より56%増えた。所得の高い30代以上の伸び率を上回る。

KDDI、昇進時間4分の1に
「『石の上にも三年』は通用しない。組織の新陳代謝を早めないと人材を引き留められない」。KDDIの木村理恵子人財開発部長は語る。

大企業も動き始めた。KDDIは20年から仕事の内容で待遇を決める「ジョブ型雇用」を導入した。入社から管理職になるまでの時間を最短8年から2年に縮めた。部下のいる30代前半の管理職は23年に4年前の10倍に増えた。

今春に営業部門の管理職に就いた杉原稔さん(32)は6人の部下を持つ。半数は年上だ。「以前は会社に貢献しても報われるのは数年後。努力が評価に反映されるまでの時間が短くなって成長への意欲が高まった」と話す。リコーや住友商事も昇進に必要な年数を短縮し、20代でも管理職になれる制度を導入した。

社員の会社からの遠心力はかつてなく強まっている。少子高齢化で人材不足はさらに深刻化する見込み。多様な働き手に向き合った上で処遇や育成の横並びから脱し、社員の成長を支援できない企業は存続すらおぼつかなくなる。

(雇用エディター 松井基一、江口良輔、京塚環が担当)

(日経新聞)

「ゆるブラック」浮上、働き方改革の罠 成長求める若手 2023/10/15

2013年に新語・流行語大賞のトップ10に入った「ブラック企業」は、長時間労働やパワハラが横行し、働きたくない企業の代名詞となった。この10年で人への投資に対する認識も高まり、「ホワイト企業」が増える一方、緩すぎて成長機会を見いだせない「ゆるブラック」なる言葉も出てきた。働きやすく、働きがいのある職場の追求は続く。

入社早々の4月に、転職サービスへの登録を済ます新社会人が増えている。「doda(デューダ)」では、その数が11年から23年にかけて約30倍となった。登録者全体(約6倍)と比べると、伸び幅が際立つ。

doda副編集長の桜井貴史氏は「成長機会を重視し、自分の市場価値を高める方向に意識が移っている」と指摘。それに見合うような達成感を得られる仕事やテーマを設定できないと「人材の流出につながる可能性もある」と説明する。求めているのは働きやすさだけではない。20代前半の就業意識は大きく変わりつつある。

かつてブラック企業が少なくなかった日本も、時間外労働の上限規制を盛り込んだ働き方改革関連法施行や、「エンゲージメント」(働きがい)を重視する流れのなかで、就労環境が改善してきた。

全国約5万人の同一個人を追跡調査するリクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」によると、月45時間以上の残業をする人の割合は22年に11.6%と、16年比で4.2ポイント低下。就業者1人当たりの平均年間総実労働時間は、短時間労働者の増加もあるが主要7カ国(G7)でちょうど真ん中の4位だ。有給休暇の取得率も過去最高を更新している。

日本経済新聞は転職サイト大手のビズリーチ(東京・渋谷)の協力を得て、同社登録会員向けに10月初旬にアンケートを実施した。有効回答1749人のうち、直近の在籍企業(現職含む)が「ホワイト企業と感じる」と回答した割合は65%。理由は複数回答で「労働時間が適切である(過重労働がない)」が71%で最も多かった。

IT(情報技術)業界はブラック企業が多いとされたが、SCSKは残業時間削減と有休取得率の目標を掲げ、浮いた残業代分をボーナスとして社員に還元するなど改革を実施。11年度に月平均27.8時間あった残業は、22年度に22時間に減らしつつ、生産性を高めて営業利益は23年3月期で12年3月期比3倍に伸びた。

猛烈な働き方で知られたリクルートも、現在は働く場所を自分で選び、出社率は平均で4割を切る。少ない接触機会を有意義にしようと、7月にリニューアルした本社は「人がつながり、出会う場所として設計している」(佐野敦司・ワークプレイス統括室長)

ホワイト化は歓迎すべき流れだが、行き過ぎには罠(わな)もある。労働環境は厳しくないが、やりがいや成長を感じられない職場を示す「ゆるブラック」と言われかねない。

19〜21年卒社員に聞いたリクルートワークス研の調査によると「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」(48.9%)、「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる」(38.6%)といった不安が高まっている。

約1560万件の社員口コミなどを集める就職・転職者向けサイト運営のオープンワークに依頼し、職場環境について13年と22年で「社員の士気」「待遇面の満足度」など8つの評価項目に関する口コミをスコアにして分析した。それによると全業界平均で、「20代成長環境」のみが低下していることが分かった。

苛烈な職場も依然残っている。「まともな職場ではおよそ使われない言葉で罵倒されることが日常的に」――。中古車販売大手、ビッグモーター(東京都多摩市)による保険金の不正請求問題を受けた調査報告書には、こんな言葉が並んだ。

厚生労働省の調査では過去3年間に職場のパワハラを経験したという従業員は12年度に25.3%だったが、20年度は31.4%となった。労働密度の高まりや、「パワハラ防止法」の認知度向上などで相談や申告の数も増えた。経団連の調査でも同様の傾向だ。

働きやすく、働きがいもある「真のホワイト企業」への進化をいかに遂げるか。大企業で先駆的に16年に副業を解禁したロート製薬では、23年3月時点で延べ144人が副業を実践し、クラフトビールの醸造・販売など本業とは関わりのない仕事も目立つ。社員の起業を応援する取り組みも始め、挑戦意欲をかき立てようと工夫を重ねてきた。「人的資本経営」の本気度が問われている。
〈Review 記者から〉働く幸せ、生産性向上のカギ
パーソル総合研究所は2022年、「グローバル就業実態・成長意識調査」で世界18カ国・地域の主要都市で働く20〜69歳に「働くことを通じて幸せを感じているか」と聞いた。日本で「あてはまる」「ややあてはまる」と回答したのは合計で49.1%。全体平均を25ポイントほど下回り、国・地域別で最も少なかった。

働く幸せ実感の低さについて、同社の井上亮太郎上席主任研究員は「組織文化の特徴として権威主義・責任回避の傾向が強く、異質な他者に対する寛容度が低いことが背景にある」と説明する。「上層部の決定にはとりあえず従う」「物事は事前の根回しによって決定される」といった傾向は、日本が韓国と並んで強いという。働き手の成長実感の低さにも関連していて、「自発的な学習意欲を阻害している可能性もある」。

「自分とは考え方や好み、やり方が違う人とも積極的に関わる」と回答した割合など寛容性も、日本は2番目に低かった。幸せな人は創造性や生産性が高く、欠勤率や離職率が低いとされる。働く幸せを感じない社員の多さは、日本の労働生産性やエンゲージメントが低迷し続けている現状とも符合しているようだ。

働くことはかつてのような苦役でも、生活の糧を得るだけの手段でもない。社会とのつながりや自己実現、社会貢献になるといったポジティブな労働観を持てるような組織文化の変革が不可欠だ。

(働き方改革エディター 井上孝之)

エンゲージメント
 働き手が会社や仕事に愛着ややりがいを感じ、主体的に業務に取り組む状態を示す。所属する会社・組織に対する「従業員エンゲージメント」、仕事に対する「ワーク・エンゲージメント」に分類されるが、区別されずに「働きがい」のような意味で使われることが多い。経団連は働き方改革の第2段階として、エンゲージメント向上を目標に掲げる。職場環境や自己成長の機会、会社のビジョンへの共感、経営陣への信頼、職務のやりがいなど様々な要素で構成され、その水準をスコアとして測定。組織改善に生かすことができる。生産性向上や離職防止などにつながるとして重視する企業はここ数年で増え、同スコアを統合報告書などで開示する企業も出てきた。

(日経新聞)

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