金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Bank of America Tower entrance in Charlotte, North Carolina, USA

  • pic

    Jamie Dimon, Chairman and CEO of JPMorgan Chase & Co.

金融&M&A業界最新情報

Financial & M&A Industry Updates

米地銀に3つの火種 預金流出一服も、再編加速か 利ざや縮小・商業不動産・資本規制強化 2023/07/26

米地銀の経営に3つの火種がくすぶっている。預金者をつなぎ留めるために預金金利を引き上げた結果、利ざやの縮小が加速。商業用不動産の市況が冷え込み、保有する不動産担保ローンの価値の目減りも懸念される。当局による資本規制の強化も足かせだ。米カリフォルニア州のパックウエスト・バンコープは25日、同州の中堅銀行との合併を発表した。経営環境の悪化で業界再編が進む可能性もある。

「成長のための舞台を整える、素晴らしい取引だ」。パックウエストのポール・テイラー最高経営責任者(CEO)は、同州地盤のバンク・オブ・カリフォルニア(BANC)との合併を発表した25日の投資家向け説明会でこう語った。

パックウエストは、3月にシリコンバレーバンク(SVB)が破綻して以来、経営不安がくすぶっていた地銀の一角だ。4〜6月期の預金は前四半期比1%減と、同17%減だった1〜3月期より流出ペースは鈍った。だがその裏側で、預金流出を抑えるためのコストが大きく膨らんでいた。

預金金利の引き上げや米連邦準備理事会(FRB)からの調達増などで金利支出は前四半期比5割増えた。利ざやは1ポイント以上縮まって1.82%になり、ほかの主要地銀の2〜3%台と比べて大きく見劣りする水準となった。全体のコストをまかないきれず、2四半期連続の最終赤字となった。

パックウエストの総資産はBANCの約4倍だが、今回の合併は事実上、格下のBANCによる救済だ。統合会社名や銀行ブランドはともにBANC側に統一し、CEOを含めて取締役の多数派はBANC出身者となる。

利ざやの縮小はパックウエストだけの問題ではない。25日までに4〜6月期決算を発表した主要な上場地銀20行はいずれも、利ざやが前四半期から縮小している。特に大口で資金を集めやすい譲渡性預金(CD)で利率の引き上げが目立つ。東部ロードアイランド州地盤のシチズンズ・フィナンシャルは、1年物CDで年5%の利回りを提示し始めた。

ふたつ目の火種は、中堅・中小の銀行の成長を支えてきた商業用向け融資だ。不動産市況で厳しいのがオフィスビル。在宅勤務の定着に加え、テック企業や金融機関でレイオフ(一時解雇)が広がり、都市部のオフィス需要が低迷している。

融資総額のうち商業用不動産向けローンが約3分の1を占める東部ニューヨーク州地盤のM&Tバンクは、4〜6月期に1億5000万ドル(約210億円)の与信費用を計上した。前四半期より25%多い水準で、商業用不動産の市況低下などを反映させた。ダリル・バイブル最高財務責任者(CFO)は「マンハッタンのダウンタウン地区の債権で貸倒償却を実施した」と語った。

調査会社トレップの集計によると、商業用不動産向け融資債権が銀行規制上の自己資本を上回る米商業銀行は非上場も含めて700行以上存在する。08年の金融危機以降に大手行が融資に慎重となるのと対照的に、中堅・中小行は成長分野と定めて融資を増やしてきた。不動産市況の変調は地銀の経営体力を一段とそぎかねない。

3番目の火種は資本規制の見直しだ。「規制の見直し内容が判然とするまでは、警戒を解けない」。中西部オハイオ州地盤ハンチントン・バンクシェアーズのスティーブン・スタイヌールCEOは21日の説明会で語った。

FRBを含む米金融当局は27日に米銀の自己資本規制の強化案を公表する予定だ。大手行に比べて規制が緩かった総資産1000億〜2500億ドルの銀行や銀行持ち株会社で資本の上積みが求められる公算が大きい。3月以降に破綻したSVBなど3行はいずれもこの規模に当てはまる。

具体的には「売却可能」という区分で保有する債券の含み損が、自己資本の計算時に反映されるようになる見込みだ。大手行と同様の義務付けがなされることで、金利リスク管理の強化を促す狙いがある。金融システムの安定のために必要な措置といえるが、短期的にみれば、対象となる中堅銀行にとってさらなる負担となることは避けられない。

(ニューヨーク=竹内弘文)

(日本経済新聞)

menu