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東南アジア「次のグラブ」候補台頭 21年はユニコーン倍増 モバイル決済・EC強み ハイテク株安で逆風も 2022/02/07

【クアラルンプール=中野貴司】東南アジアのスタートアップへの資金流入が目立つ。2021年は25社のユニコーン(企業価値が10億ドル=1150億円=以上の未上場企業)が生まれ、総数は20年から倍増した。モバイル決済や電子商取引(EC)の分野で、地域を代表する新興企業だった配車大手のグラブなどに続く次世代の企業が台頭している。ただ今後は世界的な株安で投資家心理が悪化する懸念もある。

「既にベトナムでは地方までスマートフォンが浸透しているが、今後10年間でモバイル革命はさらに進む」。ベトナムのスマホ決済最大手、Mサービスのグエン・マン・トゥオン副会長兼共同最高経営責任者(CEO)は自国市場の伸びしろの大きさを強調する。

同社の決済ブランド「モモ」は国内で3千万人を超える利用者を持ち、市場シェアは5割を超える。21年1月の1億ドル超の調達に続き、同年12月にも、みずほ銀行などから2億ドルの資金を集めた。2度の資金調達で、数少ないベトナム企業のユニコーンになった。

21年に2度資金調達し、ユニコーン入りしたのはフィリピンの電子決済大手ミントも同じだ。11月の2度目の資金調達には米ウォーバーグ・ピンカスなど世界の投資家が参加した。ミントのアーネスト・クー会長は「世界の投資家の目をさらにフィリピンに向けさせた」と胸を張った。

日本経済新聞社と提携するシンガポールの新興メディア、ディールストリートアジアによると、21年の東南アジアの新興企業の資金調達額は257億ドル(約2兆9500億円)と、20年の2.7倍だった。ユニコーン入りしたのは合計25社だ。

13~20年のユニコーンの総数はシンガポールのネット通販シーやグラブなど21社にとどまっていた。ユニコーンの数は21年の1年間で一気に倍増して46社となった。調査会社や調査手法の違いで単純比較はできないが、6社程度とされる日本とは勢いの差がある。

業種の多様化も目立つ。21年の調達件数968件のうち、301件と3割を占めたのはモバイル決済などフィンテックで、ECが114件で続いた。このほか、教育関連の「エドテック」と医療関連の「ヘルステック」はそれぞれ約50件、ゲーム関連が約40件と、各業種の担い手の厚みが増している。

子供向けのオンライン中国語教育を手がけるシンガポールのリンゴエースは21年に1億6000万ドルを調達した。ヒュー・ヤオCEOは「調達した資金で英語の教育プログラムを開発し、既存の3カ国に加えて22年中にマレーシアにも進出する」と話す。今後のユニコーン候補の1社だ。

これまで東南アジアのスタートアップの資金調達は、シンガポールのグラブとインドネシアのゴジェックの配車大手2社に集中していた。20年は調達総額94億ドルの3割弱がこの2社に流入した。

風向きが変わったのは21年前半だ。グラブが21年4月に米ナスダック市場への上場を打ち出し、同年5月にゴジェックもネット通販大手のトコペディアとの経営統合と、統合会社の上場計画を発表した。2社が公開市場に資金調達の軸足を移しつつある中で、投資家の「次のグラブ、ゴジェック候補」を探す動きが加速し、シンガポールとインドネシア以外からもユニコーンが生まれる素地を作った。

例えば、タイ初のユニコーンとして知られるフラッシュ・エクスプレスは依頼者の自宅や事務所まで無料で出向いて荷物を受け取る「ドアからドアへ」のサービスが特徴だ。21年に1億5千万ドルを調達し、隣国のラオスに進出するなど海外での事業拡大を目指す。

中国政府による企業規制の強化で、海外の投資家が中国のスタートアップ投資に及び腰になっていることも追い風となっている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドはシンガポールの特許データ分析企業、パットスナップなどに相次ぎ出資した。中国アリババ集団がシンガポールの物流企業ニンジャバンに出資したのをはじめ、中国の大手企業が東南アジアのスタートアップに資金を投じる事例も目立っている。

22年に入っても、資金調達の勢いは衰えていない。マレーシアのネット中古車売買大手、カーサムは1月10日、シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングス系のファンドなどから、2億9千万ドルを調達すると発表した。前回の2億ドルの資金調達から4カ月しかたっていない。

シンガポールのベンチャーキャピタル(VC)、インシグニア・ベンチャーズ・パートナーズのインラン・タン氏は「海外のファンドが東南アジアへの関心を強めている現状を踏まえれば、22年もゴールドラッシュは続く」と強気だ。

ただ、足元では世界の株式市場がハイテク銘柄を中心に弱含んでいる。21年12月に上場したグラブの株価が初値の半値以下に低迷するなど、東南アジアの上場テック企業の評価も下がっている。今後、投資家が未上場のスタートアップを評価する際に、同業種の上場企業と比較して企業価値の評価を切り下げ、出資額を絞る可能性がある。

VCの投資を支えるのは上場後の多額の売却益への期待だ。株式市場の先行きに対する厳しい見方が増えれば、投資家もスタートアップを従来以上に厳しく選別するようになる公算が大きい。

(日本経済新聞)

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