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金融&M&A業界最新情報

Financial & M&A Industry Updates

米シリコンバレー銀行が経営破綻 リーマン危機後で最大 2023/03/11

【この記事のポイント】
・テック企業への融資で著名なシリコンバレーバンクが破綻
・米連邦預金保険公社(FDIC)が管財人になり預金保護を発動
・FRBの利上げで金利が上昇。保有債券の含み損が膨らんだ

【ニューヨーク=大島有美子】米連邦預金保険公社(FDIC)は10日、テック関連のスタートアップへの融資で知られる銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻し事業を停止したと発表した。米連邦準備理事会(FRB)による利上げで含み損を抱えた保有債券の売却や、取引先の新興テック企業の資金繰り悪化に備えた資本増強策を8日に発表したが、信用不安を招き株価が急落していた。

連邦規制当局の監督下にある銀行で破綻は2020年にカンザス州の地銀以来となる。FRBによると、22年末時点でのSVBの総資産は約2090億ドル(約28兆円)で、資産規模は全米で16位。米銀の破綻では、2008年9月の金融危機で破綻した米貯蓄金融機関(S&L=地方銀行に相当)最大手のワシントン・ミューチュアルに続く2番目の規模となる。

SVBが本社を置くカリフォルニア州の金融当局は10日、同社が流動性不足に陥り、債務超過状態にあると認定した。FDICが破綻管財人となり、預金保護を発動する。FDICが保護する預金額の上限は1口座あたり25万ドルで、13日には預金者がアクセスでき支店も営業するとしている。「保険限度額を超える預金額は未確定」(FDIC)で、取引先への影響は不透明だ。銀行や顧客からの情報収集を進める。

SVBファイナンシャルは8日に保有債券の売却に伴う損失計上や増資計画を発表。信用不安を招き、10日には身売りを模索する動きが報じられた。あるベンチャーキャピタル(VC)関係者は「9日夜から投資先が一斉に預金を引き出している」と明かす。信用不安が増幅し、資金繰りが一気に行き詰まったとみられる。米メディアによると、増資計画の断念後は身売りを検討していたが、株価急落や経営の混乱で買い手が現れなかった。

SVBは金融緩和下でVCなどから資金を活発に調達したベンチャー企業の預金を集めていた。22年3月末の預金残高は1980億ドルと3年間で3.8倍に膨張した。急拡大した預金で満期までの期間が長い米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を中心に運用していたが、FRBによる急ピッチの利上げで金利が上昇(債券価格は下落)し、含み損が膨らんでいた。

米銀では暗号資産(仮想通貨)関連企業からの預金を集めてきたシルバーゲート・キャピタルが傘下銀行を自主的に清算すると8日に発表した。

(日本経済新聞)

米銀行株の下げ止まらず シリコンバレー銀行破綻で動揺 2023/03/11

【ニューヨーク=竹内弘文】米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻を受けて、米株式市場での動揺が続いている。中堅銀行や地銀など金融株などの下げで投資家心理が悪化し、10日のダウ工業株30種平均は前日比345ドル(1.1%)安の3万1909ドルで引けた。週間では1481ドル安となり、週次の下げ幅としては2022年6月以来の大きさとなった。

カリフォルニア州地盤の銀行持ち株会社パックウェスト・バンコープ株は10日、前日比38%下落し、ファースト・リパブリック・バンク株も15%安となった。両銘柄は前日にも2割前後下落していた。市場が不安視しているのはテクノロジー業界との取引関係の深さだ。

パックウェストの開示資料によると2022年末時点でベンチャー関連から受け入れている預金は全体の3分の1を占めた。ファースト・リパブリックはVCや未公開株ファンド向けの融資が企業向け融資額全体の6割弱だった。シリコンバレーバンクの破綻の引き金を引いたのはテック企業やVCの預金引き揚げだったことから、余波の広がりを株式市場は警戒する。

株式アナリストからは「個別行の特異事例が他行でも起きていると連想した投資家の売りは過剰反応だ」(バンク・オブ・アメリカのエブラヒム・プーナワラ氏)という指摘がある。保有債券の含み損を考慮すると破綻前から実質的に過小資本にあったシリコンバレーバンクと異なり、ほかの中堅銀行は財務基盤が比較的安定しているとの見方もある。

ただ、不安がくすぶるなかでは積極的な買いは入らず、売りが優勢になりやすかった。大手行や主な地銀で構成するKBWナスダック銀行株指数は、前日の7.7%安に続き10日も3.9%安となり、20年11月以来の安値を付けた。

債券市場では金利低下が進んだ。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは前日比0.31%低い4.59%に急低下(債券価格は急伸)した。一日の低下幅としては2008年9月以来、約14年半ぶりの大きさとなった。

10日朝発表の2月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比31万1000人増と市場予想を上回った一方、失業率は3.6%に上昇。平均時給の伸びも予想を下回った。21〜22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が0.50%へ再拡大するとの見方は後退した。

(日本経済新聞)

シリコンバレー銀なぜ破綻? テック金融の要、不安連鎖 2023/03/11

米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が10日、経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入った。米銀の破綻では2008年のリーマン危機で破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ資産規模。増資発表後も預金の流出が止まらず、わずか2日でのスピード破綻となった。気になる疑問を3つのポイントでまとめた。

(1)シリコンバレーバンクとは?
「昨晩、別の銀行口座に資金を移そうとしたが、取引できなかった。こんなに早く行き詰まるとは……」。10日朝、米カリフォルニア州サンタクララ市のSVB本店を訪れた男性は肩を落とした。男性は医療関連のスタートアップ企業を経営し、SVBに350万ドル(約4億7000万円)を預けていた。FDICによる1口座あたりの預金保護上限(25万ドル)を大きく超える。

本店のドアには鍵がかけられ、重苦しい面持ちの人々が集まった。「当社が口座を持つ金融機関はここだけ。残高は数百万ドルあり、来週からどうすればいいのか」(広告関連のスタートアップで法務を担当する女性)

SVBファイナンシャル・グループ傘下のSVBは1983年に創業した。口座の開きやすさや対応の速さがスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の支持を受け、同社によるとVCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数がSVBと取引している。「起業したら口座を開くのが当然」(10日に本店を訪れた経営者)の銀行として知られる。

グループでVCも持ち、米調査会社ピッチブックによるとこれまで米国を中心に約530件投資した。富裕層向け資産運用も手掛けるため起業家のニーズも満たす。シリコンバレーのエコシステムの中核を担う金融機関といえる。

2008年にはイスラエル、12年には中国で合弁会社を設けるなどグローバルにテック企業の資金需要をつかむため拠点を広げてきた。日本に拠点はないが21年にあおぞら銀行がSVB関連の投資ファンド、SVBキャピタルと提携した。

新型コロナウイルス下の金融緩和に伴うカネ余りで、スタートアップは資金調達を拡大した。21年の米国のVC投資は過去最高となった。資金の余ったスタートアップがSVBに預金した結果、22年3月末の預金残高は前年同期比6割増の1980億ドルとピークに達した。

預金が増える一方、十分に資金調達していたスタートアップへの融資需要は低かったため、SVBは運用先として住宅ローン担保証券(MBS)など有価証券の購入にあてた。米連邦準備理事会(FRB)が22年3月に利上げを開始し、急な金利上昇に伴い保有する債券の含み損が想定を上回って拡大。含み損を考慮するとすでに実質債務超過の状態にあったとみられている。

米オッペンハイマーのクリス・コトウスキ氏は「金利上昇は(金利収入の増加で)多くの銀行に恩恵をもたらすが、SVBは金利上昇によって傷つけられる構造を持っていた」と指摘する。

金融引き締め環境に入り未上場企業の企業評価額の見直しも続くなか、資金調達環境が逆風に転じたスタートアップからの預金も減少。SVBの預金残高は22年末、ピークだった同年3月末より13%減少した。

SVBファイナンシャル・グループは8日、一部保有債券の売却に伴う18億ドルの損失計上と、普通株発行などによる22億5000万ドルの増資を発表した。23年2月末時点で150億ドルの現金を持つなど流動性のある状態を強調したが、巨額損失を出しての債券売却と増資が信用不安に拍車をかけた。9日に株価は前日比6割安と急落。増資に失敗し、身売り先を模索したもようだが、10日に経営破綻と事業停止に至った。

(2)なぜ急な破綻に至ったのか?
「投資先が一斉に預金を引き出し始めた」。あるVC関係者は9日晩の様子をこう語る。預金者が殺到したためオンラインバンキングで障害が発生し、預金が引き出せなかったとの声も上がる。「SVBの発表がかえって取り付け騒ぎを引き起こしてしまった」(関係者)。著名投資家ピーター・ティール氏率いるファンドなどが投資先に預金引き出しを呼びかけたことも伝わり、不安が増幅した。

具体的な数字は明らかになっていないが、9日に多額の預金が引き出され、すぐに資金繰りが行き詰まったとみられる。米オッペンハイマーのコトウスキ氏は「シリコンバレーバンクの預金は個人預金が多い他の商業銀と異なり、(スタートアップなどの)法人顧客で主に構成されている」とその特異性を指摘する。22年末時点の預金残高を預金者別にみると、テックやヘルスケア系企業が全体の6割を占め、創業初期の企業も多い。

あるスタートアップの最高財務責任者(CFO)は「我々は横をみる。引き出した方が良いとの空気を感じれば一斉に預金を移す」と話す。さらに「定期預金ではなく、すぐに引き出せる普通預金で持つケースが多い」。会社資料によると、22年末時点でFDICの預金保護の上限を超えた預金額は預金全体の約9割を占めた。こうした状況が取り付け騒ぎを広げたとみられる。

(3)スタートアップ企業や他銀行への影響は?
「今の債券のポートフォリオと、流動性を確認したい」。10日、米国に拠点を持つ銀行では次々、FRBの地区連銀との緊急会合が設定された。SVBの破綻を受け、「FRBは、同様の事象がほかにも広がる可能性を把握しておきたかったのだろう」(銀行関係者)。

銀行株は軒並み下落しているが、調査会社モーニングスターのエリック・コンプトン氏は「SVBの破綻は、金融システム全体に波及する可能性は少ない独自の危機だ」と指摘する。一方で「流動性のリスクが高まっていることを浮き彫りにした。資金調達圧力が四半期ごとにどう変化し、リスクがいつ顕在化するかを予測することが非常に困難だということを明白に示した」と警鐘を鳴らす。

融資や預金者に偏りを持つ中堅銀や地銀の株価は下落が目立つ。10日に前日比15%安となったファースト・リパブリック・バンクは「預金基盤は盤石で、多様化している」との説明に追われた。

スタートアップ側の当面の焦点は運転資金の確保だ。特に「設立から日が浅い企業ほどSVBへの依存度が高い傾向がある」(VC幹部)ため、こうした企業の資金繰りが課題となる。「1日で数百社から問い合わせがきた」。ソフトウエア系のスタートアップに貸し付けを手掛ける会社が給与支払いのための短期融資を案内したところ、問い合わせが殺到した。

ピッチブックのマデリン・シー氏は「SVBから資金を取り戻せない場合、多くのベンチャー企業が現在の景気減速を乗り切れるか疑問だ」と指摘する。米ブルームバーグ通信によると、今後数日内にも資産売却先が決まる可能性がある。SVBを震源とした混乱は、逆風に転じたスタートアップの経営環境や金融機関の運用リスクの管理など、かつてないペースの金利上昇がもたらす不安や歪みを反映している。

(ニューヨーク=大島有美子、シリコンバレー=奥平和行)

(日本経済新聞)

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