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米ブラックロックCEO ラリー・フィンク氏 〈ウクライナ危機を聞く〉グローバル化、再定義の時 2022/04/13

ロシアのウクライナ侵攻によって、これまで私たちが経験してきたグローバリゼーションは終わった。今後、グローバル化の再構築が進む。2~5年前に比べても既に変化は起きている。

安保が最優先に

約30年前にソ連が崩壊すると、企業や国に繁栄をもたらす資本市場へのアクセスが世界的に拡大し、多くの人が短期間で中産階級の生活水準に引き上げられた。グローバル化が機能したのは、政治リスクがなかったからだ。ところが過去10年間でナショナリズムが台頭し、そして今、国家による安全保障が再び最大の優先事項になっている。

資本へのアクセスは必ずしも公平に与えられる権利ではなく、ある種の「特権」といえる。ロシアは(米欧の金融制裁で)その特権を失った。

企業の対応は速かった。400社以上がロシア事業をやめようとしている。経営者は2022年第1四半期(1~3月期)に損失を計上することになっても、顧客や従業員の声に耳を傾け、撤退を決めた。過去10年間では見られなかった現象だ。あらゆる利害関係者に配慮する「ステークホルダー資本主義」の台頭を映している。

ロシアの侵攻後、サプライチェーン(供給網)にストレスがかかり、エネルギーや食糧価格の高騰を招いている。過去30年間、経済効率の高い供給網の構築が称賛されてきた。今後はより多くの予備能力を持つシステムをつくらなければならない。

ロシア産エネルギーへの依存が問題視されるなか、企業や政府は(一極集中を避けるために)他の国からの調達をより広範囲に検討することになる。企業はより多くの事業を自国内に移管したり、近隣国・地域に移したりするかもしれない。メキシコやブラジル、米国、東南アジアの製造拠点などは他国からの移転で恩恵を得る可能性がある。

エネ、5年で解消
今後2~4年程度、高いインフレ率が続く可能性がある。ただ天然ガスへの再投資と、グリーン水素といった持続可能なエネルギーへの新規投資、供給網の再構築によって我々は余剰能力を持つようになる。こうした投資がすべて実現すれば5年後に供給不足から供給過剰になるとみている。

私は米国が今後も世界の成長のエンジンの一つであり続けると楽観的に考えている。米連邦準備理事会(FRB)が「政策金利を引き上げる」と表明したのは経済の好調さを示す素晴らしいサインだ。あと2.0~2.5%の金利引き上げ余地があるだろう。歴史的にみれば非常に小さな利上げ幅といえる。

FRBやほかの中央銀行も、世界を不況に陥れたいとは考えていないだろう。もしインフレが10年続くと信じているならば(景気を悪化させても利上げを強行するしか)選択の余地はないが、私はそんなことが起きるとは想定していない。FRBはマーケットの動向に非常に敏感になるとみている。

グローバル化の再定義が進むなかで、日本はここ数年で最も良い位置にいるとみている。円安の恩恵があり、銀行のバランスシート(貸借対照表)は強固だ。家計のバランスシートも良好な状態を保つ。ブラックロックは日本株の「オーバーウエート(多めの組み入れ)」を推奨している。

岸田文雄首相が推進する「新しい資本主義」は、ステークホルダー資本主義だと理解している。企業があらゆる利害関係者に焦点を当てるようになれば、持続的で安定した収益力を得られる。日本経済を再構築し、低成長から脱却させるカギとなるだろう。人口動態の問題を抱える国にとって、非常に険しい道だ。

(聞き手はニューヨーク=宮本岳則)=随時掲載

 Larry Fink 米投資銀行の経営委員会メンバーなどを経て、1988年にブラックロックを共同創業。機関投資家や個人から総額10兆ドル(約1250兆円)の資金を集める巨大運用会社を築いた。

(日本経済新聞)

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