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東芝やGEが会社分割 脱炭素、産業の大転換促す 2021/11/13

東芝が12日正式発表した会社の3分割。戦略委員会での議論を経て、証券会社から最終案が持ち込まれたのは今から約2週間前だったという。(1面参照)

不祥事で虎の子事業をいくつも手放し、「上場廃止以外打つ手なし」と見られた局面もあった。だが、発表したスキームを見ると、「非公開化」でも会社消滅のニュアンスが漂う「東芝解体」ということでもない。コングロマリット・ディスカウントを解きほぐす積極的な「東芝分割」とみていいだろう。

株式市場で評判の悪いコングロマリット(複合企業)という形態には「良い」と「悪い」があると言われて久しかった。良い事例は米スリーエムなど、悪い事例は日本の総合電機だ。

特徴は各部門が人材や情報をたこつぼ的に抱え込み、「事業部あって会社なし」に近い状態であったことだ。東芝が典型だが、品質や検査不正、パワハラ問題が相次ぎ発覚した三菱電機などでも状況は似ていたことが露呈した。

そういう意味では、硬直的で閉塞感の漂う日本の総合電機経営のあり方に、東芝分割は一つの突破口を示す可能性がある。ガバナンス(企業統治)改革や経営陣選びなど、問題がなお山積みにされていてもだ。

一方で、これだけ大規模な経営の転換をする背景には、世界情勢の急激な変化もあったはずだ。脱炭素だ。

米国では時を同じくしてゼネラル・エレクトリック(GE)が会社3分割を発表した。同社もリーマン・ショック以降、リストラや経営者の交代が続いたが、ここにきて129年続いた伝統の形を壊さざるを得ないのはイノベーションも新しい価値観も生めなくなったせいだ。同社の創業者トーマス・エジソンは「世界が今必要としているものを発明するのみ」と語ったが、脱炭素に根ざした21世紀型経営は今のままでは不可能だったということである。

コングロマリットと同様、会社分割にも「良い」「悪い」があると言われる。少なくとも良い面は、業界再編を進めやすくする点だろう。GEは今まで「巨大企業すぎて他社と経営統合ができない」と考えられてきた。今後は一変し、発電機、航空機エンジン、医療機器と分野ごとに、他社とのM&A(合併・買収)で競争力や効率性の高い規模、形を追求しやすくなる。

東芝も同じだ。コングロマリットの弊害は社会のニーズに応えられない低収益の伝統事業に引っ張られて株価が低迷し、全体として成長投資が抑え込まれてしまうことだった。分割して独立企業にすれば、それぞれの時間軸と価値で投資が増やせ、イノベーションも生まれやすくなる。

先行事例は米化学大手のダウ・デュポンだろう。株主の要請で2019年に会社を3分割した。低成長の「特殊産業材」を手掛ける新会社の時価総額は減少したが、「農業」「素材」の2社はそれぞれ42%、13%高めた。潜在成長力のある事業が低収益ビジネスに縛られるリスクを除いた。

こうした手法は世界の潮流になるかもしれない。経営改革に乗り遅れた東芝は意外にも「分割→再編」という潮流の先頭に立つ可能性もある。

英グラスゴーで開催中の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)のさなかに東芝、GEの動きが重なったのは偶然ではないかもしれない。COP26では石炭火力の段階的廃止に50カ国近くが賛同した(日米中は未同意)。

追い込まれた東芝、GEだけではなく、世界的な脱炭素のうねりを見据えた経営の形が企業価値を決定する時代になりつつある。日本で言えば、総合電機、重工、石油化学、総合商社、自動車と20世紀から形をそのまま引き継いだ企業は必ずしも安泰ではない。

「クライメートチェンジ(気候変動)ではなくシステムチェンジを」。グラスゴーでは若者のデモ参加者がそんなプラカードを掲げたが、巨大企業も時代の要請を常に先取りしなければ、彼らの時代は淘汰を避けられない。まさに脱炭素時代の「グレート・リセット(大再起動)」が始まっているのだ。

(本社コメンテーター 中山淳史)

(日本経済新聞)

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