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東証社長「上場廃止株の売買市場検討」 基準厳格化受け 2022/01/11

東京証券取引所は11日、新市場区分に上場する企業の一覧を公表した。再編の目的は持続的な企業価値の向上を促す市場作りだが、東証はまだ第一歩と位置づける。今後の施策について、山道裕己社長に聞いたところ「上場廃止となった株の売買市場の検討を始める」と明らかにした。主なやりとりは以下の通り。

――東証1部の多くがプライムに横滑りする形になりました。

「東証1部は全上場企業の約6割あったが、プライムは5割を切るところまで減った。2021年7月時点でプライムの基準に満たないとの判定が出た600社強のうち半数近くはスタンダードを選んだ。自社の事業内容や将来像と向き合った結果であり、一定の手応えを感じている」

「新市場は4月4日に始まるのだし、改革の進度としては、登山口に到達して今から歩こうかという段階。マーケットの状況や投資家のニーズは変わっていく。変化をくみ取りながら、本当に実効性のあるものになるかを見極めていく」

――経過措置の期限がないなど踏み込み不足との指摘があります。

「各社の計画書をこれから精査し、有識者に議論してもらった上で期限を決める。企業ごとに計画の期間がまちまちなのは把握しているが、各社で事業環境は異なるので一概に長いからいけないとは言えない。ただ、進捗はしっかりチェックする。投資家は計画書を投資判断の材料にしており、実績とあまりに乖離(かいり)があったら説明や計画見直しを求める」

「今回の再編は上場企業数を絞り込むことに主眼を置いていない。各市場のコンセプトが曖昧だった点を正したり、ガバナンスを含めた持続的な企業価値の向上にインセンティブを与えたりすることが目的だ」

――上場基準と廃止基準を統一しました。

「廃止基準が上場基準に比べ甘かった仕組みを改めた。海外の主要市場と比べてもかなり厳しくした。プライムの基準である流通時価総額100億円をわずかに上回っているだけでは上場後にすぐに廃止のリスクと向かい合うことになる。基準は今後見直すことがあったとしても、基準自体を変えるというよりも、企業の成長意欲をかき立てることに軸を置いた方がいいのではと思っている」

――スタンダード市場をどう位置づけますか。

「世界をリードしていく企業群がプライムだとすれば、スタンダードは日本の中核をなす企業群。地域経済を活性化や、国内の雇用環境を向上させるといった点で、日本の経済をリードする役割を期待している」

「スタンダードも上場基準と廃止基準が同じだ。基準に抵触した際、プライムの企業はスタンダードに上場し直すという選択肢があるが、スタンダードからグロースに移るのは難しいだろう。グロースはあくまで高い成長を有した若い企業のための市場なので、コンセプトに合わない。ぎりぎりでスタンダードに上場した企業へのプレッシャーは大きい」

「流通時価総額が未達になった場合、1年以内に回復できなければ上場廃止になってしまう。こうした事例は相応に出てくるとみており、廃止になった銘柄を持っていた投資家は売買の機会を失い、損失を被る可能性も出てくる。廃止後も一定の取引が成立するよう、廃止銘柄を集めた『受け皿市場』の整備の検討も始める」

――東証株価指数(TOPIX)の改革も進めます。

「株価指数に必要な要件は、市場の動きを代表しているか、投資対象としての機能性があるかどうかの2点だ。現行のTOPIXは東証1部上場の約2200社を含み代表性は問題ない。ただ、個別株としては投資対象になりづらい小規模な銘柄も含んでいて、機能性の課題が大きい」

「500銘柄に絞っている米国のS&P500種株価指数より機能性が劣っているのは否めない。そこで、流通株式の時価総額が100億円未満の銘柄については10月から10四半期に分けて段階的に構成比率を落とすこととした」

――大胆に銘柄数を絞る必要はありませんか。

「見直しが終了した段階でも1500~1600銘柄が残る見通しで、これでは不十分という声があることは理解している。ただ、例えば500銘柄程度まで絞るのは現実的ではない。投資家にヒアリングした結果、指数の連続性を求める声が大きいからだ」

「上位500銘柄に絞った『TOPIX500』という指数は現在も用意している。機能性を重視するのなら、これを主要指数として打ち出していくこともあり得るが、TOPIX連動の投資信託や上場投資信託(ETF)の残高が70兆円近くという巨額にのぼっている。双方の指数の利用度には開きがあまりに大きく、投資家が受け入れてくれるかという話になる」

――今回の市場再編には、日本の資本市場の活性化という大きな命題もあります。企業の成長を支えるリスクマネーを広げる上での課題は。

「リスクマネーには大きく2つの役割がある。1つは大企業が有事の際に、資本市場が資金を提供する。新型コロナウイルス禍で打撃を受けた飲食・宿泊関連の企業が増資に踏み切っており、一定程度は有効に働いている。問題は日本では新興企業の成長の原資となるマネーが薄いことだ」

「世界をみても米国だけがやや特殊で、ヘッジファンドや機関投資家など分厚い層が成長資金の出し手になっている。裏を返すと、米国以外の先進国は皆、てこ入れに苦慮している。成長性のある企業が育ち、事業拡大に必要な企業を買収し、新陳代謝を促す好循環をどう生むかは、共通の課題だ」

「日本の資本市場は変わりつつある。少額投資非課税制度(NISA)の残高は21年6月末で約24兆円にまで育ち、個人資産が貯蓄から投資に向かう動きはようやく本格化しつつある。企業でも、MBO(経営陣が参加する買収)や、複数企業間での買収合戦、大胆な事業売却は増えている。こうした変化に対応するための市場作りが重要で、取引所だけでなく、投資家や企業など幅広い関係者が連携する必要性は高まっている」

(聞き手は上田志晃、森国司)

(日本経済新聞)

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