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米機関投資家、IT株に見切り エネルギーに軸足 金利上昇で割高感/業績に懸念材料 2022/05/19

米機関投資家の投資先が大きく変わろうとしている。17日までに開示された3月末時点の保有銘柄を分析すると、EV(電気自動車)の米テスラ株を全株手放した一方で石油大手に買いを入れるなど、相場をけん引してきたIT(情報技術)をいったん見切り、資源株などに軸足を移す動きが明らかになった。急ピッチな金融引き締めに伴う投資環境の変化に対応する。

米国の大手機関投資家は四半期ごとに米証券取引委員会(SEC)に「フォーム13F」と呼ばれる報告書を提出し、投資先を開示する必要がある。対象は主に米国市場の上場銘柄で、空売りなどは含まれないが、それぞれの投資行動の概要をつかむことができる。

それによると、著名投資家のレイ・ダリオ氏が率いるブリッジウォーター・アソシエーツは1~3月にテスラを全株売却した。2021年末時点では約2700万ドル(35億円)分を保有していた。

同氏は14日の米CNNのインタビューで「米経済は(景気後退とインフレが同時に進む)スタグフレーションに見舞われる可能性がある」と指摘する。インフレと景気減速懸念が併存する現状は株式にとっては逆風だ。インフレ対応で金利が上昇すると金利を基に計算する理論株価が下がるため、もともと高PERが多いハイテク株は割高感が増す。そこに景気減速に伴う業績悪化懸念も加わると売りは膨らむ。

米投資ファンドのサード・ポイントは「GAFA」の一角で、グーグル親会社のアルファベットを全て売却したほか、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトの保有も大幅に減らした。

08年の金融危機時に住宅バブル崩壊を予想した取引で大きな利益を上げたことで知られる、マイケル・バーリ氏の運用会社サイオン・アセット・マネジメントは、アップル株が下落した際に利益が出る「売る権利」を新たに購入している。

新型コロナウイルス下の「巣ごもり需要」の関連銘柄からも資金が流出する。ヘッジファンドのタイガー・グローバル・マネジメントはネットフリックス株を全て売却。自宅用運動機器のペロトン・インタラクティブの保有株も21年12月末比で9割近く減らした。

巣ごもり銘柄はコロナ下で一気に成長期待が高まった半面、最終赤字の企業も多い。業績の裏付けが乏しいため、投資家のリスク姿勢が弱まると売られやすい。

代わりに投資を増やしているのが、エネルギーやコロナ後のリオープン(経済再開)関連だ。ブリッジウォーターは石油大手のシェブロンの持ち高を43万株と86倍に膨らませた。エクソンモービルも大きく買い増したほか、エネルギー大手のドミニオン・エナジーにも買いを入れた。ジョージ・ソロス氏のファンドは業種別S&P500のエネルギーに連動する上場投資信託(ETF)「エネルギー・セレクト・セクターSPDR」に新たに投資した。

原油の国際指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物は3月に一時年末比で7割上昇と急騰した。コロナ禍の物流混乱やウクライナ危機で原油価格に先高観が強まる中、投資を増やしたようだ。リオープンでは、サイオンが旅行大手ブッキング・ホールディングスに新規投資した。

米金融調査会社ホエール・ウィズダムによると、3月末時点の機関投資家の業種別投資配分で、ITは21%と21年末から1ポイント超下がった。逆に「生活必需品」や「エネルギー」の比率は上がった。インフレや景気減速懸念が収まらない中、「プロ中のプロ」による投資見直しは加速しそうだ。

(井口耕佑、ニューヨーク=宮本岳則)

(日本経済新聞)

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