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米個人マネー、バブルに幕 話題先行「テーマ株」下落 2022/05/20

新型コロナウイルス下で膨らみ続けていた米株式市場の個人マネーが崩れ始めている。個人投資家が支えてきた話題先行の銘柄を集めた「テーマ株」や、SNS(交流サイト)の流行に乗る「ミーム株」が大幅に下落。安定配当が見込める「インカム株」への逃避が進む。金融引き締めが重荷となり、個人投資家の宴(うたげ)は終わりに向かいつつある。
ブロックチェーンは63%安。ゲノム・バイオテクノロジーは40%安、ロボット・人工知能(AI)は37%安――。米国を中心に世界のテーマ株に投資する上場投資信託(ETF)の「グローバルX」の値動きを見ると、2021年末と比べて大幅な下落が目立ち、下落幅はナスダック総合指数を上回る。

テーマ株は話題性の高い銘柄をひとくくりにして投資する手法で、個別銘柄の分析が甘くても手軽に投資ができる点から個人投資家に人気が高い。新型コロナ下での金融緩和や政府の財政支援を追い風に資金を集めてきたが、今年に入り逆風が吹いている。
テーマ株は足元の業績が悪くとも将来の成長期待から買われてきた側面が大きい。株価が割高なことが多いため、投資マネーの縮小は急速な株安につながる。米暗号資産(仮想通貨)最大手のコインベース・グローバルの22年1~3月期決算は4.3億ドル(約550億円)の最終赤字だった。株価が21年末比で73%安と、ピーク時の21年11月から600億ドルの時価総額が吹き飛んだ。
製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)で高成長が期待されるスイス重電大手のABBも19%下げた。インフレによる生産コスト増で企業の設備投資が鈍るとの懸念が出ている。
JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾氏は「昨年までは足元の業績以上に今後の成長を期待するマネーが流れ込んでいたが、利上げや景気減速のもとでは許容できなくなっている」と指摘する。

テーマ株を支えてきた個人投資家が変調している。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めへの警戒感が一段と高まり、米個人投資家協会(AAII)が実施したアンケート調査では、4月下旬以降、今後6カ月の株価見通しについて「弱気」とみる投資家の割合が半数を超える週が目立つ。ある投資家は「FRBが積極的な引き締め政策をとっている限り、株には手を出さない方がいい」と慎重な姿勢だ。
米投資信託協会(ICI)によると、ETFと一般の投信をあわせた投信全体の資金流出入額は5月11日までの1週間に266億ドルの純流出となり、6週連続のマイナスとなった。
個人の投資余力も低下している。米国ではコロナ禍の給付金などで貯蓄率が20年4月に34%、21年3月も27%と歴史的水準まで上昇し、潤沢な資金が市場に流入した。今年3月には6%台とコロナ前の水準に下がり、物価上昇も生活費を圧迫。投資余力をそいでいる。
ネット掲示板「レディット」などに書き込まれた情報を基に投資するミーム株も大幅安に沈む。「ラウンドヒル・ミームETF」は21年12月の上場時をピークに下落を続け、足元では上場時の6割安だ。ミーム株の代表格で個人投資家の買いを集めた米AMCエンターテインメント・ホールディングスは52%下げた。
新規株式公開(IPO)銘柄も同様だ。上場後数年内の銘柄に投資するETF「ルネサンスIPO」は21年末から5割安。IPO時の時価総額で20年の米国最大のIPOとして話題になったビッグデータ管理のスノーフレークは57%安だった。

個人マネーは逃避先として守りに強い銘柄群に向かう。米調査会社EPFRによると、高配当を売りにした世界のETFには4月、さかのぼれる05年以降で3番目の大きさとなる84億ドルの資金が流入した。テーマ型の代わりに、「安定した配当を得られたり、オプション取引を使って損失を抑えたりするインカム型ETFの買いが広がっている」(グローバルX)。
下落した銘柄を物色する動きもある。ハイテク株に集中投資する「アーク・イノベーションETF」の価格は21年末から5割超安だが、4月まで4カ月連続で資金流入超となった。
個人の投資熱はこれまでブームと終わりを繰り返してきた。00年ごろはIT(情報技術)銘柄に資金が集中した「ドットコム・バブル」が起き、00年代後半にはブラジルや中国など新興国をひとくくりにした「BRICS」への投資が活況だった。いずれもその後に金融引き締めや景気減速が始まると、一斉にマネーが引き揚げられた。新型コロナ下の金融緩和によるバブルが終わり、個人投資家は我慢の局面を迎えている。
(ESGエディター 古賀雄大)

(日本経済新聞)

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