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核融合発電で日本連合 三菱商事など16社、新興に出資 2023/05/16

京都フュージョニアリングが開発するプラズマ加熱装置「ジャイロトロン」

次世代エネルギー技術である核融合発電で官民が日本連合を形成する。三菱商事や関西電力、政府系ファンドなど16社が京都大学発スタートアップに計約100億円出資する。関連設備や技術者など経営資源を充実させ技術開発力を高める。燃料は海水から採取できるため無尽蔵に近く、脱炭素の切り札として期待されている。海外勢が開発で先行するなか、オールジャパン体制で世界との競争に挑む。

出資先は京都フュージョニアリング(東京・千代田)。京大の研究者らが2019年に設立し、核融合の関連技術を持つスタートアップでは国内で最も実績がある。

三菱UFJ銀行や三井物産、Jパワー、INPEXのほか、政府系ファンドのJICベンチャー・グロース・インベストメンツなど16社が第三者割当増資を引き受けた。新規出資分は合計で20%程度になるとみられる。

京都フュージョニアリングは「ジャイロトロン」と呼ばれるプラズマ加熱装置で高い技術力を持つ。核融合反応を促す中核装置で、開発では世界でも先行する。技術力への期待から英国原子力公社から装置を受注した。

調達した資金を活用し、核融合炉を安定的に稼働できる技術の確立を目指す。24年にも国内に核融合発電の小規模な実験プラントを設け、ジャイロトロンなどの装置が安定して動くかどうかや熱の取り出しなどを実証する。技術者らの採用も拡大し、現在の約3倍の200〜300人規模に増やす。

20年代後半から世界で実験炉の建設が本格化する見通し。設備需要の拡大が見込まれるため、追加の資金調達も検討していく。三菱商事なども出資を通じ、核融合のノウハウを蓄積する。早期の実用化を後押しし、次世代エネルギーで主導権を得たい考えだ。

核融合発電は原子核同士を融合させてエネルギーを取り出す仕組み。化石燃料を燃やさず二酸化炭素(CO2)が発生しない。燃料となる重水素は海水に含まれ、水素と異なり、中性子を1つ持つ。海水を電気分解するなどして取り出す。地球の表面の7割を占める海から大量に採取できる。

30年代の商用化に向け、技術開発が進展してきている。米エネルギー省は22年12月に、実験で核融合を起こすために投入した分を上回るエネルギーを取り出せたと発表した。

企業側も後押しに動き出した。米マイクロソフトは核融合発電の米スタートアップのヘリオン・エナジーと28年からの電力購入契約を結んだ。核融合の売電契約が交わされるのは世界で初めてとされる。企業の支援が加速すれば、実用化が前倒しになる可能性もある。

日本は国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」に参画するなど、1990年代から国主導でプロジェクトを進めてきた。世界でもトップレベルの技術を持ち、「材料開発では欧州とともに先行している」(慶応大学の岡野邦彦訪問教授)。

日本政府も4月には核融合発電の実用化に向けた初の国家戦略を策定し、産業化の推進や専門人材の育成を急ぐ方針を打ち出した。

ただ、国主導から民間主体に移り始め、巨額資金を調達するなど競争が激しくなってきている。米核融合産業協会が22年7月にまとめた報告書では、世界の核融合関連の企業は30社以上存在し、資金調達額は計48億ドル(約6500億円)以上に上る。

米マサチューセッツ工科大学発のコモンウェルス・フュージョン・システムズは累計20億ドル以上を調達した。英トカマク・エナジーは核融合反応の効率を高める技術などで特許申請数を伸ばし、数で他社を圧倒する。

核融合発電は巨大な市場規模が見込まれ、産業の裾野も広い。実用化になお時間がかかる。日本も世界での開発競争に乗り遅れないためには、オールジャパンでの支援が重要となる。

核融合発電
水素のような軽い原子核同士が融合し、ヘリウムなどの重い原子核に変わる反応で、少ない燃料から膨大なエネルギーを生み出す。理論上は1グラムの燃料からタンクローリー1台分にあたる約8トンの石油と同じ熱量を得られるとされる。現在の原子力発電所で起こしている核分裂反応の4倍にのぼるとされる。

太陽も核融合反応で膨大な熱を放出するため、核融合炉は「地上の太陽」と呼ばれる。核融合燃料やその原料は海水に含まれるため、資源供給の不安も少ない。燃料供給を止めれば反応がすぐに収まるため、従来の原発よりも安全性が高いとされる。

核融合反応で得た熱で水から蒸気を作り、タービンを回転させるなどすれば発電できる。核融合発電は石油や天然ガスを燃やす火力発電と異なり二酸化炭素(CO2)を排出しないため、脱炭素の切り札にもなる。国際協力では日本や米欧、中国やインドはITERの建設をフランスで進めており、2035年に核融合反応を起こして熱を発生させる運転を始める計画だ。

(日本経済新聞)

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