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米大手銀行、続く「投資銀不況」富裕層事業、成長の柱に 2023/08/10

「私のキャリアの中で2021年のような年が再び訪れることはないだろう」。ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は今年7月、決算説明会でこう語りかけた。投資銀行の事業環境がガラリと変わったことを訴えるためだ。

21年は通期で12年ぶりに最高益を更新。低金利とカネ余りが特別買収目的会社(SPAC)上場やM&A(合併・買収)ラッシュを呼び、投資銀は空前の活況を呈した。だが、米国の金融引き締めへの転換で状況は一変。23年4~6月期の投資銀収益はピーク比6割減に沈む。度重なるリストラで従業員数は昨秋以降、4500人(9%)減った。

米銀大手が「投資銀不況」に苦しんでいる。モルガン・スタンレーは昨年12月以降に計5000人規模の削減を実施。バンク・オブ・アメリカやシティグループも自然減を含め数千人の削減に動き、主な対象は投資銀部門だった。若手バンカーの給与を1年で2度引き上げるなど、各行が激しい人材争奪戦を繰り広げたのが遠い過去のようだ。

「ディールの量はまだ十分に戻っておらず、大手銀はなお人員過剰だ」。ウォール街のヘッドハンティングを手がける米オプションズ・グループのマイケル・カープCEOは話す。「各行が(需要縮小に見合う)適正規模を把握しようとしている」

固定費の圧縮をめざすリストラは退職金の支給といったコストも伴う。ゴールドマンとモルガン・スタンレー、シティは23年上期に計10億ドル(約1400億円)を超す退職費用を計上。米大手銀6行のうち、この3行は4~6月期に大幅減益となった。

人材コンサルティングのDHRグローバルで金融機関を担当するジャンヌ・ブランソーバー氏は「投資銀は不況期に解雇にも多大なコストがかかることを学んだ」と指摘する。

ただ大手銀の人員削減を好機と捉える向きもある。ブランソーバー氏は「スペインのサンタンデール銀行のような2番手グループが人材の受け皿になっている」と話す。

欧州やカナダ、そして日本の金融機関には一流人材の獲得で世界最大の米資本市場を開拓しようという機運もある。みずほフィナンシャルグループが米投資銀行のグリーンヒルを買収したのもこうした流れに沿う。米銀大手にも人員削減をしすぎると需要回復時に出遅れるとの懸念があり、追加削減に慎重な声も出始めた。

大手では投資銀依存からの脱却に向けた模索も続く。

「富裕層ビジネスや資産運用業務には無限のチャンスがある」。モルガン・スタンレーのジェームス・ゴーマンCEOは6月のイベントで力説した。好況期に収益をけん引する投資銀の重要性も強調しつつ、成長余地が大きいのは富裕層事業だと説く。

富裕層向けはJPモルガン・チェースも多くの顧客を抱えていた地銀ファースト・リパブリック・バンクを買収するなど各行が注力する。モルガン・スタンレーの担当者は最先端のテクノロジーの活用などを通じ「競合他社との差を広げる」と話す。

同社は米オープンAIと提携し、顧客に助言する財務アドバイザーの情報収集や判断に生成AI(人工知能)を生かす試みを始めた。アドバイザーが質問を入力すると、社内の経済・市場の専門家が示している分析や洞察に基づく回答を数秒で導き出すという。

ゴーマンCEOの主導した買収戦略も奏功し、同社の顧客基盤はここ数年で250万人から1800万人まで拡大した。これをさらに2.5倍にする中期目標を掲げる。

新たな収益源の育成を急ぐのはゴールドマンも同じだ。顧客に不動産など代替資産への投資機会を提供して手数料を得る資産運用ビジネスの強化を進める。

だが同社では最近、資産運用部門の最高投資責任者(CIO)だったジュリアン・ソールズベリー氏が米投資会社に移籍するなど幹部の離脱も相次ぐ。黒字化に苦戦し縮小に転じたリテール(個人向け)事業の失敗に続き、資産運用の拡大にも暗雲が垂れこめる。ソロモンCEOの苦境は深まっている。

投資銀不況の先を見据えた成長ストーリーをどのように描き、実現するのか。各社トップの手腕も厳しく試されている。

(日本経済新聞)

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