バイデン氏は決選投票での民主勝利を受け「ジョージアの有権者は過激なMAGA主義を拒否した」と強調した=ロイター

【ワシントン=坂口幸裕】6日に投開票された米南部ジョージア州の上院選の決選投票で与党・民主党が勝利し、議会運営で主導権を握れる過半数の51議席目を確保した。敗北した野党・共和党候補を推薦したトランプ前大統領の責任論が一段と強まり、2024年の次期大統領選の候補者指名争いに影響する可能性がある。

バイデン米大統領は6日、決選投票で勝利した民主のラファエル・ウォーノック氏に電話し「勝利を祝ったところだ」と自身のツイッターに投稿。「ジョージアの有権者は民主主義のために立ち上がり、過激なMAGA主義を拒否した」とつづった。

かねてトランプ氏のスローガン「Make America Great Again（米国を再び偉大に）」の頭文字から同氏や信奉者をMAGAと呼び、民主主義を脅かす存在だと非難してきた。

上院議長を兼ねるハリス副大統領が1票を持つ民主の多数派維持はすでに固まっていた。6日の決選投票の結果を受け、上院（定数100）で非改選を含め民主は現有の50議席から1議席上積みして過半数を確保した。

過半数を得たことで民主は法案や上院だけが承認権を持つ政府高官・判事らの人事案を迅速に処理できるようになる。米議会調査局によると、上院に現在17ある常任委員会の構成は議席数に比例して与野党に配分する慣例がある。

民主と共和の議席が50対50のままだと民主・共和の各委員会の委員数が拮抗し、民主が委員会を通過させるために過半数を得るには野党の協力が必要になる。

委員の数が同数で可決できない場合は本会議を開いて委員会の議案を本会議に戻す手続きが要る。委員会で可決できれば、その手続きを省ける。ハリス氏が議会に張り付く必要がなくなるほか、病気などによる議員の欠席で採決日程を先送りするリスクを減らす効果もある。

民主が過去に苦しんだ与党内の造反による政策停滞のリスクも軽減できる。これまで中道派とされる2人の上院議員が気候変動対策や財政政策などに反対し、看板政策を実現できない事態に直面した。

下院では4年ぶりに共和が過半数を奪還し、23年1月からは上下両院で多数派が異なる「ねじれ議会」になる。共和は24年大統領選を見すえてバイデン政権の政策を厳しく追及していく構えで、民主は上院でできるだけ安定した議会運営を進めたい考えが強い。

事前予想に反して伸び悩んだ共和は下院では僅差で過半数をとった一方、上院は1議席減の49議席にとどまった。ジョージアを含む上院の行方を決した激戦州でトランプ氏が推した候補は相次ぎ敗れ、24年の大統領選は「トランプ氏では勝てない」との見方が拡大する事態もありうる。

米選挙分析サイト「バロットペディア」のデータやAP通信の調査によると、共和から出馬したトランプ氏の推薦候補は7日時点で結果が判明した上院25人のうち17人、下院162人のうち148人がそれぞれ当選した。党内で一定の足場は確保しており、トランプ氏との距離を軸に主導権争いが激しくなるおそれがある。

（日本経済新聞）

【ワシントン=坂口幸裕】米南部ジョージア州の上院選の決選投票が6日に投開票された。米主要メディアによると、与党・民主党現職のラファエル・ウォーノック氏が当選を確実にした。トランプ前大統領が推薦した野党・共和党新人のハーシェル・ウォーカー氏を破り、上院で多数派を固めた民主が過半数となる51議席目を確保した。

11月8日に実施した中間選挙のジョージアの上院選で立候補した3人がいずれも当選に必要な過半数に届かず、州法に基づき上位2候補が決選投票に進んだ。ジョージア州によると、今回の決選投票では190万人近くが郵送を含む期日前投票を利用した。

中間選挙はこれまで、上院（定数100）で非改選を含め民主が現有の50議席、共和が49議席を確保。上院議長を兼ねるハリス副大統領が1票を持つ民主の多数派維持はすでに固めていたが、議会運営を円滑にするため最後となる1議席を上積みした。

現在17ある常任委員会の構成は議席数に比例して与野党に配分する慣例がある。同数だと法案や人事案を委員会で通すには原則として野党の協力が要る。下院で4年ぶりに過半数を奪還した共和は24年大統領選を見すえて攻勢を強める構えで、民主は上院でできるだけ安定した議会運営を進めたい思いがある。

今回の結果は2024年の次期大統領選の共和候補の指名争いに影響する可能性もある。先の上院選でトランプ氏の推薦候補が激戦州で相次ぎ敗れた。ジョージアでもトランプ氏の息のかかった候補が敗北し、次期大統領選への出馬を表明した同氏では戦えないとの見方が共和内で一段と強まりかねない。

トランプ氏は決選投票の応援でジョージア州には入らなかった。有権者の間で賛否が割れる同氏が現地に赴けば、無党派層が反発して民主候補に流れるのを懸念した判断とみられる。

（日本経済新聞）