金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Jeff Bezos, president and CEO of Amazon

  • pic

    Former CEO of General Electric, Jack Welch

企業経営最新情報

Latest information on corporate management

有事に揺るがぬ「連続力」 増配・増益・増収の安定銘柄 2022/03/20

「サービスの解約率が低く、しばらくは利用者数の増加傾向が続きそう」。個人投資家のペンギンさん(ハンドルネーム)がいま注目している銘柄が、グループウエアの開発・販売を手がけるネオジャパンだ。17日に発表した2022年1月期の連結決算は純利益が前の期比28%増の8億6600万円となった。「自治体や企業向けに安価で便利なクラウドサービスを提供していて、利用者数が右肩上がりで伸びている」(ペンギンさん)。同社は2015年の東証マザーズ上場以来、6期連続で「増収・営業増益・増配」となっている。

ロシアのウクライナ侵攻以降、株式市場は不安定な動きを続けている。日経平均株価は1日で1000円近い下落や、反対に大幅に上昇する乱高下相場を繰り返す。戦争が日本の企業や経済におよぼす影響は相場に織り込みきれていない。

世界的な金利上昇や原油高に起因するコスト増が日本企業の業績を下押しする懸念も日々強まるなか、それでも投資できる企業はどこか。その手がかりは過去に安定して業績を伸ばし、株主還元を増やしてきたという実績を積み重ねた「連続力」にある。

ストック型に強み
日経ヴェリタスが売上高・営業利益・配当の3つに注目して「連続力」を集計したところ、独自の商品力や店舗開発に強みを持つ小売り企業や、サービス利用料などで安定した収益を得るストック型ビジネスを手がける企業が浮かび上がってきた。

売掛債権の保証を手がけるイー・ギャランティもその一つ。毎月2万5千件を超える企業の審査で積み上げた大量のデータを強みとし、19期連続の営業増益、12期連続の増配を継続中だ。21年3月期の年間配当は22円と前の期(14円)から大きく増やした。期初に示した今期の配当予想は前期から横ばいの22円だが「純利益が計画を上回って着地すれば、今期も増配を検討する」(同社)としている。

埼玉県を地盤に食品スーパーを展開するベルクは、コスト管理力で同業他社を圧倒する。100店舗以上の売り場の構成を全て同じにする標準化や、自社物流の強化といった施策が奏功し、業界では1~2%台が珍しくない売上高営業利益率は4%台で推移、自己資本利益率(ROE)は12.1%(21年2月期)に達する。1992年2月期から30期連続増収、21年2月期まで8期連続増配を継続している。

配当貴族に安心感
米国では25年以上増配を続ける企業は「配当貴族」と呼ばれる。日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やスリーエムは60年以上にわたる連続増配で有名だ。日本では花王が株式分割を考慮した実質ベースで32期連続増配を続けているほか、20年を超える「貴族予備軍」も10社を数える。

振り返ってみれば、リーマン・ショックや東日本大震災、新型コロナ禍と、数年に一度の割合で株式市場は想定外の出来事に見舞われてきた。そうしたなかでも「連続力」を途切れさせなかった企業に共通するのは、利益や株主還元を重視するという姿勢だけでなく、すべての原資となるキャッシュを稼ぐ事業の競争力の強さだ。岡三アセットマネジメントで「日本連続増配成長株オープン」を運用する鈴木衡大朗シニアファンドマネージャーは「配当を重視できるほど財務面の健全性が高いことが、投資する上での安心感につながる」と指摘する。

3月末に配当の基準日を迎える22年3月期に上場企業が株主に支払う配当の総額は12兆円超となり、3年ぶりに過去最高を更新する見通しだ。ただ、4月の市場再編を控えて株式の流動性を高めようと、実力以上の配当を出している企業も少なくないため、注意が必要だ。

ウクライナを巡る危機には終わりが見えず、長引くほど企業への逆風は強まる。先行きを楽観視できない今こそ、波乱相場で一層輝きを増す「連続力」を備えた企業を探していこう。

長期で成長、還元の好循環

安定して業績を伸ばし続け、株主還元を増やし続ける「連続力」に優れた企業は――。「増配・営業増益・増収」の3部門を集計してランキングしたところ、1位となったのはニトリホールディングスだった。

日曜日の午後、東京・中央の複合施設「晴海トリトンスクエア」。1月に開店した「ニトリ デコホーム」は幅広い年代の客でにぎわっていた。デコホームはインテリア雑貨やキッチン用品を扱う小型店で、従来のニトリに比べてより小さい商圏向けの業態だ。出店ペースは直近1年で40店に迫り、その前年の10店程度から大幅に加速している。

郊外中心の家具店、というイメージはもはや過去のもの。昨年3月にホームセンターの島忠を完全子会社化したことも業容の拡大に貢献する。2021年2月期まで増収は36期連続、営業増益は34期連続に達する。

増配も17期連続で、22年2月期も前の期比17円増の年140円配を見込んでいる。M&A(合併・買収)や成長投資を続けながらも、手元現預金は月商の2カ月分を超える1828億円(昨年11月時点)と潤沢。さらなる株主還元の拡大にも期待できそうだ。

2位はディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス。1989年のドンキ1号店の出店以来増収・営業増益が続いている。日本製品を多く取り扱う海外向け業態「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」を東南アジアを中心に出店するなど、海外進出も進めている。

増配は18期連続を継続中。22年6月期も増配を見込むほか、新たに株主優待制度を導入した。100株以上保有する株主に年2回、グループで使える電子マネーのポイント2000円分を付与する。「個人株主比率が1%台と、リテールの会社としては非常に少ない」(清水敬太取締役)ため、優待新設で個人の安定株主を増やしたい考えだ。

3位は決済代行を手がけるGMOペイメントゲートウェイ。電子商取引(EC)市場やキャッシュレス需要の拡大をとらえて成長を続け、05年に東証マザーズに上場して以来、増収・営業増益を続けている。足元の時価総額は8000億円を超え、親会社のGMOインターネット(9449、約3100億円)の2倍以上になっている。

医療従事者向け情報サイトのエムスリーも04年のマザーズ上場以来、増収・営業増益を継続中だ。GMO-PGやエムスリーはPER(株価収益率)の高いグロース株として知られる。一般にグロース株は株主還元より成長投資を優先するとされるが、両社は利益成長に伴って株主還元も強化し、最近では増配基調が定着しつつある。

このほか、上位にはベルク(9974)やヤオコー、コスモス薬品といった店舗の競争力が強い小売りや、オービック、KDDIといったストック型のビジネスで安定収入を得る企業が名を連ねた。

「連続力」の総合上位には既に株価が大きく上昇し、いわゆる「テンバガー」(10倍株)となった銘柄が少なくない。その一方で、それらに続く企業のなかには時価総額がそれほど大きくない中小型銘柄も見受けられる。

例えば頭髪用化粧品製造のコタは美容院向けのコンサルタントに注力しており、21年3月期まで23期連続の増収を継続中だ。ここ10年ほど、期初に1株を1.1株に分割する株式分割を行っており、実質的に増配を続けている。

企業向けの適性検査テストを販売する日本エス・エイチ・エルは21年9月期まで12期連続の増収増益だ。コロナ禍で新卒採用向けなどにウェブテストの需要が増えたことも業績に寄与したという。

これらの企業は内需中心で、世界景気の変動を比較的受けにくい点も特徴だ。ただ、東日本大震災では電力、新型コロナ禍では鉄道と、それまで「ディフェンシブ銘柄」とされた業種が収益の根底を覆されるという事態もあった。株式に投資する以上は、業績悪化や減配、無配転落といったリスクがまったくないわけではないことには注意しておきたい。

斎藤正弘、井川遼が担当した。グラフィックスは安藤智彰。

[日経ヴェリタス2022年3月20日号より抜粋]

(日本経済新聞)

menu