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米株オプション取引が過熱 1日で300兆円 アップル・テスラ高値 個人参入 反転リスクも 2021/11/26

【ニューヨーク=宮本岳則】米株式市場で金融派生商品(デリバティブ)の一種であるオプション取引が急増している。想定元本ベースの売買金額は11月上旬、1日当たり2.6兆ドル(約300兆円)と過去最高を更新した。とくに個人投資家の参加で個別株オプション売買が伸びている。値動き重視の投機的な取引が市場を席巻し、急落リスクも高まっている。

オプション市場では、ある株式を一定期日に決まった価格で売買する権利を取引する。買う権利を「コール」、売る権利を「プット」と呼ぶ。

オプションの買い手は株価に照らして利益が出ると判断すれば権利を行使し、損をしそうなら権利を放棄できる。買い手が売り手に払うオプション価格(プレミアム)も変動し、オプション自体を転売して利益を得ることもできる。現物株に比べて相対的に少ない投資額で大きな取引を手掛けることが可能だ。

米ゴールドマン・サックスによると想定元本ベースの米株オプション取引額は5日、2.6兆ドルに達し、1日当たりとしては過去最大となった。現物株の取引金額との比較では、米株オプションは今月上旬時点で現物株を5割上回る規模となり、10月の過去最高記録(現物株の1.4倍)を超える活況だ。取引の主流は指数を対象商品とするオプションだが、ここにきて個別株のコールの購入が増えている。

活況は個人の参加によるところが大きい。ゴールドマンは個人の取引が全体の50%を超えると推計する。スマホ専業のロビンフッド・マーケッツなど各オンライン証券が取引無料サービスを提供し、手軽に始められるようになった。投資額が小さくてすむほか、オプション価格は株価上昇に伴って加速度的に上がりやすいため、短期トレーダーには魅力的に映る。

アップルによる自動車開発のニュースが伝わった18日、オプション市場ではアップル株を対象としたコール取引が急増した。QUICK・ファクトセットのデータによると取引枚数は300万枚を超え、過去10年間で3番目に大きい規模となった。アップル株はこの日、史上最高値を更新した。

証券会社が顧客の投資家にコールオプションを販売する場合、株価上昇後の権利行使に備えて現物株を手当てすることが多い。コール買いの急増が、証券会社の現物株の買い需要を生み、株価を押し上げる構図だ。時価総額1兆ドルを突破した電気自動車(EV)メーカーのテスラ株や、2001年以来の高値圏にあるフォード株には、コール買いの支えがあった。

個別銘柄のコール買いは大型ハイテク株に集中する傾向がある。機関投資家の重視するS&P500種株価指数はマイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなどを含む大型ハイテクの構成比率が高まり、同銘柄群の値動きは指数全体にも影響する。ゴールドマンなど証券会社がオプション市場に力を入れるゆえんだ。

個人のオプション取引は個人の集中買いがゲーム小売株などの急騰を招いた1月の「ゲームストップ騒動」時にいったんピークをつけている。その後の株高が個人の取引を再び勢いづけた。

米サンダイヤル・キャピタル・リサーチの創業者、ジェーソン・ゲッフェルト氏はオプションの小口取引の動向に注目する。9月の相場停滞期にはいったん取引量が落ちたが、株価指数の高値更新が目立つようになると活況を取り戻した。「個人は相場下落が限定的とみて、リスクをとるようになった」とみる。

米サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏は「シグナリング効果や心理的影響が大きい」と指摘する。例えばアルゴリズムを駆使するクオンツ運用ファンドは、取引急増のシグナルを察知すると、先物やオプションに買いを入れ、上昇トレンドに乗ろうとする。

個人・機関投資家問わずモメンタム(値動き)重視のトレーダーが売買動向に敏感に反応し、株価をさらに押し上げる。

もっとも株高継続を前提とした取引だけにショックにはもろい。米ミラー・タバックのストラテジスト、マシュー・マリー氏は22日に起きたハイテク株の大幅安について「強制的な売りがあった」とみる。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長再任を受けて金利上昇が加速すると、個人投資家がコールの買いの手じまいを急ぎ、裏側で証券会社も手持ちの現物株の売りに回った。

オプション取引は株価下落リスクを抑えるためにも使われる。ところが米市場ではカネ余りと運用難、個人の参戦によって、リスクを積極的にとる手法として存在感を増している。金融政策を巡る思惑などで投資家がリスク回避に動けば、マネーが逆回転し、急落を招く恐れがある。コール買いに支えられた株高は脆弱性を抱える。

(日本経済新聞)

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