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米ファンド、未公開株投資縮小 運用資産の3割に 大手4社、不動産・保険に分散進む 2022/08/17

【ニューヨーク=伴百江】米投資ファンドの間で未公開株投資の存在感が低下している。ブラックストーンなど上場大手4社では運用資産に占める割合が2022年6月末時点で平均3割強まで下がった。年初からの金利上昇や株安で未公開株の価値が目減りしているほか、新規株式公開(IPO)などの「出口」が狭まり新規投資を抑えたためだ。各社は不動産や保険事業などで収益の分散を急いでいる。

ブラックストーン、KKR、カーライル・グループ、アポロ・グローバル・マネジメントの上場大手4社の運用資産全体に占める未公開株投資の比率を比較した。「祖業」の一つである未公開株投資の比率は6月末で平均31%と前年比5ポイント低下した。新型コロナウイルス禍前の19年6月末では43%だったが、20年6月末には30%台に下がり、それ以降も低下が続く。

最大手ブラックストーンは22年6月の運用資産総額9400億ドル(125兆円前後)のうち、未公開株は2750億ドルと全体の29%と前年の32%から2割台に低下した。

米調査会社CBインサイツによると、ブラックストーンが年初から8月中旬までに買収した会社は学生寮運営会社アメリカン・キャンパス・コミュニティーズやリゾート不動産開発の豪クラウン・リゾーツなど9社と、21年通年の36社を大きく下回った。IPOは6月に実施したイタリアのテクノロジー会社デ・ノラの1社にとどまった。

資金調達後に投資先が決まっていない資産(ドライパウダー)は1710億ドルで、そのうち不動産は590億ドルと未公開株の784億ドルを下回った。未公開株よりも不動産の方が投資機会が大きいことを反映した。

カーライルは未公開株投資の比率が4割と初めて半分以下になった。このほど最高経営責任者(CEO)の辞任を発表したキューソン・リー氏の下、運用資産の分散を進めていた。投資先の軸足はプライベートクレジット(非公開融資)に移している。アポロも分散投資を進め、1月に保険大手アテネ・ホールディングを買収したほか、プライベートクレジットへの投資を積極化している。

業界全体でみても未公開株市場での投資額は急減。米調査会社ピッチブックによると、今年1~6月に投資ファンドが未公開企業に投資した金額は4105億ドルと21年全体の約3分の1に縮小した。特に10億ドル以上の大型投資案件が減速した。

投資先企業の売却やIPOで投資資金を回収する出口案件はさえない。今年前半の出口案件は1406億ドルと21年通年の約6分の1に縮小。特にIPOは34億ドルと昨年の2721億ドルから大幅に減った。

未公開株投資の入り口と出口がともに狭まった背景には市場環境の激変がある。21年は投資ブームで運用資産が急拡大したが、22年前半は株式相場の急落で上場前の未公開株の価値も大きく下がった。投資機会が縮小したのに加え、金利の上昇でレバレッジド・バイアウト(LBO=買収先の資産を担保にした借金による買収)の資金調達コストも高まった。

投資ファンドへの資金の出し手である年金基金なども未公開株から距離を置き始めた。米投資銀行ジェフリーズによると、1~6月に年金基金や政府系ファンドなど機関投資家が流通市場で売却した未公開株ファンドの規模は330億ドルと前年同期からほぼ倍増した。ファンドへの投資家はIPOなどによる投資の回収が進まず、ファンドに確約した新たな資金を用立てるのが難しくなった。そこで「既存のファンドを流通市場で売却する動きが強まった」とジェフリーズはみている。

ブラックストーンのジョン・グレイ社長兼最高執行責任者は「インフレ圧力が沈静化して投資家が市場の先行きに自信を持てるようになるまで、年後半も未公開株投資の減速は続く」とみる。

未公開株投資が投資ファンドの代名詞ともいえた10年ほど前と比べ、市場環境の変化に伴い、投資ファンド業界は投資先の多様化を進めながらより「シャドーバンク」としての存在感が増しているともいえる。

(日本経済新聞)

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