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米債務上限引き上げ基本合意 デフォルト回避へ31日採決 2023/05/28

【ワシントン=高見浩輔】バイデン米大統領と米連邦議会のマッカーシー下院議長は27日、米政府債務の法定上限を引き上げることで基本合意した。マッカーシー氏は31日に議会で採決すると表明した。承認されれば、市場で懸念されていた米国債の債務不履行(デフォルト)は回避される。

バイデン氏は同日「景気後退や数百万人の雇用喪失につながる破滅的なデフォルトを防ぐ、米国民にとっての朗報だ」と声明を出した。マッカーシー氏は「まだやるべきことはたくさんあるが、これが米国民にふさわしい合意であると信じている」と述べた。

政府の財政は新型コロナウイルス禍での支出拡大などを背景にして急速に悪化しており、債務残高は1月に法定の上限に達した。米財務省は基金の運用変更などで資金繰りをつないでおり、イエレン米財務長官はこうした措置が6月5日に行き詰まると警鐘を鳴らしていた。

複数の米メディアによると、合意案は社会保障を除く「裁量的支出」について今後2年間の歳出を抑制するのと引き換えに、2025年までの時限措置として現行の上限である31.4兆ドルを上回る債務残高を認める。

マッカーシー氏は「歴史的な支出の削減になる」と強調したものの記者団の質問には応じず、具体的な合意内容は明らかにしなかった。米ブルームバーグは合意に低所得層向けの食糧支援プログラムで支給要件を厳格にすることが盛り込まれたと報じている。民主党が抵抗していた低所得層向け公的医療保険「メディケイド」に新たな就業要件を課す案は合意に至らなかったという。

日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)の予算増額も一部阻止したもようだ。IRSの増強はバイデン政権が22年8月に成立させたインフレ抑制法に10年間で800億ドルが盛り込まれていた。

今後の焦点は議会での審議に移る。バイデン氏は声明で合意案を「妥協の産物だ」としつつ「私と民主党の優先事項や立法成果を守った」と強調した。民主内にはバイデン氏の譲歩を警戒する声があり、一部には交渉手法を批判する声も出ていた。

下院で過半数を握る共和はわずかな票数で優位に立っているため、マッカーシー氏は法案を通す際に強硬派の主張も聞き入れざるを得ない。今回の基本合意の過程でマッカーシー氏が強硬派にどれだけ根回しできていたかがカギを握りそうだ。

上限引き上げの時限措置を2年としたのは2024年11月の次期大統領選をまたぐためだ。債務上限問題は野党が政権を揺さぶる材料になりうるが、共和にとっても強引な交渉は批判を浴びる「もろ刃の剣」になる。

今回の交渉はすでに市場や外交で混乱を招き、米国の統治機能に疑念を強める結果となった。大手格付け会社フィッチ・レーティングスは24日、米国格付けの見通しを「ネガティブ」に引き下げた。

バイデン氏は主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に関連して予定していたオーストラリアやパプアニューギニアへの訪問を中止。サミットの最中も会議や夕食会を欠席・早退し、内向きな姿勢を印象づけた。

(日本経済新聞)

米債務上限、またも土壇場合意 市場・外交で信認に傷 2023/05/28

【ワシントン=高見浩輔、ニューヨーク=竹内弘文】米政府の債務上限を巡り、バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が27日、基本合意に達した。議会を通過すれば危機は土壇場で回避できる見通しだが、米国債をまたも債務不履行(デフォルト)の危険にさらした内向き志向の政治闘争はすでに市場や外交の場で米国の信認を傷つける結果となっている。

中長期でドル離れ加速も
金融市場では短期的に安堵が広がりそうだ。ダウ工業株30種平均は25日に約2カ月ぶりの安値を付け、債券市場では6月に償還を迎える短期債の利回りが急伸(債券価格は急落)するなど、各市場でデフォルトリスクへの警戒感が強まっていた。

仮に共和の保守強硬派などの反対が根強く米議会通過が危ぶまれれば、改めて市場参加者がリスク回避に動く展開が予想される。債務上限の引き上げが成功しても、政府の手元資金を確保するため短期債の大量発行が予想され、市中に出回る資金を吸い上げることになる。地銀破綻で痛手を負った銀行システムへの負荷が強まる可能性がある。

中長期にはより大きな問題が残る。著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏は今回の混乱が「米国の経済運営に対する国際的な評判を損ねるリスクがある」と指摘した。基軸通貨ドルや米国債は国際金融システムの要だ。米国への信認が低下すれば新興国などで進むドル離れを加速させる恐れもある。

G7の結束にも傷
政府債務が31.4兆ドルの債務上限に達したのは1月。これまで何度も引き上げを巡ってデフォルトの危機を経験したにもかかわらず、バイデン政権はそこから交渉を進めようとしなかった。具体的な対話が始まったのは、イエレン米財務長官が6月1日にも資金繰りが行き詰まると警告した5月1日以降だ。

交渉は難航し、バイデン氏は19〜21日の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせた訪日の取りやめも検討した。結局、日本では首脳討議や夕食会の一部を欠席・早退し、その後に予定していたオーストラリアとパプアニューギニアの訪問を取りやめた。

太平洋地域の島しょ国は中国が影響力を強めており、軍事的な要所となりつつある。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は2018年11月にパプアニューギニアを訪問し、周辺諸国の首脳と会談した。パプアニューギニアは20年6月、国連人権理事会で中国による香港国家安全維持法導入に賛成票を投じている。

太平洋島しょ国を現役の米大統領が訪問すれば史上初めてとなるため、AP通信によるとパプアニューギニアは訪問日を祝日にして歓迎する予定だった。米国側はブリンケン米国務長官を派遣して防衛協力協定などを締結したが、米国の求心力の低下は避けられない。

今後も混乱繰り返す恐れ
米国は同様の混乱を繰り返す恐れがある。米国の債務残高の膨張は今回の歳出削減でも止まらない公算が大きいためだ。バイデン氏とマッカーシー氏は交渉の序盤で社会保障と高齢者向け公的医療保険「メディケア」を削減対象から外した。

実際にはこの2分野が今後、主要な財政圧迫要因となる。米議会予算局(CBO)によると合計額は22年の2.2兆ドルから10年後には2倍になる見通しだ。今回の交渉で与野党が認める「聖域」となったことで、財政改善の取り組みは一段と難しくなる。

(日本経済新聞)

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