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米GE、会社3分割 航空エンジン・医療機器・電力に 2021/11/09

GEは会社を分割して専門性を高め、投資を呼び込む=AP

【ニューヨーク=中山修志】米ゼネラル・エレクトリック(GE)は9日、会社全体を航空機エンジンと医療機器、電力の3事業に分割すると発表した。2023年に医療機器、24年に電力部門を分社化する。本体で航空機エンジンを担う。多角化によって企業価値が抑えられる「コングロマリット・ディスカウント」を避け、事業の専門性を高めて投資を呼び込む。

GEは11月初旬に子会社のGEキャピタルが手掛けていた航空機リース事業の売却を完了し、金融事業から事実上撤退したばかり。新型コロナウイルス禍に伴う航空機市場の悪化や火力発電への逆風など事業環境の変化が激しくなるなか、複合経営を続けるメリットが薄まったと判断した。

23年初頭に医療機器部門を分割し、GE本体が19.9%を保有する。24年初頭には火力発電と再生可能エネルギー、デジタル部門を合わせて電力事業会社として分社化する。本体には航空機エンジン事業を残し、ラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)が引き続き経営を担う。GE本体に加え、分社する2社も株式上場を計画している。

GEは過去に手掛けた金融事業や電力部門の買収案件で巨額の損失を計上し、18年10月に外部出身のカルプ氏をCEOに招いて事業リストラを進めてきた。鉄道車両やバイオ医薬、祖業である電気照明など複数の事業を売却し、GEの中興の祖であるジャック・ウェルチ氏が注力した金融事業からも撤退した。

カルプ氏は当初、中核として残した航空機エンジンと医療機器、電力の各事業は相乗効果が高いと主張し、分社化に消極的だった。だが新型コロナ危機に伴う旅客機の需要減で稼ぎ頭だった航空機エンジン事業の収益が悪化。欧州を中心に火力発電を撤廃する動きも広がった。アクティビスト(物言う株主)のトライアン・パートナーズなど投資家から分社化を求める圧力が強まっていた。

カルプCEOは9日の発表資料で「世界はいま、航空と医療、エネルギーのそれぞれの分野で課題解決に最善を尽くすことを求めている」と分社化の理由を説明。「事業分野ごとに焦点を絞り、投資配分を決めることで企業価値を高める」と強調した。

世界の複合企業では独シーメンスが医療機器や電力部門の分社化に踏み切ったほか、日本の東芝も主要事業ごとに3つに分割することを検討している。自動車メーカーに対しても電気自動車(EV)や自動運転部門の分社化を求める投資家の声があり、技術的な優位や事業の将来性を見据えた再編が広がる可能性がある。

(日本経済新聞)

米GE、生き残りへ専業シフト 3分割で「脱複合」最終章 2021/11/10

GEは「航空機エンジン」「電力」「医療機器」の3つの事業会社に分割する=ロイター
【ニューヨーク=中山修志】米ゼネラル・エレクトリック(GE)が中核3事業の分離を決めた。2024年までに航空機エンジン・医療機器・電力の3つの事業会社に分割し、それぞれが株式を上場する。事業ごとの経営課題が複雑化するなか、各社が単一事業に専念して成長分野に投資を集中する。複合企業の代表格だったGEの解体は最終章を迎えるが、小粒になった個別事業が生き残れる保証はない。

「独立した取締役会がそれぞれの事業に専念し、長期的に企業価値を高める」。9日早朝に分社計画を発表したGEのラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)は、その後の説明会で投資家にメリットを強調した。23年初めに医療機器事業を、24年初頭に火力発電と再生可能エネルギーとを合わせた電力事業を分社し、それぞれ上場する。航空機エンジン事業はGE本体に残し、年間売上高が2兆~3兆円規模の専業3社に分割する。

分社化の狙いは大きく2つ。ひとつは有力事業の選別だ。GEは過去に手掛けた金融事業の損失と、火力発電を中心とする電力事業の業況悪化が経営の重荷になっていた。子会社のGEキャピタルが手掛けていた航空機リース事業の売却が1日に完了し、利子負債の削減計画にめどがついたタイミングで、各事業が独立採算で投資戦略を決定し、成長分野に機動的に資金を振り向けられる体制への変更を決めた。

多角化によって企業価値が抑えられる「コングロマリット・ディスカウント」の解消も狙う。投資家は競争力の高い航空機エンジンと医療機器で稼いだ利益を不採算部門が食い潰す構造に不満を募らせ、優良事業を分社化して企業価値を高めるよう求めてきた。高収益の両事業を分離し、専業メーカーとして独自の成長戦略を描く。

時間外で一時17%高、市場は評価
市場の評価はおおむね好意的だ。分割発表後の時間外取引でGE株は一時17%上昇。9日の通常取引でも一時7%高まで買われ、3%高で引けた。GEに取締役を派遣し分社を求めてきたアクティビスト(物言う株主)のトライアン・パートナーズは「長期的に企業価値を高める取り組みに敬意を表する」と賛同を表明。米資産運用会社ウィリアム・ブレアのニック・ヘイマン氏も「デジタル経済では機敏な行動が求められる」と分社化のメリットを指摘した。

ジャック・ウェルチ氏(左)とジェフ・イメルト氏が複合経営を先導した(2000年)=ロイター
1980~90年代にGEを率いたジャック・ウェルチ氏が築いた複合経営の帝国は、今回の分社化により解体の最終章を迎える。同氏はM&A(合併・買収)を駆使し、半導体やメディア、金融など事業ポートフォリオを巧みに組み替えて収益を伸ばした。複合経営は環境変化への対応力が高く、グローバル化に適した経営モデルとして評価された。

経済のデジタル化、複合経営足かせに

会社分割を決めたGEのラリー・カルプCEO

しかし世界経済が急速にデジタル化するなか、産業分野ごとの技術革新や成長スピードの差が拡大。多角化や複合経営は逆に、企業全体の競争力を弱める構図が鮮明になっていた。かつて世界最大だったGEの時価総額は06年に3800億ドルを超えたが、足元では1200億ドル台まで下落した。この間、ダウ工業株30種平均はおよそ3倍に伸びている。

18年10月に就任したカルプCEOは7つに分かれていた事業を集約し、「航空機エンジン」「医療機器」「電力」「再生可能エネルギー」の4事業を中核として本体に残す方針を打ち出した。だが、新型コロナウイルス危機で稼ぎ頭だった航空機エンジンの収益が悪化し、医療機器との両輪で不振の電力事業を支える構想は狂った。アクティビストの強まる圧力を前に、いったん封印した分社化に踏み切る。

3社分割にあたり、GEは航空機エンジン事業を本体に残した。投資家が求めた医療機器と電力の分離に応じた格好だが、両事業の位置づけは大きく異なる。

医療機器でGEは米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などに次ぐ世界大手で、特に磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)では高いシェアをもつ。グローバル市場で高成長が見込める分野として、以前から分離・上場の有力候補と目されてきた。

本体に残す航空機エンジン事業も米ボーイング、欧州エアバスの大手2社から安定した受注実績があり、新型コロナ危機前の営業利益率は20%を超えていた。英ロールス・ロイスや米プラット・アンド・ホイットニーが競合相手だが、中小型機向けエンジンを中心に競争力は高い。ただ、新型コロナ危機で急減した航空機需要は完全には戻りきらないとの見方もあり、中長期の成長力には不透明さもある。

世界で進む脱複合、業界再編の呼び水に
一方、電力事業は火力発電所の建設が下火になったことなどで採算が悪化している。18年には買収した仏アルストムのエネルギー事業の減損などで2兆円を超える赤字を計上し、バイオ医薬事業など優良資産の売却を余儀なくされた。電力事業の分社は、高収益の医療機器と航空機エンジンを守る意味合いが大きい。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーは成長が見込める分野だが、20年12月期の売上高は156億ドルと電力事業の半分に届かない。20年に石炭火力からの撤退を発表するなど火力発電は市場の縮小が続いており、再生エネと事業バランスを巡ってさらなる再編を迫られる可能性もある。

デジタル事業の展開も遅れた。先々代のジェフ・イメルトCEOが成長戦略の柱に位置づけたデジタル事業は電力事業への統合が決まった。デジタル事業の売上高は20年12月期に10億ドルあまりと当初計画の10分の1に満たず、グループの電力事業向けが大半だったという。新たな事業モデルとして注目された、産業インフラとソフトウエアを掛け合わせる「デジタル製造業」の構想はさらに後退する。

独シーメンスも分社化を進める=ロイター
複合企業を解体する動きは世界で広がっている。独シーメンスは祖業の一つである電力部門を20年9月に分離・上場し、連結対象から外した。産業機器に集中した結果シーメンス本体の売上高規模は3分の2に縮んだが、株価は分割前から4割上昇し上場来高値をうかがう。18年に上場した医療機器のシーメンス・ヘルシニアーズを含めた3社の時価総額の合計は2.5倍まで膨らんだ。シーメンスのジョー・ケーザー前社長は「当時の決断がなければ、新型コロナ危機でひどいことになっていた」と語った。

日本では東芝も主要事業ごとに3社に分割することを検討している。自動車業界では米テスラなど電気自動車(EV)専業メーカーに市場の評価が集中し、ゼネラル・モーターズ(GM)など大手自動車メーカーに対してEV事業の分社化を求める声が出ている。GEの分社化がグローバルな事業再編の呼び水となる可能性がある。

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