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新興テック、人員削減2万人 IPO低迷で急成長に転機 2022/06/01

世界の新興テクノロジー企業が試練に直面している。2022年4月以降のレイオフ(一時解雇)は2万人を超え、四半期として過去2年間で最多となる。ハイテク株安と新規株式公開(IPO)の低迷により資金調達のハードルが上がり、生き残りを優先せざるを得ないためだ。大量の資金で事業を急成長させ、企業価値を膨らませる仕組みは転機を迎えている。
「成功を確実にするためには企業規模の縮小が避けられない」。5月初旬、電子商取引(EC)支援を手掛ける米セラシオのトップが社員にこんな内容の電子メールを送った。18年に発足した同社はアマゾン・ドット・コム出店企業の買収で急成長を果たし、企業評価額が100億ドル(約1兆3000億円)に達していた。米メディアなどによると、このほど社員の最大20%を削減したという。

公表情報を基に新興テクノロジー企業の人員削減を集計しているLayoffs.fyiによると、4月以降の米国を中心とする世界のレイオフは2万514人(31日時点)となった。直近2週間で倍増しており、雇用環境は急速に悪化しているようだ。同サイトは新型コロナウイルスの流行に伴いレイオフが急増した20年3月から集計を始め、同年4~6月期が6万人超で最多だった。
レイオフ実施企業のリストにはセラシオをはじめ、「ユニコーン」と呼ばれる企業価値10億ドル以上の未上場企業が並ぶ。

米調査会社CBインサイツによるとユニコーンは世界で1000社を超え、直近2年間で倍増した。ベンチャーキャピタル(VC)や事業会社が新規株式公開(IPO)での値上がり益を狙って競うように出資した結果、未公開企業の価格がつりあがった。成長力と豊富な資金を武器に大企業から人材を引き寄せ、成長につなげていた。
ところがユニコーン量産の仕組みは転機を迎えた。新興テックが集積する米シリコンバレーでは「(08年の)米金融危機以来の厳しい1年になる」(米GGVキャピタルのジェフ・リチャーズ氏)との声が出始めた。米有力VCのセコイア・キャピタルは5月下旬、投資先企業に対して経費削減を急ぐように勧告した。

引き金を引いたのはハイテク株安と新規株式公開(IPO)市場の停滞だ。ハイテク株の構成比率が高いナスダック総合株価指数は年初から約30%下落している。IPOも急減速し、米ディールロジックによると22年1~3月期に世界で前年同期比5割減となった。IPOの停滞は企業の資金調達の選択肢を狭めた。VCもIPOで投資を回収できなければ、新規投資に回しにくくなる。
ソフトバンクグループ(SBG)傘下のファンドや米ヘッジファンドのタイガー・グローバル・マネジメントが苦境に陥っている影響も大きい。両社は上場前の大型投資でユニコーンの量産を主導したが、SBGの孫正義会長兼社長は「投資基準を厳格化する」と明言する。ユニコーンは採用拡大などで高コスト体質になることが多い。大口投資家の方針転換で支出抑制が急務になった。

もっとも、すべてのユニコーンが資金繰りで苦境に陥っているわけではない。一部の企業は好況期に十分な資金を調達していたほか、年金や富裕層など長期投資家はVCに対し、新規案件への参加を約束しているからだ。米ピッチブックによると、米VCが新規投資に回せる資金は3月末時点で総額700億ドルで、金融危機前後の08~10年に比べて多い。有力企業であれば、資金を追加調達できる可能性は高い。
暗号資産取引システムを開発する米タロスはこのほど米銀シティグループなど複数の投資家から総額1億ドルを調達した。出資時の株価を基に計算した企業価値は12億ドルとなり、逆風下で新たにユニコーンの仲間入りを果たしている。投資家が将来を有望視する業界にはマネーが流れている。
01年のIT(情報技術)バブル崩壊で多くの新興テクノロジー企業は破綻や事業縮小の試練に直面した。その苦難を乗り切ったアマゾンは世界最大の電子商取引(EC)企業に成長している。当時、レイオフされた人材が起業したり、別の有力企業に移ったりした。22年のハイテク株バブル崩壊もユニコーンの選別を促し、次代をけん引するテクノロジー企業が生まれるきっかけになりうる。
(ニューヨーク=宮本岳則、シリコンバレー=奥平和行)

(日本経済新聞)

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