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攻防生成AI 基礎研究勢、慎重から一転 グーグル、検索に実装  30億台基盤飛躍狙う/メタは公開で差異化 2023/07/04

生成人工知能(AI)の実用化をめぐる競争が熱を帯びている。「Chat(チャット)GPT」の米オープンAIと組んだ米マイクロソフトが先行し、基礎研究に強い米グーグルと米メタが巻き返しに動き始めた。新興勢を交えた覇権争いの行方は混沌としてきた。

6月半ば、米ニューヨーク市内のしゃれたオフィスの一室でグーグルは新サービス「バーチャル試着」の説明会を開いた。検索サービスで衣料品について調べると、自分の体形に近いモデルが着た様子を確認できる。

論文数はトップ
新サービスを可能にしたのが生成AIだ。商品画像を加工し、実際に撮影したモデルの写真と合成する。体形によって異なる生地の伸び方や、しわの寄り具合なども再現する。同社が主力の検索サービスで大規模に生成AIを導入するのは初めてという。

グーグルは長らく世界のAI研究をリードしてきた。日本経済新聞と調査会社アスタミューゼ(東京・千代田)が生成AIに関連する2012年以降の論文数を集計したところ、ランキングの首位はグーグルの818本だった。2位のマイクロソフトの662本を2割強上回った。

チャットGPTにも使われる「トランスフォーマー」と呼ぶ生成AIの基盤技術を開発したのもグーグルだ。同技術に関する17年の論文の引用数は約7万8000回に達した。ライバルの論文の引用数は多くても数百件であることが大半だ。調査はグーグルの基礎研究分野における優位を裏付けている。

サービスの浸透度合いに目を転じると異なる実態が浮かび上がる。生成AIに関する約7万5000件の論文のうち、約2700件がオープンAIの製品・サービス名に言及していた。一方、グーグルの製品・サービス名への言及が確認できたのは10件未満だった。

こうした状態になった背景について、グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「何十億もの人々が当社のサービスを使うのは提供する情報が正しいからだ」と説明する。間違いを含むことがある生成AIを検索サービスなどに導入することに慎重だった。

22年11月に公開されたチャットGPTの爆発的な普及は、グーグルの姿勢を一転させた。23年5月に開いた開発者会議では自然な文章で質問に受け答えする「Bard(バード)」の提供地域を180カ国・地域に拡大すると表明した。対応言語も40に増やす。

基盤となる大規模言語モデルの「PaLM2」には大きさが異なる4種類を用意し、もっとも小さなものはスマートフォン上で動作する。世界で30億台超が普及した基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した端末との連携を視野に入れている。

グーグルには電子メール「Gmail(ジーメール)」や動画共有サイト「YouTube(ユーチューブ)」など利用者が5億人を超えるサービスが15ある。他社にない幅広い消費者向けサービスに生成AIを組み込み、ネット広告などの収益を維持・拡大する狙いだ。

誤情報を懸念
メタを取り巻く環境もグーグルと似通っている。旧フェイスブックは13年、機械学習の権威の一人である米ニューヨーク大学のヤン・ルカン教授をトップに招いてAI研究所を設立した。日経とアスタミューゼの調査によるとメタの論文数は271本と、民間企業ではグーグルとマイクロソフトに続く3位だった。

メタは傘下のSNSや画像共有アプリ、対話アプリなどを合わせると30億人を超える利用者を抱える。ただ、ルカン氏が率いる研究所は基礎研究に重点を置き、実用化に向けた歩みは遅かったとされる。

主力のSNSで個人情報の不適切な利用が相次いだことも重なり、誤情報対策が必要な生成AIの実用化に慎重にならざるを得なかったとの見方もある。

「昨年、生成AIで驚くべきブレークスルーが起き、我が社のすべてのサービスに組み込むことが可能になった」。マーク・ザッカーバーグCEOが社員集会でこう話したのは6月初めのことだ。対話アプリで問いかけに答えたり、画像共有アプリで画像を加工したりする機能に使う計画だ。

多くの企業が生成AIの基盤となる大規模言語モデルの詳細を非公表とするなか、メタは誰でも利用したり改変したりできるオープンソースとすることを視野に入れている。OSの「Linux(リナックス)」が企業向けなどで利用を拡大した手法だ。

生成AIをめぐる競争について、米ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏は「マイクロソフトが先行している」との見方を示す。ただ、足元では技術力の高いオープンAIとの関係に苦慮しているとの観測が浮上している。

オープンAIは今春、マイクロソフトのビジネスチャットアプリ「Teams(チームズ)」と競合する「Slack(スラック)」にも技術の供与を始めた。投資家の間ではマイクロソフトがオープンAIを手の内にとどめ続けられるかが関心事になっている。

「確かにオープンAIは世界で最も賢いAI研究者集団のひとつだが、当社が補完的な役割を果たしている側面もある」。マイクロソフトのケビン・スコット最高技術責任者(CTO)は6月中旬の投資家との会合でこう述べ、不安解消に努めた。

テックの領域では競争初期の先頭走者が必ずしも勝者にならないとのジンクスがある。スマホ市場で先行した「ブラックベリー」は脱落し、SNSの普及初期に注目を集めた「マイスペース」は早々に失速した。生成AI分野の勢力争いの先行きもまだ見通せない。

(日本経済新聞)

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