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米国で高度人材争奪 半導体やEV、賃金2割増の厚遇 2022/10/20

米国でスキルを持つ高度人材の獲得競争が激しくなっている。半導体や電気自動車(EV)など長期的に成長が期待できる分野では高額報酬の処遇で採用する動きが目立つ。足元で需給が緩み始めているが、新型コロナウイルス禍の長期化で労働市場から人が離れ、人手が不足している。賃上げが海外に比べて出遅れている日本企業は円安で海外での人材採用コストが上昇しており取り残されかねない懸念も高まっている。

EV関連の電子部品開発を手掛けるある日系企業は2022年春、米国で新卒で採用した3年目の技術者が同業の米系企業に約1.5倍にあたる年収15万ドル(約2200万円)で引き抜かれた。日系企業向け人材紹介を主に手掛けるアクタスコンサルティンググループ(ニューヨーク市)の担当者は「特に経験のある電子工学系技術者を米国勢が高額で引き抜いている」と話す。

米求人検索サービス「インディード」でエンジニアの求人動向を調べると、米国の半導体分野の求人掲載数100万件あたりの求人件数は22年7月に19年同月比64%増と大きく伸びている。EV分野も2.6倍だ。

エンジニアの年収は22年も上昇傾向が続く。スイスの人材派遣大手アデコグループ傘下の転職支援会社LHHによると、米国の22年の半導体技術者の転職時の平均年収は前年比18%増の12万503ドル、EV技術者は同19%増の9万6751ドルで過去5年間でそれぞれ前年比では最大の伸び率だ。

背景にあるのが旺盛な高度人材の需要だ。このほど成立した半導体補助金法では半導体産業に520億ドルを投じ、米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子などの新工場建設を補助し、工場新設計画が相次ぐ。米ジョージタウン大学安全保障・先端技術研究センター(CSET)は2月、米国の半導体産業が今後10年で新たに約1万3000人のエンジニア、ソフトウエア開発者数を必要とするとの予測を示した。

EV分野も同様だ。30年に新車の半分をEVなど電動車にするという米バイデン政権の目標のもと、米自動車産業はEV化にかじを切る。競争力を左右する電池のエンジニアでは「優秀な人材の年収は経営幹部並み」という声も漏れる。

ゼネラル・モーターズ(GM)は21年にエンジニアを8000人採用し1万5000人に増員し、技術部門の報酬体系をIT大手と同水準に引き上げた。

米国ではコロナ禍の長期化で介護や育児のために労働市場を離れた人材が戻っていない。1960年代生まれのベビーブーマーの早期退職も重なり人材獲得競争に拍車がかかっている。

高度人材の獲得競争は世界で起きている。半導体は安定調達や経済安全保障の観点から各国・地域が工場誘致などを急ぐ。「台湾で採用されたエンジニアには(日本の)倍近い給料を提示された人もいる」。日本で半導体の人材仲介を手掛ける企業の担当者はこう明かす。TSMCは横浜の拠点などで100人超のキャリア採用を募集するなど、日本で採用強化に乗り出している。

独ダイムラー(現メルセデス・ベンツグループ)は21年、中国・北京市に新たな研究開発センターを設けた。エンジニアは千人規模に達する。EVや人工知能(AI)などの分野で中国や欧米で学んだ技術者を多く抱える。ソフトウエア分野の中国のノウハウを自社に取り込みたいという狙いだ。

成長分野の人材獲得競争は、世界的に人材の供給が少なくなっていることも背景にある。各国の統計によると20年の工学系学部卒業者数はドイツでは16年比約10%減、インドでは11%減(入学者数)だ。日本の電気通信工学関係の修士課程に在学する学生は21年度に1万4495人で10年で2割減少している。

一方、日本の高度人材の給与水準は世界に見劣りしている。米系人事コンサル大手マーサージャパンによると、22年のマネジャー級の製造系など非IT技術人材の平均年収を主要国で比べたところ、米国は19年比約8%増の18万6574ドルと増加傾向で、中国や東南アジアでは2桁増となっている。日本は2%増の10万2972ドルで、タイ(9万5637ドル)にも肉薄されている。

日本総合研究所の安井洋輔主任研究員は「日本の企業ではジョブ型を導入しながらも部長や役員、社長など一定の役職以上の賃金は出さないという不文律を設ける場合がある」と指摘する。労働市場の水準に合わせた賃金を設定できないと、日本は高度人材の獲得競争で劣後し、草刈り場となる可能性もある。為替相場の円安傾向も海外での人材獲得競争に響く。

米国では景気後退に備え雇用を調整する動きも出始めている。米国を中心とするテクノロジー企業の解雇情報をまとめた情報サイト「Layoffs.fyi」によると、22年の人員削減数は足元で9万人を超え、21年の通年(1万5000人)を大幅に上回る。

メタは採用を凍結し、マイクロソフトは人員削減に着手した。足元で需給が緩み在庫調整が始まっている半導体分野でも、人員抑制などが今後相次ぐ可能性もある。

ただ、長期的に成長が見込める分野では高度人材の需要は引き続き根強いとの見方が多く、雇用には濃淡が出始める可能性が高い。ウクライナ侵攻の長期化や各国の利上げなど景気の不確実性が増す中、難しい判断を迫られる企業も増えてきそうだ。

(京塚環、江口良輔、ニューヨーク=堀田隆文、シリコンバレー=佐藤浩実)

(日本経済新聞)

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