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新規「ユニコーン」5割減 22年、世界で258社 2023/01/31

世界のスタートアップの成長ピッチが鈍ってきた。2022年に新たに誕生したユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)は258社となり、活況だった21年比では5割減った。各国の利上げやロシアのウクライナ侵攻で世界景気の減速懸念が強まり、マネー流入が細っている。近年の追い風は向かい風に転じつつあり、経営の転換点を迎えている。

米調査会社CBインサイツのデータをまとめた。特に22年後半にかけて減速が強まっており、22年10〜12月の新規ユニコーンは19社と、前年同期(139社)に比べ86%減となった。

地域別では、最大の「産地」である米国が22年に52%減の152社だった。半導体の開発や設計に特化するファブレスメーカーのアステラ・ラボなどがユニコーンとなったが、全体としては低調だった。欧州は29%減の46社、アジアは63%減の45社だった。

世界のスタートアップの資金調達総額は35%減の4151億ドル(約54兆円)と3年ぶりに減少した。デロイトトーマツベンチャーサポートの木村将之最高執行責任者(COO)は「新規株式公開(IPO)がふるわず、投資家が資金を投じにくくなった」と分析する。

21年までは金融緩和を背景に、スタートアップに資金を出す投資家の裾野は広がっていた。ベンチャーキャピタル(VC)に加え、米タイガー・グローバル・マネジメントなどのヘッジファンドやソフトバンクグループ(SBG)のビジョン・ファンドも多くの資金を投じた。

22年に入り、米欧を中心とする金融引き締めで潮目は変わった。IPOに逆風が吹き、上場直前の「レイター期」にあたるスタートアップを中心に資金流入が細った。1回の調達額が1億ドルを超える「メガラウンド」は計1901億ドルと49%減少した。

資金調達では前回の調達時より企業価値が下がる「ダウンラウンド」が相次いでいる。プログラミングの脆弱な部分を探すサイバーセキュリティー事業を手掛ける米スニークは22年12月に約1億9600万ドルを調達。この際の企業価値は74億ドルとなり、前回の21年9月に比べ13%下がった。

これまでスタートアップは潤沢なマネーを生かし、売上高や顧客の拡大に挑んできた。だが、ユニコーンの中でも転換点を迎える企業が出てきている。

暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングは22年11月、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を申請して経営破綻した。会社資金を私的流用した疑いなども浮上している。

米フォード・モーターは22年10月、独フォルクスワーゲン(VW)と共同出資していた自動運転スタートアップ、米アルゴAIの清算を発表した。特定の条件下で自動運転する「レベル4」の実現などを目指したが、当面は目先の技術開発を優先することにした。

スタートアップは赤字覚悟で増収や技術開発に挑むだけでなく、黒字を確保できるかが重要になっている。拡大一辺倒だった戦略の見直しも相次ぐ。米情報サイト「Layoffs.fyi」によると、スタートアップを含むテック企業のレイオフ(一時解雇)は22年に15万人を超えた。

厳しい環境下でもマネーを呼び込む企業はある。新規ユニコーンを業種別でみるとフィンテックが60社超と最多。このうちの1社、米ペイスタンドはブロックチェーン(分散型台帳)を活用した決済プラットフォームに強みを持つ。同業の買収で成長期待が高まり、ユニコーンになった。

ほかにクラウド系などを含むIT(情報技術)や健康に関わる企業も多かった。医療機器メーカーや製薬企業向けの品質管理システムを手掛ける米マスターコントロールは1億5000万ドルを調達し、13億ドルの企業価値を付けた。

空想上の一角獣のように珍しい存在だったユニコーン企業。総数は世界で1000社を超え、投資家の選別は強まる。追い風に乗る軽やかさ以上に、向かい風を乗り越える力強さが問われ始めている。

(上原翔大)

(日本経済新聞)

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