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東芝再編、空転の1年 分割主導の社外取、特別委に 非公開化検討に影響も 2022/04/09

東芝は株式非公開化を含む戦略的選択肢の検討に向け特別委員会を設置した
東芝が株式の非公開化などを検討する特別委員会を新設することを決めた。グループ全体を2分割する再編案は中断する。最初の非公開化提案から1年たち、再編は振り出しに戻る。特別委は分割案を主導した戦略委員会とほとんど顔ぶれが変わらない。「失われた1年」を取り戻せるかは未知数だ。

東芝は7日夜、特別委の設置に伴い、同日付で戦略委員会を解散したと発表した。戦略委は東芝独自の企業統治(コーポレートガバナンス)の仕組みで、2021年6月の定時株主総会後に発足した。委員長は会計事務所出身のポール・ブロフ氏だった。

東芝が戦略委の設置を公表したのは定時総会前の同年5月だ。永山治氏(中外製薬名誉会長)が議長を務める取締役会で設置が決議された。だが永山氏は同年6月定時総会で再任案が否決される。約2週間前、20年7月の定時株主総会について「公正に運営されたとはいえない」とする調査報告書が公表され、株主の反発を招いていた。

定時総会後、戦略委5人のうち4人を東芝がアクティビスト(もの言う株主)との協議を経て受け入れた社外取締役が占めることとなり、活動範囲を拡大する。従来は「事業戦略についての執行部からの提案の検証や、取締役会に対する推奨」だったのが、「将来に向けた事業計画を策定する」こととなった。

戦略委主導の下で策定されたのが、分割再編案だった。21年11月の初案公表時は発電機器などの「インフラサービス」事業と、半導体を扱う「デバイス」事業を分離・独立させ、東芝本体には半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスの保有株式管理などを残す3分割計画だった。22年2月にはデバイスのみを分離・独立させる2分割計画に修正。3月24日の臨時株主総会で過半の賛成を得て進める計画だったが、反対多数で否決された。

もう一つ、株主の反発を招いた出来事がある。東芝ではこの臨時株主総会を前に社長が交代した。前社長兼最高経営責任者(CEO)の綱川智氏と前副社長の畠沢守氏が退任し、後任に島田太郎氏と柳瀬悟郎氏が就いた。筆頭株主でシンガポールの投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントは「分割が将来の東芝に及ぼす影響について責任を負うべき人物が執行役を退任してしまった」などとして、経営体制を批判した。

この社長交代を主導したのが指名委員会で、指名委委員長は投資ファンド出身のレイモンド・ゼイジ氏が務める。ゼイジ氏はまたこの臨時総会を前に、もう一つ出された株主提案に対して賛成を表明していた。東芝が会社として反対を表明している議案で、方針決定に関わった取締役として逆の意思を示す異例の事態となっていた。当時、大株主が相次いで株主提案への賛成を表明しており、歩調を合わせた形だ。

特別委にはブロフ氏もゼイジ氏も加わる。2人を含む戦略委計5人が全員メンバーだ。もう一人加わる元名古屋高裁長官の綿引万里子氏も指名委の一人で、株主の反発を招いた社長交代を主導した一人でもある。

3月の臨時株主総会では株主が「経営の混乱は社外取締役が特定の株主の利益のために動いているからだ。会社の持続的成長を考える取締役を選任すべきだ」などと糾弾する場面もあった。ある株主の関係者は「ゼイジ氏がなぜこんなに保身に走っているのか理解できない」と話していた。

現在の取締役会は全8人で、うち6人が社外取締役だ。残る2人は綱川、畠沢両氏で、執行役は不在となっている。社外取締役が事業計画の策定まで担う異形の企業統治体制への不信感は根強かった。

7日の発表で、東芝は投資家との協議は執行役主導で行うものとした。特別委は事前に執行部から方針を確認した上で、報告を受けて意見を述べ交渉に関与するという。戦略委の5人は再び特別委の構成委員となった。

東芝が採る「指名委員会等設置会社」は企業経営における職務執行と監督との機能を分け、取締役が執行を監督する形態を取る。どのような「関与」をしていくか、特別委委員長を務めるイオン顧問ジェリー・ブラック氏の対応が問われる。

(矢尾隆行、広井洋一郎)

(日本経済新聞)

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