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時価総額100億円未満390社 上場10年でも「小粒」7割 2024/01/20

「上場の目的は何か、どれだけ資金が必要なのかという議論がない。『後は野となれ山となれ』となってしまっている」。東京証券取引所がグロース市場や国内新規株式公開(IPO)の課題を聞き取り調査したところ、海外ベンチャーキャピタル(VC)からこんな指摘があった。市場関係者の辛辣な評価が浮き彫りになった。

2023年12月中旬に開かれた、東証の市場再編を検証するフォローアップ会議。主催した東証がグロース市場の活性化に向けた対応案の一つとして示したのが、「上場10年後に時価総額40億円以上」という上場維持基準の引き上げだ。経済産業省も提示した意見書で基準を引き上げるべきだと明記した。

「大賛成だ」(マネックスグループの松本大会長)。会議の参加者からは肯定的な意見が相次いだ。上場5年後など経過年数で区切った上で時価総額を引き上げる案が目立った。相当数の企業が上場廃止になることを警戒する声もあり、自己資本の水準や上場時の時価総額との比較などを複合的に導入する案も浮上している。

関係者が問題視するのが、成長企業向けの市場なのに「成長性のある銘柄を供給し続けることができていない」(いちよし証券の宇田川克己投資情報部課長)ことだ。07年のマザーズ上場以降で時価総額が20倍超になったジーエヌアイグループなど大きく成長した企業もあるが、全体で見れば停滞する企業が少なくない。

実際、グロース約560社の時価総額は23年末で7割程度(約390社)が100億円を下回った。そのうち上場後5~10年(約140社)、同10年以上(約90社)の企業群でもそれぞれ約7割が100億円を下回り、上場から時間がたっていても多くが小粒にとどまる。グロース全体で6兆6000億円とプライムの1%に満たず、ダイキン工業(約7兆円)1社に及ばない。

中小型株では「多くの運用者が意識する時価総額は100億円程度かそれ以上」(野村アセットマネジメントの田中啓章シニア・ポートフォリオマネージャー)という。グロース銘柄は中小型株とは言えずもはや「超小型株」だ。足元の市場低迷もあり、成長を後押しするような機関投資家の投資対象になりにくい。23年のグロース市場の売買高の約6割を個人投資家が占めている。

企業の成長意欲が低い背景の一つとして指摘されるのが、市場の新陳代謝の乏しさだ。過去10年、マザーズとグロースの上場企業数は年平均30社程度のペースで増えてきた。平均IPO件数は約60件あった一方、他市場へのくら替えが平均30件弱あった。目立つのが上場廃止数の少なさで、年平均で4社程度にとどまる。

単純比較はできないが、上場維持基準が厳しい米ナスダック市場では様相が異なる。国際取引所連合(WFE)によると、同市場の上場企業数(投資会社など除く)はIPOが活発化した新型コロナウイルス下の21年に3678社と前年比25%増えたが、23年は7%減の3432社と3年ぶりの低水準になった。

米IPO株に投資する三菱UFJアセットマネジメントの安井陽一郎チーフファンドマネジャーは「資本の最適化という当たり前のことが市場で起きているのが米国の特徴だ」と説明する。

グロース市場にも光明はある。創薬や宇宙、新素材などディープテック(先端技術)企業が上場しやすくなったことだ。多額の研究開発費や収益化の時期が不透明なことがネックだったが、東証は22年にこうした企業の上場を後押しする方針を公表。上場審査で事業モデルに詳しい機関投資家の意見を聴いたり、リスク情報開示を十分に企業に求めたりする取り組みを始めた。

23年4月には月面輸送サービスのispace(アイスペース)が宇宙関連の新興企業として初めて東証に上場を果たした。同年12月には小型衛星開発のQPS研究所も上場した。同社の市來敏光副社長は「当初は機関投資家から厳しい反応もあった。ただ説明の仕方を工夫するなどしたことで想像以上に需要が膨らんだ」と明かす。旺盛な需要に応えるため、上場直前に新株発行数を従来計画より6割積み増した。

野村アセットの田中氏はグロース市場について「現時点で小粒な企業でも、プライム市場にはないユニークさや競争力があり、成長への意欲が強ければ投資家はついてくる」と語る。東証が資本コスト経営を要請したプライム・スタンダード市場に続き、グロース市場でも企業の意識改革が進めば、日本株への強力な追い風になる。

(堤健太郎、和田大蔵、坂田耀)

(日経新聞)

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