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柳井正氏「失敗で磨け、無二の価値」ファーストリテイリング会長兼社長 2023/08/20

ファーストリテイリングは2023年8月期に営業最高益を見込む。今後10年で売上高10兆円のアパレル世界首位となる目標を掲げるが、実現は容易ではない。柳井正会長兼社長に社員の年収大幅引き上げなど、世界で戦う成長のビジョンと日本企業の課題を聞いた。産業界が注目する自身の後継についても本音に迫った。

 商品の企画から製造販売まで一貫して手掛け、売上高で衣料世界3位となった。「ユニクロ」の海外店舗数は5月末で国内の倍の1633店だ。営業利益も日本を超え海外は今や稼ぎ頭だが、米欧では当初、事前調査不足で赤字がかさんだ。進出と撤退の繰り返しだった。
「今でこそ海外で成功しているが、進出後20年ほどは失敗の連続だった。ロンドンに数十店も大量出店して、最初は大成功すると思ったら結果は大失敗だった。北京や上海などで商品が全く売れない時期があった。米国もそうだ。現地の事情を把握せず出店したのが理由だ」

――失敗から何をどう変えていったのか。

「現地のニーズや商習慣をよく知っているのはその国の人。だからこそ世界の人材と日本人でチームをつくり、それぞれの国や地域で最適な運営体制をつくることが大事だ。そのために日本の繊維を製造する技術を中国など海外に持って行き、協力工場など現地の企業家や個人と共同で事業を拡大してきた」

「失敗を繰り返し、社員の実際の行動が今の時代に合うように変わらなければダメだ。ファストリも数々の失敗を経て各地の特徴を学び、少しずつ成長の芽が出てきた」

――売上高10兆円に向け何が課題か。

「機能性の高い衣料など世界で通用する品をつくることだ。自分の店の商品がロンドン、ニューヨーク、パリの目抜き通りにあっても売れるかどうかだと今、世界中で言っている。売れる商品構成とサービスを考えなくてはならない」

「売れるものは本来、世界中で売れる。それを日本のローカルの基準だけでとらえて『この程度でいい』と思って満足して経営していると小売業は失敗する」

――世界で広げる際に譲れないことは何か。

「海外に出る時には3つの問いがある。1つ目は『あなたは何者で他の企業やブランドとどこが違うのか』。2番目は『世界中でどんな良いことをしているのか』。最後は『その国でどんな良いことをしてくれるのか』という問いだ。(機能性の高い衣料など)価格と価値のバランスをとることを一番大事にしている。どの国も他にはない、いい企業に来てもらいたい。この3つに答えないと新しい地域や国には出られない」

――米中対立やウクライナ危機などリスクが高まった。中国などで製造した製品を世界で売る供給体制は維持できるか。

「ロシアはいったん事業を休止した。商品が入ってこなくなったためだ。今後についてはビジネス機会が巡ってきたら、その時にまた考える」

「それでも海外事業を育てなければならない。日本企業は成長する市場に挑む『本気さ』が足りない。もっと危機感を持って世界に出て行かないと『ゆでガエル』になってしまう」

――ファストリは低価格の「フリース」などがデフレ下で支持された。物価高の局面で成長できるのか。

「消費者の目は年々厳しくなっている。安ければ安いほど売れるというわけではない。反対に質が良ければ、値段は関係なく売れるということもない。機能性を高めて価値ある商品に仕上がったのなら、その分価格を上げる必要がある。『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』がモットーだ。当社も大企業病に陥っている。変わらないと生き残れない」

「人材鎖国」解き世界へ

 日本の平均賃金は主要7カ国で最低だ。ファストリは国内の年収を最大4割上げて話題となった。キャリア採用では年俸最大10億円を掲げ国際人材の獲得に乗り出している。
「日本企業の報酬は安すぎる。特に若い人が安い。年収を引き上げたことで幹部候補となる若者を採れる。人材が厚くなればグローバルで幹部候補の人を行き来もさせられる。世界に出て行かないと、実力は高まらず成長もできない」

――年俸数億円の特別枠で供給網やデジタル化、デザイン、広告などに精通した人を採ろうとしている。世界で人材は獲得できているのか。

「(本社所属の専門職で)年収数億円の人は複数いる。GAFAからも採りたいと思っていたが必ずしもいい人材ではないことを勉強した。米国流がグローバル流ではない。プレゼンテーションは上手だが仕事はできない人がいる」

「グローバルで優秀な人材といえばみんな欧米を思い浮かべるが、アジアにも優秀な人材はいくらでもいる。ベトナムをはじめ東南アジア、インド、中国の人たちはすごく優秀だ」

――グループ上席執行役員の潘寧氏は日本の大卒入社で中華圏事業の基盤を作った。だがこうした例は一部にとどまる。

「採るだけではなく、海外の現地人材を5年や10年かけて1人ずつ『テーラーメード』で会社経営を担える人材にしていく。パキスタンやバングラデシュなどの大卒や院修了でユニクロで販売員をやり、店長を務めた後に本部の要職に就いている人がいる。香港出身で経験を積み、現在はオランダやベルギーで最高執行責任者(COO)になっている人もいる」

「外資の経営幹部は日本をとばしてシンガポールや上海などに行く。日本は人材鎖国の状態だ。移民を受け入れやすくする必要がある。『開国』しない限り昔の繁栄を取り戻すことはない」

後継も創業家、夢がない

 柳井氏は02年、玉塚元一現ロッテホールディングス社長に社長の座を譲ったが、05年に会長兼務で社長に復帰。74歳の今も経営の第一線に立つ。後継者選びは最重要課題だ。
――かつて70歳での社長退任を公言していた。後継者の条件は。

「『もうすぐ、もうすぐ』と言いながら、もう10年以上がたってしまった。次も創業家の人が最高経営責任者(CEO)になったら社員は夢がなくなるでしょう」

「日本でははっきりと物を言わずに『あうんの呼吸』で物事を進めたり終わらせたりしてしまう。これではリーダーも会社も育たない。ファストリは個別具体的な目標を定めて達成できる強いリーダーシップを取れる人を求める」

「知的好奇心があって会社をよくしようと思ってくれる人、自分の職責だけでなく全体最適で考えて仕事を実行できる人がいい。会社の考えに共鳴してくれることも必要だ。ただ、外部から人材を引っ張ってきても、会社の文化と合わなかったら力を発揮することはできない」

――中古車販売大手のビッグモーター(東京・港)問題では創業家と企業の関係が改めて問われている。

「経営者やオーナーが正しい考え方を持たないといけない。金のために何でもするのなら事業をやる値打ちはない」

「次期経営体制の中で創業家の柳井家には、株主の代表として、ガバナンス(企業統治)をやってほしい。大株主として株主の権利を主張してもらいたい」

 やない・ただし 1949年生まれ。71年早大政経卒。ジャスコ(現イオン)を経て父経営の小郡商事(現ファーストリテイリング)に入社。84年に「ユニクロ」開業。製造販売を一貫管理する「SPA(製造小売り)」を確立し、27カ国・地域に展開するアパレル世界大手に育てた。

(日本経済新聞)

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