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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

米政治学者 フランシス・フクヤマ氏 対強権主義、歴史の新局面 2022/03/01

ロシアのウクライナ侵攻は世界をどう変えるのか。内外の専門家に今回のウクライナ危機の意味を聞いた。

ウクライナ危機は極めて重要な事件だ。問題はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟ではない。ロシアのプーチン大統領の願望はソビエト連邦の再建と旧ソ連崩壊後にできた欧州の安全保障秩序の転覆だ。

NATOへ要求したのはポーランド、チェコ、バルト諸国への軍事支援の禁止。1991年以降に起きた全てを撤回しようとしている。

(冷戦終結を先取りした「歴史の終わり」の後に続いた)民主主義の拡大の時代は明らかに終わった。強権国家の台頭が続いている。

米国での内なる脅威もある。ポピュリズム(大衆迎合主義)の広がりだ。トランプ前大統領がプーチン氏を称賛した。こんな時代は想像がつかなかった。

いまは明らかに異なる歴史の局面にいる。「歴史の終わり」で問いかけたのは、自由な民主主義を上回る政府のモデルがあるかだった。いまも答えはノーだと思う。だが、現代の我々は民主主義の後退と弱体化に対抗しなければならない。

台湾問題も占う
ではこれは第2次冷戦といえるのか。ロシアは旧ソ連のような強国では全くない。現体制はルサンチマン(敵意)と超大国時代の郷愁で動く。

ウクライナ侵略は大失敗に終わり、多くを失う可能性が大いにある。50年続いた冷戦のようにはならない。長期では中国こそ最大の脅威だ。

プーチン氏が歴史的な基調を代表する人物とは思わない。コロナ禍で一種の狂気に陥ったとの推測がある。非常に孤立し、一握りの周辺としか話をしない。侵攻後、多くのロシア人が強い衝撃を受け、国益の面でも狂気の沙汰だと思っている。

ロシアがNATO加盟国に兵力を向け、集団的自衛権の行使で米軍が戦闘に加わる展開も起こりうる。将来の脅威はバルト諸国に及ぶ。旧東ドイツに包囲された西ベルリンに似ている。

NATOは米国などの兵力をエストニア、リトアニア、ラトビアに展開する。ロシアが侵攻すれば多数の米兵を殺すことになり、米国の猛反撃は必至だ。

兵力増強再考を
ウクライナ侵攻が中国の台湾侵攻の誘因になるかは、この戦争の長期的な結末による。ロシアがウクライナを早々に鎮圧すれば、NATOや米国はほとんど覆せない。台湾には良くない展開だ。ロシアが反撃を受けて多くの死者を出し、制裁で痛手を負えば、台湾問題では注意深く動くよう、中国に促すことになる。

民主主義勢力が強権主義を押し返すために必要なことはなにか。それはさらに厳しい制裁をロシアに科すこと。そして再び兵力の強化を考えることだ。

NATOは2014年まで戦闘目的の組織とは真剣に考慮されていなかった。ロシアの脅威に対して共同訓練や兵力の駐留を強化する必要があるし、東アジアでも兵力強化が欠かせない。中国の軍事力拡大はあまりに急激だ。

民主主義は強権主義を抑え込めると思う。冷戦下でも意見の不一致や弱点を抱えながら、西側同盟は結束して2世代にわたり持ちこたえた。いまできないことはない。

(聞き手は本社コメンテーター 菅野幹雄)

 Francis Fukuyama 米シカゴ生まれ、日系3世の政治学者。1989年の論文「歴史の終わり?」で共産主義の退潮と民主主義の勝利を説き、注目を集めた。現在は米スタンフォード大シニアフェロー。69歳。

(日本経済新聞)

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