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米個人向け事業撤退相次ぐ 欧州や日本の金融機関 フィンテックと競争激化 資金洗浄対策も重荷に 2021/12/24

【ニューヨーク=大島有美子】欧州の金融機関や邦銀が相次いで米国の個人向け(リテール)事業から撤退している。仏BNPパリバが傘下地銀をカナダの金融大手に売るほか、三菱UFJフィナンシャル・グループやスペインのBBVAなども撤退を表明した。フィンテック勢との競争激化やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などのコストがかさんでいるためで、半身で「稼げる市場」ではなくなりつつある。

BNPパリバがカナダのBMOフィナンシャル・グループに売却するのは米カリフォルニア州の地銀、バンク・オブ・ザ・ウエスト(サンフランシスコ、BOW)だ。2022年中の完了を見込む。BNPパリバは自社ブランドでBOWを展開してきたが、「投資家は何年も前から米国からの撤退を求めてきた」(米JPモルガンの銀行アナリスト、デルフィン・リー氏)。

BOWはBNPパリバ全体の税引き前利益の約5%を占めていた。163億ドル(1兆8500億円)の売却額は同社の時価総額の20%に相当する。市場は今回の売却を好感し、BNPパリバ株は発表後、欧州株式市場で他の主要銀行株が下落するなか逆行高となった。

欧州勢や邦銀の米リテール業務からの撤退は今年に入り加速している。スペインのBBVAは6月、米国事業を米PNCファイナンシャル・サービシズ・グループに売却した。英HSBCも5月に米リテール事業からの撤退を発表。米シチズンズ・バンクなどに店舗を売却する。

三菱UFJも9月、MUFGユニオンバンクの個人・中小企業部門をUSバンコープに売却すると発表した。三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取はNIKKEI Financialのインタビューで「IT投資を相応にやっていかないと米国市場で競争力は維持できない。(ユニオンバンクの)規模感が『中途半端』だったということは間違いない」と語ったうえで、「経営資源の最適配置という観点で当たり前の経営判断をした」と売却の背景を説明した。

マイナス金利政策に苦しんできた日欧勢にとって米国は利ざやが大きく、景気拡大に支えられた「稼げる市場」だった。リテール事業はドル預金の安定的な調達源でもあり、数年前までは各社とも競って強化してきた。M&A資金など融資機会にも恵まれ、米国で外銀の支店などが占める資産は2.8兆ドルと商業銀行の資産全体の13%を占める。

こうした環境を変えたのは、店舗を持たない低コスト経営のネットバンクなどとの競争激化だ。決済や個人間送金でも存在感を増すフィンテック勢に押され、テクノロジー予算に年間1兆円超を振り向けるJPモルガン・チェースなど米大手銀にも競争で劣後する。

MUFGユニオンバンクは、ネットバンキングのブランド認知度を高め、顧客を獲得するため軽量型店舗を地盤の米西海岸以外にも展開したが、費用対効果の面から20年に廃止した。

資金洗浄対策など規制対応コストも重くのしかかる。デロイトによると、08年の金融危機からの8年間で銀行の法令順守コストは6割増えた。調査会社のeマーケターは、米銀のテクノロジーにかけるコストが25年に21年比で43%増えると予測する。

中規模以下の銀行にとっては費用負担が重くなる一方で、株式市場からの圧力も高まるなか、米リテール事業を手放す動きが一気に広がっている。

もっとも、外資系の中でも米国事業を稼ぎ頭としている銀行もある。スペインのサンタンデールは、米国で展開する低所得層向けの自動車ローンが伸びており、米国は21年1~9月期の国別でみた利益貢献度で最大となった。

カナダのTDバンク・グループはデジタルバンクと実店舗の利点を使い分け、個人向けや中小企業融資でシェアを広げている。

米リテール市場は、大手が行き届かない顧客を獲得したり、デジタル分野で米地銀を上回ったりするなど独自の強みがなければ生き残れなくなっている。

(日本経済新聞)

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