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米当局がアマゾン提訴 競争力の源「プライム」に的 登録・解約、適切さに疑義 2023/06/23

【シリコンバレー=山田遼太郎】米連邦取引委員会(FTC)が、米アマゾン・ドット・コムの競争力の源泉である有料会員制度「プライム」に切り込んだ。顧客をだまして登録させようとしたほか、解約手続きも複雑だと指摘した。消費者を不利な決定に誘い込む「ダークパターン」と呼ばれる仕組みに対して、当局は締め付けを強めている。アマゾンは真っ向から反発している。

FTCは21日に、不公正や欺瞞(ぎまん)的な行為を禁じるFTC法やインターネット通販の消費者保護法への違反でアマゾンを提訴した。長年にわたって消費者を意図しないうちにプライム会員に登録させたり、故意に解約手続きを複雑にしたりしたと指摘している。金額は示していないが、民事上の制裁金の支払いや同社の行為の差し止めを求めている。

アマゾンは2005年にプライムのサービスを始め、祖業のネット通販に消費者を囲い込んできた。139ドル(約2万円)の年会費を支払って会員になると、商品の翌日配送が無料になり、音楽や動画配信サービスの一部も無料で楽しめる仕組みで、世界で2億人超がプライムを利用する。

米調査会社インサイダー・インテリジェンスによると米国だけで有料会員は23年に1億7490万人に上り、成人人口の66%に達する。

プライムなどサブスクリプション(定額課金)サービスの売上高は22年に352億ドルと全体の7%にすぎない。売上高の4割を占めるネット通販事業の競争力を支え、数字以上に役割は大きい。

今回FTCが目を付けたのは「ダークパターン」と呼ばれるものだ。ウェブサイトのデザインや表記によって、その気がなくても商品の定期購入に消費者を誘導するような仕組みを指す。電子商取引(EC)サイトなどにみられ、近年問題視する声が強まっていた。

FTCが訴状で指摘したアマゾンの手法はこうだ。まず商品の購入過程で消費者が有料会員に登録するよう、サイト上にリンクを置いた。年会費ではなく「送料無料」の特典に意識を向けさせたり、動画配信サービスのみの利用とプライムの登録を区別しづらくしたりといった事例も挙げた。

解約しにくさも問題視した。手続きの場所を見つけにくく、解約を試みると「割引価格でサブスクを続ける」など別の選択肢を薦める仕組みになっていたという。こうした手法でアマゾンが「何百万人もの消費者」をだましたと訴えた。

FTCはアマゾンがダークパターンの使用を自覚していたとも訴状で主張する。同社は米国で16年から23年4月まで、解約には4ページにわたり6度のクリックが必要な仕組みを採用していた。長期間の戦争を描いた古代ギリシャの作品にちなみ、この手法を「イリアス」と名付けていたという。

アマゾン側は反発している。21日の声明で広報は「FTCの主張は事実と法律において誤っている。法廷で主張を証明するのが楽しみだ」と反論した。協議のさなかに提訴されたとして、FTCの姿勢も非難した。和解に至らない場合、訴訟の結果が出るまで1年程度かかる可能性もある。

FTCは21年6月に就任したリナ・カーン委員長の下で米テクノロジー大手への監視を強めている。同氏は学生だった17年、アマゾンを反トラスト法(独占禁止法)違反で規制すべきだとする論文を書いて注目を集めた。FTCは独禁法違反でも同社への捜査を進めているとされる。

今回の提訴についてアマゾンジャパン(東京・目黒)は「プライム会員への登録も解約も、明確かつシンプルに行えるように設計されている。顧客からのフィードバックに絶えず耳を傾け、顧客体験を改善する方法を模索している」とコメントした。

アマゾンは国別のプライム会員数は非公開としている。日本の正確な会員数は不明だ。調査会社によると、プライム会員が視聴できる動画サービスの加入者数は、21年時点で日本で約1400万人にのぼる。

ダークパターンについては、日本も22年6月施行の改正特定商取引法で、サブスク契約への悪質な誘導や解約方法の明示について規制が強化されている。日本情報経済社会推進協会(東京・港)の寺田真治客員研究員は「企業にも今後より踏み込んだ対応が求められる可能性がある」と語る。

(日本経済新聞)

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