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米FRB、0.25%利上げ インフレ抑制を優先 打ち止めも示唆 2023/05/05

【ワシントン=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)は3日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げを決めた。相次ぐ米銀破綻で金融システム不安が高まっているが、インフレ抑制を優先した。利上げ打ち止めの可能性も示唆したが、政策金利は16年ぶりの水準に達しており、急速利上げに伴うひずみとインフレ抑制の難路が待ち受ける。(関連記事総合・経済面に)

3日、記者会見に臨むFRBのパウエル議長
声明文には「追加策がどの程度必要か決定する際には、これまでの金融引き締めの累積的な効果や経済や物価に時間差で与える影響を考慮する」と記した。「追加の政策措置が適切」としていた前回会合時の表現を修正し、利上げの打ち止めを示唆する内容になった。

政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は5.0~5.25%となった。2007年8月以来、約16年ぶりの水準で、リーマン危機前の利上げの到達点に並んだ。22年3月のゼロ金利解除以降、10会合連続の利上げで、1980年代以降で最速ペースだ。米国債など保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)は維持した。

米議会で交渉が難航している政府債務の上限引き上げ問題も、市場を揺るがすリスク要因だ。6月1日にも米国債が債務不履行(デフォルト)に陥る懸念がある。それでも利上げを継続したのは、物価上昇率がなお目標の2%を大幅に上回っているためだ。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数はエネルギーと食品を除いたベースで3月も前年同月比で4.6%上昇した。

パウエル氏は失業者1人に対し1.6件の求人がある人手不足の実態を強調し「インフレ圧力はいくぶん緩やかになっているが、依然として強い」と強い警戒心を示した。

会見で政策金利が「十分に引き締め的な水準」に達したか問われたパウエル氏は「見極めているところだ」と明言を避け、6月会合での追加利上げも選択肢として残した。

パウエル氏はかねて金融システムの安定に向けた取り組みと物価を抑制する金融政策を分けて対応する考えを示している。

パウエル氏はFRBが利上げを打ち止めした後も早期の利下げ転換を避けて金融引き締めの状態を長く保つ考えを改めて強調した。23年後半の利下げを織り込む金融先物市場をけん制した。

金融不安が銀行の融資姿勢の厳格化などを通じてどれほど実体経済を下押しするかが今後の焦点となる。パウエル氏は前回の会見でこの影響が1回分以上の利上げに相当すると言及したが、今回は「正確に言い表すのは難しい」と言葉を濁した。高インフレと金融不安という逆風が吹き付けるなか、事態打開に向けた視界の悪さを印象づけた。

(日本経済新聞)

米、金融不安止められず FRB議長「間違い犯した」 利上げ後に地銀株急落、物価安定と両立難しく 2023/05/05

米連邦準備理事会(FRB)が物価と金融システム安定の両立で袋小路に陥りつつある。3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の追加利上げを決めたが、直後に経営不安を抱える米地銀の身売り話が浮上。さらなる連鎖破綻の懸念が強まった。インフレ退治に出遅れて急速に利上げを進めたツケは大きく、収束には時間がかかりそうだ。(1面参照)

「会合結果の前にまず銀行セクターの最近の動向について話したい」。3日のFOMC後の記者会見でFRBのパウエル議長はこう切り出した。

米地銀シリコンバレーバンク(SVB)の突然の破綻で銀行経営への不安が広がった3月以降、「状況はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靱(きょうじん)だ」と強調した。会合直前の1日には米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の破綻と米銀最大手JPモルガン・チェースによる救済買収もあったが、「深刻なストレスのかかる時期に区切りをつけるための重要な一歩だ」とした。

銀行破綻が相次ぐ現状について聞かれたパウエル氏は「我々が間違いを犯したことは十分に認識している」と述べ、監督責任を認めた。銀行監督・規制を見直す方針を重ねて示したが、FRBは地銀の経営不安を誘発した大きな要因である利上げをこの日も断行した。

利上げによる金利上昇は預金と貸出金の利ざやの改善につながり、JPモルガンの23年1~3月期の純金利収入は49%増、シティグループやウェルズファーゴも2ケタ増となるなど米大手銀の好業績を支えた。

半面、銀行が保有している債券や住宅ローン債権の価値を下げ含み損の拡大にもつながる。民間試算によると、2022年10~12月期の保有証券やローンの含み損も加味した実質的な中核的自己資本比率はFRCがマイナス状態で、SVBや米西部カリフォルニア州地盤の銀行持ち株会社パックウエスト・バンコープも0~2%台と極めて低水準だった。

パウエル議長は今回の利上げが打ち止めになる可能性を示しつつ明言は避けた。物価上昇率は2%の目標を大きく上回る状況が続き、上振れリスクへの警戒も解けないためだ。市場が期待する年内の利下げ転換も「適切ではないだろう」と距離を置く。銀行システム不安を鎮静化できていない状況で、インフレ抑制への決意を強調する姿勢は危うさもはらむ。

パウエル議長会見の終了の約1時間後、米欧メディアはパックウエストが身売りや増資などの検討を進めていると報じた。スタートアップとの取引が多く、SVBやFRCとの類似性を感じ取った市場の矛先が向かっている。

4日にはウエスタン・アライアンス・バンコーポレーションの身売り検討報道も出て、同社株は一時6割超下げた。同社は報道を否定したが、預金流出などで先行きが不安視される地銀株への売り圧力は収まらない。

資金繰りに窮した地銀などは「最後の貸し手」となるFRBへの依存を強めている。SVBの破綻前からある銀行向け融資枠と、破綻後に新設した融資枠の利用額は4月26日時点で計1551億ドル。SVB破綻前との比較で、銀行の緊急の借り入れ需要が30倍以上に膨らんだことになる。

FRCもFRBの2つの融資枠から計186億ドル(1~3月期平均)を借りていたが、5%近い金利負担などが将来の収益悪化懸念を高めることになり、結果的に破綻を止められなかった。預金の流出や保有資産の劣化を招く高金利環境をFRBがすぐに転換する意思がない以上、地銀の経営環境の好転も展望しにくい状況だ。

インフレ抑制を優先する姿勢を示しているのは欧州中央銀行(ECB)なども同様だ。新型コロナウイルス対応の財政支出で進んだ世界的な債務膨張と、昨年来の急な金利上昇の組み合わせは、米国以外の経済にも大きなリスクとなる。

国際通貨基金(IMF)によると、コロナ前の19年に国内総生産(GDP)比で9.8%だった新興国の政府債務残高は23年に13%に増え、27年は16.4%まで拡大する見通しだ。経済成長が債務膨張に追いつかず利払い負担が成長を圧迫する悪循環の構図が浮かぶ。

FRBはコロナ後のインフレ加速を「一過性」と見誤り、高インフレ定着のリスクが高まったとみると、遅れを取り戻すために通常の2~3倍となる大幅な利上げを繰り返してきた。それでも金融政策は数カ月から1年単位の時間差で実体経済に効いてくるため、労働市場や物価の過熱はすぐに抑えられなかった。

急速な利上げに一部の銀行は対応しきれず、特に金利上昇リスクへの備えが甘かった地銀が破綻に追い込まれた。物価と金融の安定の両立をめざすFRBの政策対応は難度を増している。

(ニューヨーク=斉藤雄太、ワシントン=高見浩輔)

(日本経済新聞)

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