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投資ファンド曲がり角 アジア、ピークの半分に 2022/02/22

企業などに投融資する世界のファンドが岐路にさしかかっている。低金利下で急成長を続けてきたが、世界的に金利先高観が強まる中、収益の維持が難しい局面に入りつつある。主要投資先の中国では政治リスクがくすぶり、最大市場の米国でも規制論が浮上する。大手ファンドが投資を縮小する動きも出ており、ファンドを取り巻く環境は不透明感が増している。

金利先高観や米での規制論が壁
「今後、大型スタートアップへの投資は控える」。米大手ファンドのタイガー・グローバル・マネジメントは機関投資家に対して2月初め、投資方針の見直しを明らかにした。米オンラインメディア「ジ・インフォメーション」が伝えた。タイガーは上場が視野に入った成長企業に出資して規模拡大を後押しし、上場時に資金回収する戦略をとっていた。ここ最近の世界的なハイテク株安を受け、より若い企業への投資に軸足を移す。

米D1キャピタル・パートナーズや米オクタへドロン・キャピタルも未公開株投資を控える方針だという。代わりに、上場したものの株価がさえない割安ハイテク企業に投資してリターンを追求する。

2021年までのファンド業界は勢いに乗っていた。主因が低金利だ。債券利回りで運用益を確保するのが難しくなり、高いリターンが見込めるファンドに資金が集中した。英調査会社プレキンが世界の未公開株や不動産、インフラ、天然資源、融資案件に資金を出すプライベート(未公開)ファンドの資金調達額を集計したところ、21年は約1兆3450億ドル(約154兆円)と2年ぶりに過去最高を更新した。

一般にファンドは機関投資家から集めた資金と銀行借り入れを活用して投資を実行する。低金利下では借入金に対する利払い負担が減る。さらに投資先の未公開企業を上場させる場合、株式相場が堅調だと高値が付きやすく、ファンドのリターンは高まる傾向にある。

しかしここにきて世界的に金利上昇圧力が強まっている。プレキンが10~21年までのファンドの運用成績を集計したところ、金利が横ばいの時期の年平均リターンは14.4%だったのに対し、金利上昇時は11.4%だった。金利上昇時にリターンが上がったのは不動産のみで、他は軒並み低下した。最も厳しい結果だったのはベンチャーキャピタルと企業融資ファンドで、金利上昇時のリターンは6ポイント強下がった。

ファンドは当局による規制リスクにも直面している。かつて成長市場と期待された中国では米中対立や中国当局による自国企業への締め付けが響き、ファンドの縮小基調が続く。地域別のファンド調達額をみると、北米や欧州は増加基調が続く半面、アジアは17年のピークから半減した。

ファンドの最大投資先である北米でもファンド規制論がくすぶる。米証券取引委員会(SEC)は22年に入り、投資で多額の損失を被ったり、顧客の大量解約に直面したりした場合に直ちに規制当局に報告する新ルール案や、運用成績、手数料、報酬の詳細を顧客に提供するよう義務付ける案を立て続けに発表した。既存の金融規制から外れ、「影の銀行(シャドーバンク)」とも呼ばれるファンドへの監督を強化する狙いがある。

こうしたなか、「金利上昇が逆風とはいえ、相対的に高いリターンが見込める未公開ファンドに一定額を振り向けなければ運用益を維持できない」(国内大手金融機関の運用担当者)というのも実情だ。米ブラックストーンが最近設立したアジア企業に投資する2号ファンドは110億ドルで、18年の1号ファンドの約3倍となった。

ただファンドにとって、資金調達も投資活動も全て順調だった時期は終わりが近づいている。より成長の見込める投資先を選別するなど、高度な運用手腕が求められることになる。ファンドを活用して資金調達してきた企業側も、調達手段の多様化などを迫られる可能性がある。

(和田大蔵)

(日本経済新聞)

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