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楽観覆う世界株高 2023年時価総額、ピークの9割に回復 2023/12/29

2023年は米欧同時利下げの足音がマネーを動かした。世界の株式時価総額は米国をけん引役に21年11月につけたピーク(120兆ドル)の9割水準まで回復した。市場は想定外に強かった米経済とインフレ減速を受けて、24年に緩やかな景気拡大が続くゴルディロックス(適温)経済の実現を見込む。期待先行の楽観相場にリスクの芽は潜んでいる。

東京株式市場は29日、今年最後の取引を終えた。日経平均株価は終値で3万3464円となり、33年ぶり高値圏で推移する。23年の上昇率は3割近い。ダウ工業株30種平均やドイツの株価指数DAX、インドの株価指数SENSEXは最高値圏にある。

QUICK・ファクトセットによると世界株の合計時価総額は28日、前年末比1割増の108兆3512億ドル(約1京5300兆円)となった。年末ベースでは2年ぶりの増加だ。急速利上げで歴史的な下落相場となった22年から一転、世界の投資マネーは株式を中心としたリスク資産に戻ってきた。

市場全体を見渡すと、直近2カ月であらゆる金融資産に資金が流れ込んでいる。不動産投資信託(REIT)は11月以降に2割上昇し、昨年末比でみてリターンはプラス圏に浮上した。新興国株も10月末比で9%高と急反発した。安全資産とされる国債や金(ゴールド)も買われた。

米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は5%を超えており、依然として景気を冷やす「金融引き締め」の水準にある。それでも市場が金融緩和時のような「ほぼ全部買い」の反応を見せたのは、24年に向けて低インフレと緩やかな景気拡大が両立するゴルディロックスシナリオを視野に入れたからだ。

23年初め、企業経営者の9割が米景気後退入り予想していた。高金利の影響で消費や雇用が悪化するとの見立てだった。インフレ率も5%を超え、追加利上げの懸念もあった。投資家はリスクをとることに慎重となり、待機資金の規模を映すMMF(マネー・マーケット・ファンド)の残高は過去最大水準に膨らんだ。

ところが米消費は予想外の強さをみせ、米経済は年内の景気後退入りを免れた。FRBのパウエル議長が12月の記者会見で「利下げ」に言及し、22年から続いた利上げ局面が事実上終結した。インフレの沈静化で金融政策を引き締め状態から、景気を熱しも冷やしもしない「中立」に戻す余地が生まれた。

利下げ観測は欧州を含む世界に広がる。米バンク・オブ・アメリカは24年、世界の中央銀行が年間で152回の利下げに踏み切ると予想する。利下げの回数が利上げを上回るのは20年以来、4年ぶりとなる。

「『利上げの恐怖』からの解放がマネーを動かした」。オールニッポン・アセットマネジメントの運用者、石見直樹氏はこう振り返る。23年、米テック株は好景気と利下げ期待でマネーが集中し、割高になった。多くの投資家が相対的に割安な資産に資金を振り向けようとした結果「何でも買い状態になった」とみる。

市中にあふれるマネーの量を映し出す日米欧3中銀の総資産は計20兆ドルを超す。22年初めのピークを17%ほど下回るが、新型コロナウイルス危機対応で急激に資産を拡大させる前の19年末比ではなお4割ほど多い。

野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは「依然として世界的に資金が余っている状態」と指摘する。利下げ見通しが高まったことで「より高いリターンを求めて株式などのリスク性資産にマネーが向かっている」とみる。

市場の焦点は24年、期待通りにゴルディロックスが実現するかどうかに移る。最大のリスクは米景気の失速だ。米消費を支えた過剰貯蓄は枯渇が近づいている。企業の借り入れコストも数十年来の高水準になっている。

英HSBCアセットマネジメントのストラテジスト、ジョー・リトル氏は「市場の予想は楽観的だ」と警鐘を鳴らす。信用収縮が時間差で影響を及ぼし「経済と企業利益の成長率をともに鈍らせる」とみているからだ。

中国景気も気がかりだ。23年に5%程度の成長率が見込まれているが、前年の低成長(3%)の反動の域を出ない。消費は伸びず、不動産不況が追い打ちをかける。投資マネーは萎縮し、株式時価総額は2年連続で減少した。世界経済が中国に頼れないなか、米国も失速すればマネーの逆回転を招きかねない。

(今堀祥和)

(日経新聞)

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