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米シタデル、15年ぶり日本再進出 「次なるソニー」期待 日本株 消費・車に照準 2023/06/14

運用成績で世界首位に立ったヘッジファンド、米シタデルが年内にも東京拠点を再開する。創業者のケン・グリフィン氏は日本経済新聞の取材で「日本企業が株主の利益や海外での利益成長をより重視するようになった」と述べ、日本での投資機会が拡大しているとの見方を示した。消費者向けビジネス・自動車メーカーなどの動向を注視するとした。海外の有力投資家による日本株の再評価が続けば、株価上昇の持続力が高まる。


米シタデル創業者兼共同最高投資責任者のケン・グリフィン氏

シタデルは株や債券などに幅広く投資するヘッジファンドで、運用総額は590億ドル(約8兆2500億円)。英LCHインベストメンツの調査によると、1990年の設立から2022年末までの通算で659億ドルの利益を上げた。創業来利益ランキングで米ブリッジウォーター・アソシエーツを抜き、初の首位に浮上した。

シタデルが東京にオフィスを構えるのは08年以来、約15年ぶりとなる。ファンドはリーマン危機で大きな損失を出し、リストラの一環で東京拠点の閉鎖が決まった。日本株への投資は続けてきたが、運用者は日本国外に置いていた。今回の再開にあたって、東京で新たに日本株運用者の採用を検討する。

グリフィン氏はオフィス閉鎖後も、日本経済や株式市場の構造変化に注目していた。持ち合いの減少と海外投資家の保有比率上昇、企業統治改革――。日本株の投資機会については、株主構成の変化にふれながら「この15年間で日本企業の収益性向上に大きな焦点が当てられるようになった」と答えた。

急激な利上げで株式と債券がともに大幅なマイナスリターンとなった22年。シタデルは市場波乱と無関係に約160億ドルを稼ぎ、ヘッジファンドの年間利益で過去最大を記録した。

日経新聞が入手したシタデルの主力ファンドのリターンはプラス38%。企業財務や業界動向などを基に銘柄を選別する株式投資部門も、記録的な高収益だったようだ。グリフィン氏は「どの企業が本当に大きな変革の岐路にあり、予想を劇的に上回るか理解しようとしている」と説明する。

日本では消費者向け製品・サービスを手がける企業に注目する。商品の革新性やブランド力を生かせば世界でもっと稼げるとみているからだ。「ソニーグループや任天堂はめざましい復活を遂げた」と指摘したうえで、「市場の期待をはるかに上回る企業のストーリーを探している」と述べた。

急激な電気自動車(EV)シフトが進む自動車業界で、グリフィン氏は日本メーカーの動向に関心を示す。将来の交通システムを巡って様々な構想があるなかで「日本の自動車メーカーのリーダーシップを高く評価している」という。日本勢はEV一辺倒にならず、水素など「多様な動力源の確保についてよく考えている」と映る。

長年のデフレは日本経済の重荷で、海外投資家が日本株を敬遠する理由の一つだった。グリフィン氏は「適度なインフレ率に向けて正常化する兆しがみえる」と指摘したうえで、低金利を続けざるを得なかった日銀が景気循環に対応した政策運営をする余地が出てきたことは「非常に健全なことだ」と話した。

世界の市場関係者は米経済と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を注視する。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの一時休止や、年後半の再開が焦点になっている。グリフィン氏は「力強い賃金の伸びが続けばFRBは再び利上げしなければならないだろう」と語った。

利下げ転換時期については「今年末もあり得るが、おそらく24年1~3月になる」との見通しを示した。「中央銀行が政策転換を繰り返すと市場が真意をつかめず混乱する」と語り、インフレが落ち着くなどして継続的な利下げを実施できるような環境になるまでFRBはタカ派姿勢を崩さないとみる。

米経済の先行きに関しては「景気後退を避けるのは難しいかもしれない」と語った。高金利に加え、消費者が新型コロナウイルスの流行下でためこんだ「余剰貯蓄が急速に減っている」ことを理由に挙げた。現在6000億~7000億ドルほど残っているという余剰貯蓄は月750億ドルのペースで減少が続くとみる。24年前半には底を突く計算で「個人消費が細り、経済の減速につながる」という。

米国では地銀の破綻が相次ぎ、銀行は貸し出し基準を厳しくしたり実際に融資を絞ったりしている。「オフィスビルへの融資が多い中堅銀行はよりリスクにさらされている」と指摘した。在宅勤務の定着で賃料が下落し、オフィス物件の価値は下がっているため「今後2年間は不良債権の増加といった影響を受けやすくなる」とみる。

(宮本岳則、ニューヨーク=斉藤雄太)

(日本経済新聞)

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